第157話 其々の戦況 (敵サイド視点)
≪合成獣 VS 月華&式≫
妖国グリムアステルは他の国と一線を画すほどの技術国家だ。技術発展したものは全て国民に還元されているほどで、国家としては頗る安泰している。
だが技術は妖国のみのもので、国外には情報はおろか〈技術〉の二文字すら話に出ない。
これは妖国グリムアステルが他国との国交を基本的に断絶しているからである。
隣接する戦争国家ネルフェール(現ネルフェール国)と殺戮集団【六根】の本拠地である里の樹連合の上層部としか関係を持たない、鎖国状態を維持してきた。
自給自足。
技術の発展が国内の生産力を向上させ、成し得た結果。
鎖国でも何ら問題無い。
但し、この生活変化は妖国となってから。【聖なる九将】序列第四位ギルテが統治を行う前は、普通に国交を盛んに行っていた。そうせざるを得ないほどに、国を維持できなかったからだ。
当時グリムアステルを統治していた前王は温厚だったが、王として良いとは言えなかった。政策も上手くいかず、他国に頭下げるだけの傀儡で、国民はジワジワと搾取され続けた。支持率が低迷するのは分かりきっていたことだ。
その前王を排斥したギルテが、国民の心を掴むに時間を要さなかったのは理解できるだろう。自給自足と言えど、生活が豊かになるのだから当たり前。
技術独占となれど反発は起きない。
また当時の国民の多くが、ギルテを【聖なる九将】の一員だとは知らなかった。聖九としての称号が民を安心させたのではない。
技術力とカリスマ性。
これに尽きる。
異世界の知識と異世界から持ち込んだ技術力により、科学的な研究や機械工学に医療分野まで幅広く技術発展し、この世界では有り得ない建物や生活具を生んだ。
もし、世界に浸透していれば、良い意味で世界は壊れたに違いない。
バランスは崩れ、技術の奪い合いによる戦争が起きていたことだろう。
そういう意味で考えれば独占は必要な手段、【聖なる九将】としてギルテは当然かつ最適な行動しつつ、王に君臨していたということになる。
情報少ないながらも勘づいていた序列第九位クロウが、世界を壊すなどと蜂起しなかったのも、そういう理由からになる。
とは言え、勿論多少なりと犠牲は必要だった。
被験体は、国内外の荒くれ者。四隊長や、その部下が捕縛した者達。
大半は実験中に命失うものの、稀に適応した個体が現れる。1人、2人、3人、4人と。
彼らは更に上の実験を受ける。赤眼の劇薬然り、変異体然り。どんなものでも受け入れる。
そこに、自我はない。
そんなものはとうに忘れている。
無抵抗のツギハギ。
今現在、【DS園】を襲う合成獣はそうやって造られた。
顔、足、手、首、胴、脳、皮膚、細胞全てがバラバラ。元々コピーされた能力を1人1個ずつ植え付けられ、人間外の生物部分を移植され、混ぜ合わされた存在。
生きているのが、動いているのが、能力発動しているのが、オカシナイキモノ。
「ギョルアァァア!!」
能力者として成長を遂げた合成獣は、倒れ動かない2人に向かって、今日初めて咆えたのだった。
◇◆◇◆◇◆
≪ロクゼン&ゴイル VS 零≫
殺戮集団と呼ばれる【六根】は言わば傭兵、対人戦闘や暗殺依頼を遂行して生計を立てる者達の通称である。彼らは全員、六つの里からなる里の樹連合という国に属している。
元は村だった群が1つとなり国家へと展望を遂げるには長い年月を必要としたが、ここでは割愛。多くは語らない。過去の栄光を説くよりも、今を生きることを優先する彼らのまとめ役は、6人の長。
