第168話 商国③
歓楽街、ここは商国内に於いて最も活気のある街。但し、夜限定。昼間以上に闇市が横行し、暗躍する者も現れる。ジュンが治めるルクツレムハ征服国の属国となったばかりの一時期は、閉店を余儀なくされる(廃街レースの賭けに負けたため)店が相次ぐなど過疎化したが、代表者ルドルフの尽力あって、元の活発だった頃に戻っている────とは言っても、猛威を振るっていた店は見る影ないくらいに縮小しているか廃業しており、現在歓楽街を支えているのは新参者が多い。ルドルフがグラウスに連れられて行ったルクツレムハ征服国内の〔ダーツ屋〕を2号店としてオープンしているのも、その内の1つ。
商国の経済は安定時期に戻っている。
だがそれはそれ、これはこれ。ジュンが堪能したいのは〔ダーツ屋〕ではない。古城付近に1号店があるわけで、行く必要は毛頭ない。
堪能したいのは前回一蹴された遊郭だったわけだが、そういった店はかなり少なくなっている。組合だったり、暴力団としての立ち位置だった組織が軒並み減ってしまっているのが原因でもある。
自分らで作るというのも1つの案だが、そこに時間をかける余裕はあっても情熱が無いのが常だ。遊郭は単なる興味に過ぎない。ジュンの一番はハーレムすること。そのために、わざわざ理由を作用意して守護者とのデートにこぎつけたのだ。ここ歓楽街はデートプランの終点。
(フフン、私ながら完璧な立ち回り。朝から夜までコースって、意外と早いわねぇ。それだけ充実してたってこと、よね?うんうん、きっとそう。美味しい料理食べて、散策して、店を物色して………あーー、陰牢の店員への圧は、まぁ許容範囲というか想定内だから別にいいけど………それを省いても概ね予定通り。シチュは好調と言っていいわ。陰牢って、花魁とかも似合いそうだし、店が少なくなったとは言っても衣装くらいあるでしょ。衣装プレイ……フフ、クフッ、楽しみでしょうがないわ!)
「その店、入っちゃいましょうか」
指差す先は、数少ない大人の店。見るからの高級店を顔パスで通れるのが、この国を征服した者達の証────
「ちょっと、お待ちくださいっ!子供同伴はダメです!」
「?」
子供なんてどこにいるのか、ここには大人の妖艶な守護者陰牢と元高校生で完全なる女体化を夢見る征服王こと創造主ジュンしかいない。
「えっ、私??」
だが店員の視線は紛うことなく、一人の幼女に向けられている。ジュン、で間違いない。怪訝そうにしてるのは受付の男だけでなく、傍を通る一般人からも、同じような視線がまとわりつく。
「いやいや私、せいふくおっ………」
「はいはいはい、こんな子供なわけないですよ。ったく、守衛は何をやってるのか」
信じてもらえない。
容姿が信用度に影響すると思っていなかった所為もあるが、これは異常。いや、由々しき事態。
その後も、『お帰り願います』とか『うちはそういうのやってないんで』とか『ここがどこか知ってる?』とか、有り得てならない言葉が羅列して追い払われるばかり。
征服王としての証はどこにもない。我が物顔で道通ることすらできない。
(どゆこと?ルドルフ……だっけか。あいつ何やってんの!)
貴族街同様に、征服王の容姿については認知が進んでいないのだろう。陰牢の影響力も貴族街や中央街ほどは無い、ということ。新参者が多い歓楽街では、旧形態を解体に追い込んだ、式という勝利者の名の方が知れ渡っているのだ。
しかし、このままでは帰られない。帰りたくない。寧ろ、報復したいまであるのを抑えながらも向かったのは、とある場所。
◇ ◇ ◇
「あっっっりえないんだけどっ!!!」
ガンッッと、壊れそうなほどに机が歪みながらも、駆けつけ一杯、三杯、いや五杯に突入し、ガブ飲み中のジュンが居座るのは、以前陰牢と一緒に行った飲み屋。ここはなんとか顔パス入店に成功。変わらず、落ち着いた雰囲気のある店。
「お気持ち、察します」
「逆によく抑えられてるわね」
零や紅蓮だったなら皆殺しだったろう。幼女体型の唯壊なら塵すら残っていない。我慢も躊躇も起きずに歓楽街は地図から消えて可怪しくなかったのに、陰牢は行動を起こさなかった。これは守護者として如何なものか、というべき問題が浮上するも、心配するほどでもなかったのは────
「───後ほど、拷問にかける予定です」
ちゃんと、煮え繰り返っていたからだ。
血好きな拷問官は健在。
「認知が進んでいなかったのは、私の不徳の致すところです。申し訳ありません。ルドルフだけに任せたのがいけなかったのでしょう。しかしながら、先ほど無礼を働いた者達は全員覚えておりますので問題はございません。相応の処置を図ります」
「うん、まぁ、よろしく、ほどほどにね。人口減らしちゃまずいし」
「はい、お任せください」
とは言え、やけ酒は変わらない。愚痴をこぼすしか愉しみが無いのだから。幼女姿では、本物の酒を提供できないと店側が拒んでも、雰囲気酔いは必要不可欠。
「そう言えば、以前の話はお覚えで?」
(以前?なんだっけ??)
「ジュン様の初めてをいただく、という件です」
「あぁあーーーね」
(そいえば、そんな事あったわ)
「今は何か、そういうのございません?やった事のない事です」
「そう、ね………」
ふと考えたジュンは店に入るなり見た光景を思い出していた。
以前より見覚えある店員の一人が、仕事と育児の両立のために赤子を連れていた。今も尚、邪魔にならないようあやしている。
「あ……かちゃん」
「もしや、赤ちゃんプレイですか?」
何気なく発した言葉。
初めてかどうかを問われれば、それは正しい。変態癖あるジュンでも為したことのない領域。
「まさか……お願いできるの??」
「私で良ければ喜んで全力でプレイ致しますわ。もし、他に何かご要望あれば順次お聞きしますので、仰って頂ければ光栄です!」
「そうね……」
(拷問官ならSMプレイもお手の物か……一回、どんなか興味はあったのよね。うん、よしよし……)
「こうなったらトコトンよ、朝までコースよ、陰牢!」
「はい!感無量でございます、ジュン様!」
欲が、熱気は、収まる所を知らない。
二人の怪演が幕を明けた。
夜は永く、有言実行の朝までコースとなったのだった。
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