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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので女子ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第四章 裏切りと契り

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第59話 誰が為に戦う

 戦争国家ネルフェール国王ヴァルカンの命令が、各地域へ伝達される速さは早馬と同じ、直ぐには伝わらない。この世界は、早乙女純が生きていた転生前のような通信システムが構築されていなければ、魔法的な要素としての通信手段も無い。


 通信システムが運用されている国もあるにはあるが、かなり特殊であり一般に普及はしていない。他に方法があるとすれば、通信能力を持った能力者の雇用くらいであるが、生憎(あいにく)この国にはそういう芸達者はいない。


 結果、王都から一番遠い第2関門所に、ヴァルカンの進軍命令が届くには、かなりの時間を要する。


 しかし不幸中の幸いというべきか、第3関門所の破壊報告は、この第2関門所にも届いた。


 通信システムが整備・構築されていなくとも、敗走者が戦争の知らせを、最寄りの軍にいち早く伝える程度の訓練は施されているということ。


 駐留軍にも緊張が走り、進軍命令を今か今かと待ち望むも、一向に伝令が来る気配はない。


 更には()()()、ヴァルカン王直属の近衛兵は定期巡回を終えた時期で、数日前に王都へと()ってしまっている。


 つまり、この地を守護する強い能力者はいない。軍にいるのは、D以下の低ランク帯がほとんど。焼け石に水状態であり、軍の指揮を執るのも熟練の兵士ではなく、最近になって金銭を積んで地位を得ただけの貴族風な少しばかり裕福な男、モジャル。臨機応変に対応できる知恵があるはずもなく、次第に軍全体には不安が押し寄せる。


 逃げることはできない。


 ヴァルカン王は彼らにとっても恐怖の象徴で、暴君であり独裁者。


 一族諸共、命を失う危険性がある。足並み揃わない数が多いだけの軍は、兵士一人の恐怖心の限界によって命令を待たずして突撃、ここに戦端は開かれるのだった。








◇◆◇◆◇◆







 ネルフェール駐留軍の進軍報告は、アリサたちが守るルクツレムハ東部基地に届いた。


 東部軍は陰牢(カゲロウ)月華(ツキカ)によって殲滅させられたが(主に陰牢)、基地自体に損傷は無く、前線を張るという意味で基地としての役割を全うできるため、継続して使用している。基地内に配備されているのは貧弱だった南部軍だが、(たゆ)まぬ訓練により、普通レベルまでには成長した。


 言い換えれば、恥をかかない程度には至れたということで、アリサや属国レジデント組の指導の成果とも言える。


 ジュンの創造した守護者によって、以前のバルブメント王国は蹂躙され、ルクツレムハ征服国が立国した。


 征服時に国内各地域、西部・東部・北部・中央部の軍隊は壊滅し、五体満足で残っているのは一番弱い南部軍。


 軍として機能しているのも、その南部軍だけであり、軍強を図らざるを得なかったのだ。この南部軍こそ、ルクツレムハ征服国における一般的な軍事力となるわけで、能力者ではない集団の中では唯一(トップ・オブ)の頂点(・ザ・トップ)と言えよう。


 商国シンディの征服、砂漠地帯ジルタフとの友好条約締結によって、隣接する敵対国は現状、戦争国家ネルフェールのみ。この進軍を打ち返し勝利すれば、暫くの間、安寧が訪れることを、誰もが理解している。


 アリサは自分の思い描く花嫁修業に身を打ち込め、ユージーンは初恋相手を誘う機会が増え、エリカやモウリは身内を心配しながらも自身の趣味に没頭できるようになる。


 様々な思惑が絡み合う中、要点は1つ。この戦いは、誰にとっても負けられないのだ。








◇◆◇◆◇◆







 第2関門所指揮官のモジャルは、慢心していた。大きな軍を1つ任されているのだから無理はない。兵士の勝手な判断により開戦になってはしまったが、勝利すればいいだけの話。その兵士は処罰済みであるし、誰も自分には逆らえない。


 次期王は、まさしく自分であると確信すらしている。


 加えて、勝利も確実、兵数差は圧倒的だからだ。この地域の重要性を国が理解している証拠でもある。


 ヴァルカン直属近衛兵がいなくとも負ける筈がないと、自信たっぷりのモジャルは後方の天幕で戦況報告を受けている。



「戦況はどうだに?」

「はっ!モジャル様!()()()()()()()()()()

「なして?もう終わってもいい頃だによ」



 戦端が開かれてから、一刻ほどの時間が経つ。兵力差から(かんが)みて決着がついても良い頃合いだと、モジャルは判断しているのである。



「それが……」

「なにえ!はっきり言うだによ!」


「開戦時から()()()()()()()()()()()()()

