第159話 逃亡者①
共和国温泉屋敷付近の戦域から離脱した雷の化身ライジン。現在地はルクツレムハ征服国内。ヒョウジン、スイジンと別れた場所にまで戻ってきている。
(やらかした……)
怪我負ったのは失態だった。敵の長距離弾は見事に心臓横を貫通した。今現在出血しないのは土手っ腹に意識集中させているからであって、血が止まったのではない。
化身に物理攻撃は効かない。
それが定説、本来の理。
そうやって何十年何百年と生きてきた。怪我したのは久方振りだ。
化身という上位存在であるにも拘らず、傷を負った事実、これは敵の攻撃が同じく上位種だったことを意味する。
(有り得ねぇ)
普段通り舐めて掛かってたのは否めない。
だがしかし、自分より背丈の低い下等種だと認識している人間、それも少女のような見た目の者に大怪我させられたとあっては名折れ。恥晒しと同僚に揶揄されても言葉返せない。
(どっちだ……?)
成長したのか、元より持っていた技なのか。
極限状態であれば成長した可能性も大いに有り得るのだが、死の恐れがあるほどの状態だったとは思えない。それは戦場から切り離したライジン本人がよく知っている。
(つまり保持していた……ならヤバいな。離脱は正解だったか)
あの場で反撃に転じるのは出来なくなかった。寧ろ、いつもならば、性格的にも選んでいた。但し、今回は不可。選択肢に上がらなかったのは、負傷したからで間違い無い。
自己治癒系の技は持たず。過去、異世界で頻繁に使用していた道具も持ち込んでやいない。そもそも基本、物理攻撃無効化であるがゆえに必要としない。
それに、だ。
万が一、怪我を負った場合、化身である【五連星】たちは自然治癒で傷を治すことができない。生物学的体構造は違う。
特殊な方法でしか治せない。それも、この世界でなく現状の本拠地であるゼロが封印されている世界にまで戻らなければならない。
離脱した理由の一つはそれ。
もう一つは情報共有。対策が取れるとすれば、この世界から観て〈異世界の宝具〉〈七大神具〉と呼ぶ類の物を使用するしかない。
(可能性に頼るのは癪だがな)
早急に本拠地へと向かう必要がある。ここに戻ってきたのもそのため。
幾らか前に、仲間が使用した転位門を再起動させて移動する。痕跡を見つけるのは簡単だ。あとは詠唱するだけ。
「うっ………」
僅かに動く荷。手土産は未だ気絶している。
「目覚めた時は別世界だ」
次いでに『旅行気分味合うほどの時間はないがな』と付け加えたライジン。
やがて門が開き、段が続く。
ギラつく瞳は、化身が必ず舞い戻ると決意した証拠。
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