但し、国家と銘打つが、実際は6つの区画に分かれている。目印となるような具体的な線引きは敷かれてないが、明確には棲み分けされており、生活習慣も様々。
国家として他国と政をする際は、その6人の長達が集い議論をするが、それ以外となると里同士の交流は滅多に無い。
殺人の依頼を受諾した時、くらいにしか顔を合わせない。
それに、依頼もピンキリ。
国家でなく個人、もしくは何処かの里限定に依頼が来る時だってある。不平等を無くす名目で国家と成った節もあるため、内乱の火種が公平性を欠いた時となるは必定。
しかし、内乱は起きていない、現状。
理由は幾つかある。確定であるとすれば、それは戦力。
各里の主戦力は長、これに間違いは無い。
副長などの階級制度もあるにはあるが、突出した能力者や長を超える者は各里に存在しない。勿論、代替わりはする。長が死ねば、新しい長が選ばれるのは当然だ。だが呪われているかのように、1人ないし2人程度しか、Aランク以上の強者は生まれてこない。それ以外の殆どがD〜Bの能力者、A〜Sは極稀。【六根】という組織が、能力者観点からも歴史からも世界からも嫌われているとしか思えないほどだ。
似た者同士達の殺し合いほど無意味なものはないだろう。
一方が争いを吹っ掛ければ片方も滅びる。
内乱は何も生まない。デメリットしかない。
区画が増えても大して影響は無い。主な収入源が戦闘なのだから。
虎視眈々と滅びを眺める隣人者など居ない。
生きるためには連携しないといけない、いやそうすべき。
要するに、この場の誰もが単一で突っ込んで戦果上げようとは思ってないのだ。
第六の里長ロクゼンも、その一人。
(むっ……武器破壊か。面倒だが、気を付けねばならんな)
鎖鎌の軌道を大振りから小振りへと変更。即座に、第五の里長ゴイルに合図して間合いを取らせた。
「どうやら敵は恐れをなしているようだぞ兄弟」
「だな、俺等の連携が怖えェらしい」
ロクゼンは六番目に出来た里長だけあって、その血を色濃く受け継ぎ慎重控えめ、ゴイルは血気盛んな大男だが長としての役割を十分理解しており、バランスよい組み合わせになっている。
鎖鎌と手甲、連携時は全距離対応。
『日和ってる今が好機』、と考えるは必然。
加えて、武器破壊程度で行動を御せる者達でもない。
息を合わせた黒装束が、戦場に立つメイドを襲う。
◇◆◇◆◇◆
≪シラン&サラギ VS 陰牢≫
第四の里長であるシランは、6人の中で最も長としての歴が短い。
若い、という事でなくてだ。年齢的に比較すれば一番若いのはサラギだろう。職務に年齢が影響しないことで、歴の長さに優劣は発生しないのだが、彼がまとめ役の一人に抜擢されたのは数年前の話。先代が任務中に倒れ、当時の副長だったシランが、そのまま上に繰り上がった経緯であり、中途半端な気持ちで継承したのは事実。
だが如何なる理由があっても、職務全うするのが長としての務めだ。頭潰れれば、里が壊滅するのは簡単。
しかし、シランは弱い。能力レベルは、長の中で最低ランクときている。
自信持てない自分を何とか奮い立たせ、今日まで生きてきているのは評価に値する。
が、精神面での成長が疎かなのは否めない。
挑発に乗りやすく、沸点が低い。
それを諌めるのがシランの部下たちであり、今まで何度も失敗しかけた任務を達成に導いたのが、彼らのチームワークなのだが、ここに来てそれも通用しない現状へと追い込まれている。
(あれは………何だ………?)