「………ひゃいいぃーー!!!???」



 奇声が飛ぶ天幕内。



「なして!?……ありアリリリぇんくぇっくぇー!!△■★▽!!!」



 歯もげのモジャルの甲高い高音は聞き取りにくい。大人になっても治らなかった慌てると指を噛む癖は、裕福者であることを忘れさせるくらいに貧相に見える。


 兵士がついてこない理由もその1つ、普通に汚いのだ。更に、モジャルにとっての不幸は続く。



「も、申し上げます!兵の半数ほどが倒され、散り散りになっております!このままでは撤退も視野に入れなくてはなりません!」

「は……っはぁ?はあ?あ…あっ……ッ、ゴホ……う……ッゴフッ……」



 信じられないことが立て続けに起こり、過呼吸になりそうになる。吐き出す唾は余計に汚い。



「ぅ……おっ、おまたち、何とか……ちなえぇ!」

「恐れなが──!?」



 兵士が話すのを止めたのは、天幕からそう遠くない場所から悲鳴が聞こえたからだった。







◇◆◇◆◇◆







 アリサ率いる南部軍の応戦は順調だった。纏まりの無い軍など付け焼き刃に過ぎず、崩すのは容易で、負ける想定もなく、ズンズンと敵を蹴散らしては進んでいく。




「ユージーン、左だ2人、来るぞ」

「任せて」


「次は右だ、私と位置を変われ」

「分かったよ父さん」



 血の繋がらない親子の息は合う。互いの背中を預けては、モウリ指示の下、薙ぎ倒していく。ここまで戦況に差が出てしまうのは、強い能力者がいるからという単純な理由ではない。


 モウリは能力を使用してない、純粋な剣技のみで圧倒している。転生前は単なる医者だったオジさんがだ。これはモウリ自身の素質と言える。


 反して、ユージーンは能力を使用しているが、“持続する剣(ドレイン・ソード)”では敵を倒すまでには至らない。


 この能力は触れた相手の精気を吸う力で、武器と武器とが重なるだけで発動できる優れものなのだが、能力者としての腕は未熟なため、吸力は少ない。技も所持してはおらず、今の所は吸った精気を自分の体力回復に還元する程度しかできない。


 エリカも能力は使用していない。


 “解呪する剣(ディスペル・ソード)”は特殊な能力者を相手する時にしか使わない。駐留軍に能力者は何人かいたが、誰も持ち合わせていなかった。加えて剣技はユージーンにも劣る。


 しかし、殆どの兵士をユージーンたちだけで倒せているため、エリカの主な役割は兵士達の歩幅を調節させ、遊軍として動くことで十分だった。


 全体の陣形に関しては、指揮官であるアリサが決定、采配している。


 モウリが意見したという事実はない。属国の者が、とやかく言う筋合いはないからだ。アリサも、少し前までは教会に身を置くシスターだったが、今や彼女はルクツレムハ征服国の一員として立派に務めを果たしている。味方を回復させたり、鼓舞するだけがアリサの役目ではないのだ。


 この戦い、アリサの采配が見事的中したということに他ならず、前衛はユージーンとモウリ、中衛にエリカ、後衛にアリサという陣形がしっかりと組み立ったということ。


 兵力差を覆す戦況に至ったのは、こういう理由。



「皆さーん!安心して戦ってくださーい!傷は私が、治します!」



 支援も充実で、南部軍の士気も高い状態を保持している。



「前出過ぎかも、足並み揃えて」



 フォローも的確。



「ここは僕が抑えるよ」



 前衛も勇猛果敢。



「勝手突っ走るでない──が、悪くないぞ」



 連携も完璧。



「大将陣営見えてきました!」



 そして遂に、王手に近づく(チェックメイト)







◇◆◇◆◇◆







 敗色濃厚の駐留軍天幕内、モジャルは一人、この場から抜け出そうと考えている。



(もう無理だにえ)



 敗因は自分に無い、全て役立たずの兵士が悪いと決めつける。



(混乱に乗じ──りゅ!?)



 だが目論みは泡と消える。天幕は裂かれ、転がり込むのは倒されたばかりの兵士。



「大将は何処(いずこ)だ、神妙にせい!」



 野太い声が響く。モジャルにとっての味方はおらず、全員に指をさされた。



「裏切りもにょおぉぉー!!」

「縄につけ───なに、痛いようにはせん」



 と言いながらも声の主、モウリはキツく縛る。



「イタタタタタタ……痛い!嘘だにえぇ!」

「ふん!」



 時代劇のような役柄を一度はしてみたいと思っていたモウリは気合いが入っている。



「勝負はついた(みな)勝鬨(かちどき)を上げよ!」



 天高く双剣を挙げるも、誰も勝鬨を上げない。従軍はモウリの軍ではないからだ。


 彼らの指揮官はアリサ、(ただ)一人。


 恥ずかしさに(うずくま)るモウリを介抱するエリカの隣で、シスターアリサ……いや、指揮官アリサは高らかに勝鬨を上げたのだ。






作品を読んでいただきありがとうございます。

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