第156話 其々の戦況 (主人公サイド視点)
≪合成獣 VS 月華&式≫
肉を削ぎ、骨を断ち、腕を折り、腹に風穴、脚を斬り、首を捻る。雑兵死軍の群れは、いとも容易く簡単に葬ることが可能。そこは変わりない。
不可能なのは、相変わらずどっしり構える魚顔の合成獣。計4つの能力が駆使され翻弄される。知力など皆無に等しい雰囲気であるにもだ。
思う様な糸口掴めぬまま、雑兵狩りをさせられ続けている。
体力よりも精神に響く、苛立ち。
ゴリ押しタイプの戦闘スタイル二人にとっては、余計面倒に感じ始めていた。
「何とかならねーのかッ!」
「ボクだって考えてるよ!」
近づくと、重力攻撃で速度低下。
そのまま気合いで突っ込むと反転で浮かせられ、引き離される。
片方に集中しているその隙に、間合い詰めても腐蝕で地面が緩み、体勢崩され反撃をくらう。
距離を遠ざけると、まだ徘徊する死軍が押し寄せてくる。
中距離だと火や水の札攻撃を駆使される。
近距離は今説明した通りに、重力や腐蝕で引き離される。
硬い皮膚破壊する方法を探す以前に、本体に近づけないでいる。
加えて、式の太刀では刃通らない。月華の打撃では、当然に損傷与えられない。
要するに詰み。
全距離で闘える合成獣に対して、本当に攻略方法があるのか、不安がよぎり始める。
「あの魚顔、飾りなんじゃねーか?」
「かもね」
『ギョア?』と言う仕草までもが、頭悪いと思わせる高等テクニックかもしれない。
「どうする?」
「どうしよう?」
普段の式ならば、現在進行形で突っ込んでいたことだろう。行動が抑制されているのは、敵が強いからでもなければ、太刀の刃毀れを気にしてるわけでもない。月華の言葉にあった、ジュンより受けた指令、連携を意識しているからだ。
成長と言えば聞こえは良いが、呼吸を合わせるだけでは無駄骨。防御の高い相手に荒唐無稽な戦法では勝てない。
やはり戦略を練る必要性があるのだが、知性に欠ける二人では難しく、次第にジリ貧にもなっていく。
「面倒だぜ」
式の能力“全我全俺”は、自身を強化する、という捉え方を多分に含む。受けたダメージを倍返しする技もあるが、戦闘中の自分を成りたい自分へと昇華させる意味合いの方が強い。
四隊長ルゥとの一戦では、能力発動状態で秘技である“限界突破”を使用して、巨人化しているルゥに打ち勝った。
であれば、今回も同じような戦法を取れば硬い防御を崩せるのではと考えがちだが、そうならないのが、この能力の複雑な所。
ルゥ戦では何度も何度も斬りかかり、近接戦闘を繰り返した。秘技を使わざるを得なかったのは、極限状態に陥っていたからだ。強くならなければ勝てないという思いが、勝利を導いたといっても過言ではない。
つまりは、勘違いに近いくらいの思い込みが必要なのだ。
しかし残念なことに、この戦いでは極限状態になっていなければ、近接戦闘も出来ていない。近づけば、重力効果で間合い取られる始末で想像を働かせることができない。
ルゥのように好戦的でない相手とは相性が良くないのだ。
〈飛ぶ斬撃を戦闘中に覚える〉、などの発想もあれば戦況動かす要因にもなるのだが、突っ込む以外の手段は現状思い浮かばない。
「①番⑩番⑥番、それと⑦番⑧番」
回避して跳躍して突き、攻勢に転じた際の備えとして、防御して反撃。
月華の“組み込み武術”は、対人戦に効果的だ。
が、式と同じく物理防御に高い耐性もつ相手には、かなり苦戦する。
予めトレースした動きを出来るからといって、連続攻撃に殺傷力がなければ、牙城を崩すには至らない。付け焼き刃。
必中効果を有するとしても、全く意味を為してない。
二人の能力を掛け合わせる、もしくは合体していれば攻略出来たかもしれないが、そんな夢物語は無い。