第三の里長サラギも、どう動くべきか手をこまねいている。
「竜の魔女、とでも言うのか……?」
ポツッと漏れた。
罠に捕縛された者達、捕縛されてない者達も同様に見上げている、呆然と。
高笑いして飛び回る、竜装甲の女。
召喚獣と合体したからではない。
速度に追いつけないからではない。
一番の異様さは、その変化。顔の表情。
笑みに恐怖覚えたのは、初めてというくらい。
狩られるという防衛本能を肌で感じたのは、シラン含めた【六根】の者達だったのは言うまでもない。
◇◆◇◆◇◆
≪ゾビィー VS 型≫
ピョンピョン飛び跳ね、湯快爽快と愉しむ姿に、ゾビィーの苛立ちは限界を迎えていた。
ここに来て速度や回避が格段に向上し、攻撃を避けられるのは問題無い。想定の範囲内。
腐蝕が地面を伝い、地下都市が廃墟となるのを興味無さそうに見つめるのも合点がいく。ジルタフ国民でない以上は普通に考えられる。
下賤なのは、そもそも知性や感性すら持ち合わせていないことだ。
美学なぞ戦争には不要だが、まるでこの戦いまでもが、単なる遊びの一環であるかのように振る舞われるのはどうしても納得がいかない。
ゾビィーの戦いには全て意味がある。当然に今までも。
でなければ、今までの殺しはなんだったのか。
死軍となった彼らの意味がなくなる。世界を良くするための大義名分がなくなる。悪と罵られる。自我を、自尊心を保てなくなってしまう。
(僕が僕であるために、願いを叶えるためには必要なんだ!犠牲がァ!僕は間違っちゃないッ!ギルテの役に立てば、僕だってきっと………)
だからこそ、眼前の不快な笑みを崩したい。自分を証明したい。否、しなければならない。
(全部、グチャグチャにする。そうすればきっと………)
“全部終わらせる”
固定砲台、腐蝕効果付き。
「死ねエェェ!!」
ゾビィーの必殺技が、闇夜のような暗い地下へ光を灯す。
◇◆◇◆◇◆
≪シルフ VS ドラゴ≫
(何なのだ、これは……?)
シルフの眼前に佇むのは、赤き竜人から白く光る大剣持ちのおっさんへと変貌を遂げた存在。
(本当にこれが勇者……なのか?)
ドラゴは自らを勇者と名乗った。昔の自分の姿だとも。
幾度か聞いた過去の話を思い返せば、勇者だった話もあった気がするのは確かだが、たとえそれが本当だったとしても受け入れ難い。何故なら勇者とは[正]の存在。勇者が剣抜く相手は[悪]他ならない。
断じて有り得ない。
容姿云々は扠置きだ。
悪認定されるのは、世界を征服しようと企み、他国を脅かそうとし続ける征服王側であって、【聖なる九将】側であってはならない。それこそ、世界の均衡が崩れてしまう。
「おのれ……裏切り者」
「なんとでも言うがいい、我は我だ」
天の針が〈Ⅵ〉へと進み、攻撃力上昇維持のまま防御力上昇効果も一定時間付与される。
(防御力上昇だけで防げるか……?防ぐしかないか、無敵状態までにはまだ時間を要する。しかし、異様だ。面妖だと言うが正解か)
見慣れないおっさん顔。何処にでもいるありふれた醜顔。竜人の姿を見知るからこそ、吐き気するくらいに嫌な盤面。
それに、同じ大剣持ちになったのも気分が悪い。
一振りの白く光る大剣か、銀色の二振りの大剣か。
二つに一つ。
引き分けもない。
純粋に、強い者が勝者。
勝った者が正義。
「どう変わったのか見せてもらうとするか」
「こうなった以上一瞬だぞ、シルフ」
「ハハ、面白い、やってみろ!」
大剣と大剣とが交わる。
ドゴォン!!
と振動、火花が散る。
揺れる大気、極限へと達す。
◇◆◇◆◇◆
≪ライジン VS カンネ&スズ&夢有&紫燕≫
「だいぶ飛んじまったみてぇだ」
ライジンが眺めるのは、磁力でもって逆方向へと飛ばした子供巨人と銃使いの方角。分裂は予定になかったものの、拾い物を見つけたのは幸運。面白い能力持ちは、手土産に丁度良い。
(俺がただ暴れるだけのストレス発散マシーンとか思われると癪だからな)
同僚のヒョウジンやスイジンと同じくらいに働いている証拠には十分。上司の機械竜にも褒めてもらえるというもの。
「おい、ウゼぇぞ」
パリッ、ピシン。
雷鳴雷針。ジタバタ動く手土産も大人しくなる。
焦げない程度の雷撃かつ失神攻撃。
雷は応用多数。雷の化身だからこそ成せる技。
横たわる着物姿の女も同様。持続する麻痺が反抗力を削いでいる。立ち上がれないのは当然不変。一度受けてしまえば効果は長く続くし遺る。いつかは消えるが暫くは体内に潜む、言わば毒と一緒だ。結果、飛ばした位置も把握している上、何やら行動開始した状況も理解さえしている。
可視化温度に類似しており、何かと便利な効果。
何処に力を入れようとするか、今動いたのはどの部位か、倒れているフリなのか、など微細かつ繊細な情報を掴めるのは、戦いに於いてとかく有利に働く。
(この女は放置で構わねぇか。カマ野郎はどうやって運ぶか、持ってもいいが、さっきみてぇに磁力で運ぶ方が無難かもしれん………む?)
