第50話 ニシミヤライト
ジュン、紅蓮、月華、夢有、ナタリーの5人はネルフェール国西部へと差し掛かる。
ネルフェールは戦争国家といっても、それは単なる国柄、国境付近が慌ただしいのであって、ジルタフからずっと、ひとけの少ない湿地地帯を歩いているジュンたちにとっては無害に等しく、ここまで何も問題なく歩いてきている。
事前に聞いていた関門所や関所は通らずに、上手くここまで来れている。
夢有の強引な合流もナタリーには受け入れられている様子で、夢有・月華・ナタリーの3人は和気藹々と話している。
(年齢が近いのもあると思うけど、純粋に月華も夢有も善人だからナタリーちゃんと気が合うんでしょうね。あの3人の構図いいわぁ。キャメラに収めときたいわね)
興奮気味のジュンとは違い、紅蓮は慎重に進んでいく。主に勝てる者など、この世にはいないと思っても無警戒は良くない。
警戒を怠るのは守護者として恥ずべき行為。
本当は月華たちを叱りたい紅蓮も、友好国のナタリーがいる手前、主にも迷惑がかかると思い我慢をしている。
無駄な諍いを起こすこともない、紅蓮の判断は最良だったと言えよう。
そして、一行は確実に国境付近へと近づいていく。ネルフェール軍とルクツレムハ征服国のアリサ率いる新南部軍が睨み合っている場はもうすぐ。今回の目的は現状視察であって、武力行使ではない。
守護者の力であれば、ネルフェール軍自体を捻じ伏せるのは簡単も、それでは国の────アリサたちの成長には繋がらない。良さげの静観場所を見つけ、一息つこうとしていたところ、南から歩いてくる2人の人物たちとジュンの眼が合う。
(美男子と老紳士……、どこかの貴族?)
この場にいる誰とも接点はない。静観場所は脇道に逸れているため擦れ違うだけに終わる───そう思っていた矢先に、声を掛けてきたのは美男子。
「初めまして、私はニシミヤライトという者です。皆様はジルタフとルクツレムハ征服王の御一行ですか?」
「に、ニシミヤ様??本物ですか!?」
顔を手で隠しながら興奮状態のナタリー、指の隙間からニシミヤライトという美男子を見つめている。その様子を見て憤慨するジュン────いや早乙女純だったが、不思議に思うのはそこだけではない。
(なんで私たちの正体に気づいてるのかしらね)
反応を示さない様子を肯定と捉えたニシミヤライト。
「正解のようで良かったです。スクール水着というのは、この世界の概念にありませんからね。ミナミさんもそう思いましたよね?」
「そうですね、転生者しかありえません──ああ、私は今、紹介に預かりましたようにミナミと申します。ナタリーさんとは1年振りですかね」
「あっはい、ご無沙汰しております」
ナタリーとミナミは丁寧に挨拶を交わしている。ジュンたちはというと、状況をのみ込めはしたが、同じような挨拶はしない。
守護者も、主が名前を言わないので黙っている。
(厄介ね)
早乙女純は全ての男を嫌っているのではない。
99.9%を毛嫌いしており、残り0.1%は興味が無い程度。目の前の2人も悪い印象は抱かないため、今の所は後者。
ただそれとは別に、イケメンな男同士の恋愛を見る分には好きなので、美男子と老紳士という組み合わせは悪くないと思っている。
女同士の恋愛はやり専で男同士の恋愛はイケメンに限り見る専なのだ。ニシミヤライトとミナミという男が、早乙女純の癖に該当すれば良かったのだが、そのような雰囲気ではなく寧ろ、直接的ではないにしても、ナタリーを誑かしているようには見えるので、内心ではイライラしているのだ。
更には────
『ニシミヤという男、かなり強いです』と、紅蓮が耳打ちしてくるのだ。
それについては、ジュンも気づいてはいる。魂の強度が紅蓮と同じくらいだからだ。
(この男、何者なのかしらね)
疑問は尽きない。されど根掘り葉掘り聞くのは、寡黙設定のジュンには似合わない。
つまりは、素性調べは後回しになる。
急を要するわけでもないので、紫燕か零あたりに頼んで、後日報告をもらうのが良いと判断したジュンは、忘れないよう記憶する───ことはできないので、そっとメモ帳に残したのだった。
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