第69話 契り
2人の決着がついた丁度に現れたのは、ネルフェールでヴァルカンとの戦いを終えたジュンに加え、とある人物を連れたまま宙に浮いているニシミヤライト。
(どういう状況これ?)
紅蓮の前に倒れているのは、片腕の無いヤンと瀕死のミズキ。
(喧嘩にしてはやり過ぎよね……まさかこれが挟撃!?)
ジュンの予想は肯定されたかのように、とある人物が謝罪を申し出る。ニシミヤライトが連れているのは、ただの一般人ではない。宙ぶらりん状態の顔面蒼白の男は、ジュンと面識があった。
「王……」
砂漠地帯ジルタフの国王が、地面に頭をめり込ませるかのように土下座する。
「申し訳ない!これは私の不徳の致すところ、処罰は受けるゆえ、あの者らは見逃してほしい──いや助けてほしい!」
「何故?」
「わ……私の実の娘なのだ」
「ほう」
(なーるほどね。何となくだけど理解できてきたわ)
「実は吐かせたところ、砂漠地帯ジルタフは妖国グリムアステルから圧を掛けられていたそうです。戦争国家ネルフェールと和を結び、彼の国を挟撃するようにと。妖国は聖なる九将の1人が統治していますから、国の存亡のためには従うしかなかったようですね」
「ふむ」
2人の間に入ってきたのは、ニシミヤライト。淡々と真相を告げていく。
(いや、お呼びじゃないんだけど!?というか吐かせたって何!?拷問でもした?)
勿論、ジュンの疑問がニシミヤライトに届くはずもなく───
「処断の対象は貴方様にお任せします。一個人としては、娘を救う必要は無いと思います」
「ふむ」
(あーキモいキモい!あんたは守護者でもなければ友人でもないの、知人程度なのよ、分かる?だから勝手に話で進めないで!)
ジュンの本心は伝わらない、それはいつもの通り。ただ今回はそれに同調と言うべきか、ニシミヤライトの発言に物申した者がいる。
「少し、よろしいですか?」
紅蓮である。呼んでもいない男に睨みを利かせている。
「私は奴の意見に反対です。ヤンとミズキの攻撃は友好国としてあるまじき裏切り行為ではありますが、自国を愛する余り憂いた結果ならば、必要な判断であったと一定の理解はできます。覚悟に嘘偽りもありませんでした。今は私に届きませんが、いずれ2人は私に匹敵しても可笑しくはありません。今後の統治に於いても、その力は発揮されるでしょう。それと、願わくばですが、2人を私の配下にしたいと考えております。ご一考願います」
「……それは甘すぎるのではありませんか、紅蓮殿?」
「貴様に名を呼ばれる筋合いは無い」
静かに火花が散る。相容れない、SSランク以上の強者同士。
どちらも折れる気配は無い。つまり判断は、ジュンに委ねられる。
(反省してるなら許すべきね。人材足りなさすぎるもの。それに、女子は多いほうがいいわ。配下にしたいっていうのは驚きだけど、首輪をかけるには丁度いい。必然的でしょうしね。あとは、きちんと本人たちの口から契約させることが重要ね)
「紅蓮の意見を尊重する」
「ありがとうございます」
「従います」
(だからあんたは、一々反応しなくていいって!)
しかし、礼を拒むことはできない。今は男、大嫌いな憎き身体であるためだ。
(ふぅ、はぁ。馬鹿馬鹿しくなってくるわ)
“自動治癒”は、ここに来てまた連発している。
(ちゃちゃっと終わらせましょう。それでこの男ともおさらばするの)
ニシミヤライトが、颯爽と浮遊してやった来たことは忘れている。いや、考えないようにしているという方が正しいかもしれない。視界から、脳の記憶から忘れようとさえしているほどだ。
「では、何か契約書でも書かせましょうか?」
「……」
「紙切れは必要ないと思います。誓詞で十分かと」
「うむ」
ニシミヤライトの意見は不採用(無視)、反して紅蓮の意見は採用(反応)。
勝ち誇る紅蓮ではないが、ニシミヤライトはムッと表情をあらわにする。またもや火花は散るが、他の者には関係ない。
「契りを述べよ」
「わ……わた──」
「お前じゃない」
「え?」
ジルタフ国王ではない。ジュンが視ているのは、国王が未来を託せる者、すなわち娘のヤン。
「あたしかい」
「ああ」
指名されたヤンは一瞬目を閉じて見開く。そして───
「あたしたちジルタフは、自警団は征服王に与する。国は友好国から属国へと変わることを受け入れる。あたしとミズキが、紅蓮……様の配下になることも了承する。だから、国を、未来を救ってほしい」
「いい演説だ」
拍手喝采は起きないが、契約は成立する。征服も完了。
しかしまだ、一件落着とはならない。何故なら───
(あとは、2人の首輪をかけないとね)
紅蓮の配下へとする儀が、残っているからである。
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