第166話 商国①
商国城内、代表務めるルドルフは困っていた。
ポンコツメイド長のミスはかなり減った。大事な資料に茶溢される事件は、3回に1回くらいの確率になった。これも傍を支える仕事人の力添えあってのことだろうし、追加採用されたメイドたちの技能向上も理由の1つ。
では何故、困り果てているのか。
(赤眼の劇薬が浸透しなかったのは望ましい───が、市場を脅かす新手のブツはかなり脅威だ。商国の根本を揺るがす事態に成りかねない。だが、今はそれよりも……)
胃に穴開く気分になるのは、また別の問題。
(なぜ悠長に遊覧しているんだ?)
「いや、視察と言うのが妥当かもしれませんか……」
ルドルフとしては、現在国内で起きている問題に対処する方を優先したい。商業国家の地盤を守るのは、代表者の最たる務めと理解している。間違っても、国内を視察訪問中の人物らに、おもてなしはしたくない。そんな事に時間を割きたくはない。
それに、問題が起きていると悟られたくない。無能と思われるのを回避するのもあるが、全てを頼るのは流石のルドルフも、お門違いと認識している。
だからこそ、誰も居ない部屋だったとしても敬う心、敬語口調は忘れない。盗み聞きされてるかもしれないし、愚痴を溢すのは心内のみと決めている。対人会話なら無問題ではあるが、これ以上評価下げるのは論外。意識して解決できるならば、それに越したことはない。
そんな大いに揺れるルドルフの心情を感じとったのか、護衛も務める仕事人シズクが入室。
「今は、どの辺りだ?」
「貴族街を通り過ぎ、現在は中央街、このあとは歓楽街に足を運ぶと思われます」
「想定通りだな───して、あの御方達はこちらへ来ると思うか?」
「どうでしょう?ルドルフ様の危惧するような視察雰囲気は感じ取れませんでした」
『尤も私程度、あの御方達を追跡分析など烏滸がましいのですが………』と付け加えるシズク。それは勿論、ルドルフも解している。
何故なら、その人物は商国を属国とした征服王ことジュンとその守護者であり商国の管理者も務める陰牢の二人だからである。
「他の方たちは?」
「今のところは、見てないですね」
「なら、食事は大量に用意する必要無しか……」
「あまり考えない方がいいんじゃ?また胃を病みますよ。城内には来ないかもしれませんし……」
「……だが、備えあれば憂いなし、だ」
「分かりました。一応、皆には伝えておきます。それと、いつもの胃薬調達しておきます」
「うっ……流石だな」
褒められても嬉しくはない、と思うシズクは安否確認を済ませた後、胃薬調達に城外へと淡々と仕事をこなす。
一人になったルドルフも、残りの薬をガブ飲みするのだった。
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