「何だ?」
研いだ肌に強烈に突き刺さるは敵意。
「本気かよ、この距離だぞ」
恐怖は皆無だが、しっかりと向けられた刃──銃口──。
(何kmだ?10……いやもっと遠くの筈だよな?)
回避は簡単。先程のように弾丸を曲げたっていい。
しかし、ライジンは────
「いいぜ、受けてやろう。どうせ、俺に物理攻撃は効かない」
反抗を受けると選択。
恰も向こう側と意思疎通が出来ているかのように手招きし、『的はここだ』と猛アピール。
(さぁ来いッ、俺を愉しませてみろ!)
遥か遠く、その彼方から、一発の銃弾が放たれる。
◇◆◇◆◇◆
≪シン VS 唯壊≫
四隊長の筆頭と呼ばれるシンは、ギルテに長く仕えている。永久と言って、過言でないくらいにだ。当然のことながら、他の面々も長い。四隊長の中で新参者と言えばカイぐらいで、マコトとルゥも最初の転生・転移時からの付き合いになる。
しかしそれでも、シンには遠く及ばない。ギルテが初めて異世界へと転生する際も傍らに居たからだ。能力者となる以前から二人は知り合いだった。いや、親友だったと言うのが、最も正しい。
それ故に、シンは知っている。理解している。気付いている。分かってあげられる。
ギルテの想いを、意図を、計略を。
そのために生きてきたし、行動してきた。その願い成就するのは目前に迫ってきている。
(あと少し、ですね)
清々しい、心地良い。されど高揚は波高々に荒振る。あわよくば謳歌したい所だが、生憎待ってはくれない。削がれた興を償ってほしいと思うのは山々も、依然戦況が芳しくないのは流石のシンでも理解している。
(能力封じとは言いますが、どこまで持つか。こればかりはどれだけ研究しても対戦相手によるところが大きくて実験記録に信憑性が湧かないんですよね。それに────)
動じない諦めない眼差しが、能力封じの効果力を否定する。
(いやぁ、強い強い。こうなるとこちらも本来の能力を解放すべきなのかもしれませんが、任務目標は死ぬことなんですよねぇ。でも死にたくなくなってしまいました。いやはや、どうしたものか………)
撤退は出来なくはない。
が、その場合、ギルテの命に背くことになる。
これまで死んでいった、散っていった仲間たちに背を向ける行為となる。
愚かであるし、何とも受け入れ難い。
したがって、一端の神父服着こなす研究者が選んだのは、既存価値の否定はせずに一当たりに留めること。要約すれば、ガン逃げはしないが、赤眼効果が続く時間内は死なない程度に戦ってみる。次いでに言えば、たとえ死んだとしても問題はない。つまり、どうとでもなる、という具合だ。
どんな結末迎えても、何ら影響はない。
選択如何によって多少の後悔はあれど詮無きこと。
死んでも死ななくても、逃げても逃げなくても、勝っても勝たなくても、然程違いはない。ただの過程。シンにとっては。
(為るように為れとはまさにこのことですねぇ。クックック、あぁ面白い)
運に任せる戦法を選択するシンは、一応の判断で楔を構えた。
◇◆◇◆◇◆
≪ライト VS 紅蓮≫
ライトは内心、首を傾げていた。
(これは、どういう状況なのですか?)
