第41話 自警団
ジルタフは、国土の半分以上が砂漠に覆われた砂の国である。
ルクツレムハ征服国(旧バルブメント王国)から歩く分には、それほど砂漠地帯はないが、ジルタフの南にあるネルフェール国に行くまでは、かなりの面積が砂漠地帯となっている。
砂漠地帯は軍の駐留には適さず、日照りも多く、作物は育たず、水資源を確保するのが難しいといった、人の暮らしに適さないことばかり。そのため国民の多くは、ヤン達の住む都市部で生活を余儀なくされている。
但し、全ての国民がというわけにはいかない。人口密度が圧迫すれば内戦になりかねない事態であり、この国に付き纏う長年の問題を解消する答えは地下にこそある。よって残りの国民はというと、都市部の真下、地下で生活している。
地下都市はこの国特有の文化であり、100年以上前に遡れば、地下に住む者の方が多かった時代もあるほど、当時は資源に恵まれていた。周辺国が攻めて来なければ、もっと繁栄の時代を築いたことだろう。
ネルフェールが国として成り立つ以前より、ジルタフ国は他国より攻められ、砂漠地帯にあった地下都市は捨てるしか選択肢がなく、地上へと這い出た上、内陸から奥地へと首都を変更することになってしまった。
ただ、ネルフェールが地下に移住した歴史はない。単純に風土が違い、肌が合わなかっただけだろうが、それでもジルタフが地下を取り戻すには至らなかった。
何故なら国境付近の地下は、特に監視されているからだ。結果、地下遺跡には宝があると言われ続けているのだが、確かめに行けた者はいない。仮に誰かが行っていたとしても報告が上がっていない以上は、どこかで命尽きた可能性が高く、財宝も眠ったままということ。
しかし、今回の友好条約締結のおかげでネルフェール国の前線は1つ引き下げられた。二国間同時攻めを危惧し、ネルフェールが自国の強化を優先したからだ。つまりは今、どこの戦場も睨み合い程度であり、手付かずだった国境付近の地下は、誰の眼も気にしない無法地帯となっている。
遺跡調査が成功すれば国の整備に繋がり、あわよくば地下に軍を派遣でき、前線を押し上げることも可能になる。ジルタフ王家が他国の王との宝探しを許可するのには、そういう理由がある。
友好を深めるだけが狙いではない。
ただそうはいっても、仲を深めるにはもってこいの機会。
確実に財宝を手に入れるなら探検家を雇うのが正しい選択だが、王家の頼れる存在と言えば自警団。
但し、ジルタフにおける自警団とは警備組織の意味合いに近く、都市内を警備することはあっても、都市外に出向くことは専らない。
砂漠地帯を長時間歩く経験はない。
宝探しは、王女を守る特別職のヤン以外には到底無理な話だ。
だがその自警団にも特部という、やり手の者達が存在する。
それはヤンが信頼を置く仲間達であり、自警団の最高戦力、Sランクのヤンを筆頭にした総勢10名ほどの能力者チームである。今回はこの内の4名がヤンに付き従い手伝うことになっている。
「……団長は?」
「来ないみたいですね、さっき連絡入りました──現地……いえ、正門集合みたいです」
「俺らに紹介もしないなんてな」
「どうせ、後でするでしょ。さっ、出発よ」
「だるっ…」
特部のリーダーはミズキ。唯一のAランク能力者で自警団全体のNo.2、ヤンの補佐役も務めている。その後に続くのは、気弱な女子ナタリーと自分に自信のある男リック、『だるい』が口癖の男ダリィ。
正門とは都市の入口で砂漠地帯との境。ただ入口とは名ばかりの殺風景で、普段は門番以外誰もいない。今日は砂漠という死地に出る者が数人いるため、誰がどこにいるかは直ぐに判別できる。ヤンを見つたミズキは、副団長として報告を入れる。
「特部4名現着しました、いつでも出立できます」
「いいね、こっちもだよ。そうだ、その前に友好国の皆さんに、あたしの自警団を紹介しないとね」
ヤンが一人ずつ名前を言って紹介していく。ミズキは丁寧にお辞儀し、ナタリーはまだオドオドして、リックは自信満々に声を張り上げ、ダリィは面倒くさそうにしている。それぞれの挨拶も終わり、一行は早速門を抜け、砂漠を歩く。
「そんな軽装で宜しいんで?」
ミズキの言葉は、ジュンたちに向けた言葉だが、答えたのはヤン。
「問題ないね、この場にいるのは能力者のみ。砂漠越えなんて簡単さ、そうだろう、ジュン征服王?」
「ああ」
かくして、ジルタフ自警団と征服王御一行の遺跡調査ならぬ宝探しは始まった。
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