第171話 帝国②
王の間でなく別室へと案内した二人を存分に饗す。
「あらっ、気前良いじゃない」
「この間の礼だ」
帝国とルクツレムハ征服国は共に友好条約を締結している。知人の捜索は、結果的に向こうから出向いてくれた形で終結したが、個人的な目的の礼なくして王は務まらない。
「あーアレね、こちらとしても助かったのよ、一人足止めしてくれて」
「嘘を言うでない。手札はいくつもあったろう?」
「そんなにないわよ。それに本音を言えば倒しきりたかったわ。アイツ面倒くさそうだもの」
「行方は知れずだったか……」
ギルテの居場所は知らない。
【聖なる九将】同士であっても密に連絡取り合う間柄でなければ、不干渉に近い関係性を築いている者もいるため、尋ねたり探したりとできない。
「クロウも知らないというなら見つけられんだろうな」
「私もアイツに時間割きたくないから別にどうだっていいわ。次会ったら確実に息の根止めるけどね」
「判断は任せるが、出来るなら捕縛程度にしてもらてると有り難い。一応は、同じ組織に属するからな」
「ギルテがその程度でどうにかなるわけないでしょ。捕縛と言えば、根暗ゾンビは?」
根暗ゾンビとは、ゾビィーのこと。
「変わらぬな。今も地下牢でぼんやりとしておる」
「そっ。まっ、どーでもいーけど」
「で、ぬしは何しに来たのだ?」
会談の予定はない。
突発的に来られても普段なら問題無い、普段なら…………
「遊覧旅行期間中ってところね。ここに来たのも帝国の街並みを愉しむためだったわけだけど、この有り様は何?なんていうか、街が澱んでるわよ」
「絶賛取り組み中の問題だな。糸口を見つけようと手をこまねいていたわけだったが、今回は渡りに船だったようだ」
「どういう意味?」
「ふむ……」
ドラゴの視線は征服王から、その隣で高級菓子を貪る武者に向きまた征服王へと戻る。
「友好国として願い出たい事案がある」
異業の人間種という意味合いであれば、丁度良く好都合。まさに適任。
「我と一緒に釈明会見に出てほしい。そこの、式とやらもだ」
「はぁ!?」
「モゴモグモグ」
「会見日はそうだな……明日にしよう。早い方がいい」
「説明しなさいよ」
「バリモグゴキュン」
「後ほどな───リカクよ、会見用の演説文を用意してくれるか?」
「仰せのままに」
「ちょっとっ、前より扱い雑になってるわよ?」
「これうまいぞ、主」
「我も、ライト同じく成長したということだ」
「あーはいはいはい。じゃ、読書会も法的な金銭約定も白紙ってことでいいわけね」
「おいっ!おかわりはねーのか!?」
「ぬぅ。まぁ今回の頼みを聞いてくれるならば以前の約定は白紙にしても構わん。それくらい今は切羽詰まっている。帝国における最大の危機的状況と言っても過言でないくらいにだ」
「そんな大事に私達が一緒に出ていいわけ?」
「勿論、是が非でもお願いしたい。いや、頼む」
「口約束だからとか言って有耶無耶にしたら友好条約すら破棄するから」
「心得ている」
「おいっ、肉はねーのか!?菓子は飽きたぞ」
「ちょっとは聞きなさい、式!」
「食べ過ぎだぞ、いくらすると思ってるんだ!?」
「オオオオスッ……だぜ」
用意した高級菓子というアメは全て平らげられた。
(だがこれで……成った)
その損失を補填するムチは明日の会見。
帝王が、民に始めて姿現す日。
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