初っ端こそ信用していなかったが、狼狽え苦しむ様子は未だに続いている。
あの気高き恐れられる鬼教官が、である。紅蓮という人物を知っているが故に、にわかには信じ難い。演技であれば優秀な女優と遜色無いほどだ。それくらいに、苦痛に歪める顔が似合わない。
外的要因でないのは明らかだ。
であれば、ライト自身も被害を受けていなければ可怪しい。
内的要因である可能性も低い。そんな素振りは見受けられなかった。
しかし要因が突き止められない以上は、内的要因の線が濃厚と考えざるを得ない。
『炎の能力者に起きうる問題は?剣使いとしての穴は?守護者とは何か?どの世界から転生したか?男女の違い?自分にも起こりうる?』等々、考え巡らせ細かく分析精査しようと試みるのは当然の行為である。
が、やはり答えは出ない。
現状、無被害であり正答を探す必要はないのかもしれない。
と、思うのは愚者の判断。敬愛する御方の隣に立ち並ぶためには完璧でなければならない。紅蓮という倒したい強者、倒すべき強者を踏み台にも出来るなら尚更である。
(──ですが、精密検査など出来る筈もございません。やむを得ませんが、ここは紅蓮殿を失神させて………ん、どの?いえ、私が勝つのですから敬称など不要でしょう。紅蓮、今暫くは倒れ伏していなさ───)
言葉途切れたのは面食らったからだ。
急に異様な覇気を纏い、雄叫びを上げている。
紅い炎が紫がかり、変色する。
口から生えてきたのは、まさかの牙。
更には鬼教官ならぬ、鬼の面被ったような鬼女が佇み、眼をギョロっとさせている。鬼を体現しているからか、二本の角まで生えている始末。
身体は変わりない、頭部だけの変化。
但しそれが、本来の彼女でないことを、ライトは察した。
『ふむ、避けるか』
聞き慣れない声。亡者のように耳障りに響く。
ライトの服が裂けたのは、驚いたことによる躊躇で行動を制限された訳ではない。純粋な剣技の向上。間一髪で、逃れ切れた結果。
「あなた誰です?」
『妾を知らぬとは若輩者め、頭が高いぞ』
「くふっ、アハッ!本当に誰ですかあなた!紅蓮に興味なんて全くもってありませんでしたが、ワクワクしてきましたよ」
『知って戦慄するがよい。妾こそ、至高なる存在、火怨魔人、その人である』
「魔人、なるほど………要するに紅蓮は何かと融合した、もしくは精神を乗っ取られたかってことですね」
『たわけが!誰ぞ其奴は!妾は火怨魔人と言うておる!!』
水掛け論、とでも言うべきか。会話成立しない相手ほど、やりにくいものはない。弱みだって握れるチャンスではあるがしかし────
ズバンッ、と大気が怨嗟混じった炎で斬れる。またもや間一髪なのは言うまでもない。
創造主ジュンと切り離した時点で半分役目終えたと豪語していた者が嘘のように殺しに掛かっている。
(いえ、もうこれは、この人は紅蓮じゃありませんね)
本腰入れる必要がある。
否、とうに覚悟決めてはいたのだが、情報未入手の相手と戦う羽目になるとは1ミリも思っていなかった挙句に、悪戦苦闘強いられる状況にも成りかねないため、本気を出さなければならない。余力残すことはできない
「どっちが悪者か分かりませんね!!」
逆らえない状況下だったとはいえ、自己を優先した結果がこれならば自業自得と言われても致し方なし。
勝つ以外に選択ないのも、また事実。
二人の空中戦はまだ続く。
◇◆◇◆◇◆
≪ギルテ VS ジュン≫
(ふむ、手筈通りか)
【六根】の者達が加勢にやって来るのは作戦の内だった。つまり、最初から人数的有利は確立されていたということ。
連携なんてものは無いに等しく、一発本番状態であるのは否めないが、勝てば問題は無い。深手を負わせ捕虜とする案もあるにはあるが、最良とは言い難い。
ゼロ一派の悲願である復活を成し遂げるには、妨げとなる面倒な輩に対処する必要がある。
特異な存在の排除は優先事項。
反抗勢力を倒すのは、ある意味大義と言える。
場の形成も勿論重要。
【六根】に〈ゼロの復活〉を教えてはいないが、この戦いが自分達の生活を守るためには必要と深く説いているため、歯向かう可能性は皆無。大いに加勢してくれること間違い無しだろう。
・・・・・・・・
というのは全て、一般的なゼロの一派、の考え方だ。
ギルテは違う。
そう、違う。
ギルテは真に信仰心あるゼロの一派ではない。
有り得ないとは、正にこの事。
