第63話 振り絞って
自警団特部同士の戦いは、2対1の差をものともせず、裏切り者ダリィの優勢だった。CランクのリックとEランクのナタリーが、Bランクのダリィに勝てないという理屈は当たり前だが、こうも劣勢になるのかと、リックは不思議に思わずにはいられなかった。
(コイツ、こんなに強かったか?)
自警団は全員が短刀を携行しており、入団当初はその扱い方を学んでいる。リックとダリィでは、リックの方が早く自警団に所属し、先輩として指導してきた時期もあるほど、ダリィの戦い方や癖は熟知していた。
それなのにも拘らず、全てが誤情報だったかのように、攻撃は効かない。
リックの“煌めく光”で生み出した小さな光球は、ダリィの“異物看破”によって全てかき消される。
「お前の能力は感知系じゃなかったのかよ!」
半径3m以内の攻撃性ある異物を感知し、それが眼に視えなくても看破するといのがダリィの能力だと自警団には伝わっていたが、それは誤情報だったことが判明する。
光球をかき消すのもそうだが、3mよりも長く感知幅があるとリックは感じてならない。
「まさか……それも嘘か?本当は5mとか言うんじゃないだろうな!」
「………10m」
「ちっ……くそったれ!」
ダリィの言が嘘でなければ、死角を取っていたとしても攻撃動作で気づかれてしまう。
それは最早、Bランクの領域ではない。最低でもAランクはあるという所業だ。リックたちでは手も足も出なければ、状況を覆すなんてことは到底できない。
「あっ……ッ!」
「ナタリー!!」
出血と疲労で倒れるナタリー。追い打ちをかけるようにダリィも詰め寄る。
何としても防ごうと身を入れるリックだったが、ダリィの行為は単なる誘い。反転され、がら空きの胴に掌底が入った。
「なっ……ッ!」
気絶するリック、ナタリーも致命傷ではないが意識は朦朧している。
害無しと判断したダリィは、その場を後にする。
1m……3m……5m……10mと、距離が確実に開いたその時───
「触媒通信──拡張──!」
『誰か助けて!』と、全ての耳飾り保持者に声を伝えたのである。
力を振り絞った、ナタリーの技。それは当然、敵対したダリィにも届いて───
「ちっ……、だるっ…」
急ぎ任務完了する必要が出てきたダリィは、王が居る場所へと歩を進めるのだった。
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