ギルテの目的は別にある。これまでの画策は全てそれを叶えるための行動で、関わりある者達にゼロの名を伝えてきたのも、駒を増やすためだけの手段。
ギルテの目的、願い、夢、真意は自分の欲。
最強者への昇格。
その称号を手に入れんがために、〈ゼロの復活〉を利用していたのだ。
この〈ゼロの復活〉方法については、ゼロの一派なら誰もが知っている。無論、下っ端風情は別だが、幹部勢には事細かく情報共有が為されており、異世界の神具である壺の特性しかり、ゼロと接触している存在がクロウである事実でさえも、復活を悲願とする者ならば周知されている。
ゼロが正しく普通に復活するに、充分なエネルギーと充分な時間と充分な場を要することを、ギルテはきちんと理解している。エネルギー・時間・場の三種は言わば再誕の器。また、一旦の依代が必要なことも熟知している。
これらがどうやってギルテの欲を叶える手段と成り得るかだが、まず始めに異世界の神具に封印された時点で、ゼロの魂と肉体の二つは綺麗に引き剥がされている。その壺の中では魂状態のゼロが時間を掛けながらエネルギーを蓄積しているのだが、足りない分は負の欠片を活用することになっており、これが各地で起こる戦争に起因する。場の形成にも連動するため補填項目としては絶大。【聖なる九将】が存在しながら、度々戦争が起こる悲しい理由。
依代に関しては【五連星】が用意する予定であり未だ決まっていない状況下だが、エネルギー・時間・場の三種は程なく完遂する見込み。しかしながら、問題点が無くもない。
それが必要以上の戦争、内乱、争い。
元々ある程度、どの場所どの時期で戦いを引き起こすかは決まっていた。ゼロの一派にとっては、世界の歴史は考案されていたと言っていい。
ギルテが征服王の出現に便乗した、というのもあるが戦いは無造作に引き起こされている。
乱れは、正常復活の妨げ。
そうなれば何が起こるか分からないし、完全体ではない可能性は大いにある。
だがそれこそ、ギルテの思惑。不完全体で復活させたいのである。
そして、その状態のゼロを取り込む。
完全体では取り込めないと負けを認めているようなものだが、この作戦は悪くない。
取り込んだ不完全体を自分の糧へと、蟲たちを生み出すように、血肉に引き換えるように、自身の力へと昇華しようと考えているのだ。
であるからに、今までの情報を精査し、征服王に向けて『同じような能力者だろう』と伝えたのである。
(この事を知るは自分とシンぐらいか……いやシンには直接言ってはいなかったな。思慮深いあいつなら知っていて可怪しくないが………フッまぁいい、皆これまでよく働いてくれたものだ。願いのために、有り難い事だ)
戦っている最中である筈なのに、自然と笑みが溢れてしまう。油断すれば涎さえ出てしまいそうなほど。真面目に戦う者達が馬鹿らしく見えてもくるのはよっぽどだ。
これまでゼロの復活に付き合ってきた【五連星】のライジンやヒョウジン、【聖なる九将】の序列上位者などの強者たちをも欺く行為ではあるが、ゼロの名に隠れて行動する胆力は見事と言う他ない。
他人を利用して結果を出す。蟲を使って敵を倒すギルテには、お誂え向きの作戦。
(エネルギーの乱れだけではない。時間も短縮されている、筈だ。理論考察が間違ってなければの話だが……概ね合っているんじゃないか、なぁゼロ)
この戦いに大義名分はない。
【聖なる九将】としても、妖国グリムアステルの王としても。
園を壊そうと画策したのも異世界の技術流用を心配したからとか、独占崩壊を気にしたからという人間味ある理由は全くもってない。
ゼロの復活を乱雑に出来れば良いとしか思っていない。
(いずれ全て滅びる。世界に残るのは自分。それでいい。残った後は世界を作る、造り直す。そういう意味で言って、征服王は邪魔な存在なのだよ)
同じような存在は一人でいい。
執着していると思われているならば、それが理由だろう。
相容れない相手。
仲間にしない以上は倒す、もしくは乱れ続けさせるために適当に戦って終える、あわよくば取り込む。
(待ち受ける運命は如何に、だ。互いにそろそろ決めねばならんぞ、征服王)
蟲と触手、苛烈に爻わる。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。
更新がだいぶ遅れてしまっており、申し訳ございません。
引き続き頑張りますので、今後とも宜しくお願い致します。