吐血し始めるのも、仕方ないこと。
時間経過は、敵の成長を促す。
能力が掛け合わさるのは、合成獣の方。重力に火や水に腐蝕が付加され死軍が這い寄る。
合成獣の合わせ技を真正面に受ける。
回避は無論、間に合わない。
◇◆◇◆◇◆
≪ロクゼン&ゴイル VS 零≫
【六根】の者達を生かす。
零と陰牢には、その真意は知らされていない。智将であれば気づいて当たり前、守護者であれば創造主を熟知するのは必須。零自身もそう思うからこそ、質問はしなかったのだ。真意聞く時間がなかったとは、まるで思っていない。
(………)
数多の攻撃を躱し、数多の攻撃をいなす。ロクゼンの鎖鎌に、ゴイルの手甲だけではない。相手するのは、零を囲んだ百人の黒装束【六根】の者達。
百撃、いや数百撃を一人で対処。
鋼糸は伸縮自在、一本でも硬いが数本以上絡めれば、広範囲を防御可能。伸ばせば距離を取れる他、量産された鉄武器程度であれば、食材を下処理するかのように簡単に斬る。切断面すら視えないくらいにだ。
しかし、生かす作戦である以上、致命傷を与えるかは迷ってしまう。
何故なら茶会襲撃の際、応戦した相手の中には【六根】の者達もいたからだ。脆弱だったのは記憶に新しく、現状彼らの不殺はかなり難しい。
無論、全員を生かす必要性はない。
しかしながら、あちら側を考慮すれば、こちら側は全員を生かすべきであるという思考に落ち着く。
それに、普段から創造主ジュンの一番近くにいる零は、真意にも気づき始めていたのだ。
(なるほど、恐らくはそういう………であれば武器破壊が有効でしょう)
戦意を削ぐ。もしくは致命傷にならない程度に刻む戦法。
ギラリと死角から襲いかかる鎖鎌も、糸で斬りにくい大地砕く手甲も破壊の対象。
手を覆うように鋼糸を一点集中、分厚い手甲を完成させる。槍のように鋭くもある。
「他所は他所、家は家です。ささっと終わらせます」
糸を変化させた零は、近距離戦法による武器破壊を実行していく。
◇◆◇◆◇◆
≪シラン&サラギ VS 陰牢≫
未だ罠に捉えられていない者達を召喚獣の黒い陸竜が相手する。その間、陰牢の相手は長クラスの二人、シランとサラギ。
(さっきも思ったけど、この……)
矢が掠める。今度は脚。
「ふはははッ、どうだ!?サラギの矢は必ず当たるぞ、避ければどこまでも追いかける!」
「一度に3本までだけど」
(どうりで……殺傷よりも必中効果に比重置いた能力ってことね)
ハエ叩きの要領で弾かねば視界遮る。
しかし弾けば、第二第三の矢が投じられる。一挙に詰めれば造作ないが、片手は分銅鎖に封じられたまま。
絡まった鎖を外そうにも、視線そらすのは愚かな行為。それに加え、手首部分は痺れ始めてきた。
麻痺。これが、シランの能力。
「へぇ、もっと痛いのを想像しちゃったわ」
「たわけがッ、ならば死ね!」
不可避の弓矢と同時にシランが詰め寄る。
それを読んでいた陰牢も大鎌で捌いた。が、シランの投げた短剣が絡まっていた右手首の皮膚を削ぐ。
「この短剣はジルタフ自警団の拾い物だ。古くから暗躍する我らに挑んだ愚かさを今ここで味わうがいい!」
「それは、どうかしら?」
シランが驚いたのも無理はない。絡めた腕が外れていたのだから。
「血か……」
「ええ、そうよ、貴方のおかげ」
流血することで、絡まった腕を引き抜くことに成功したのだ。
「だから何になる、次は首を狙うぞ」
「どうぞ、ご勝手に。私も真面目に踊るわ」
シランの『?』を陰牢は嘲笑う。その笑みは後方に控えるサラギも恐怖させたほど。
創造主ジュンは智将二人に【六根】を生かすよう指示した。それは間違い無い事実。
結果誰もが、今の所は生きている。
だが生かし方も、制圧方法も二人に委ねられている。
もっと言えば、攻撃方法に制限は無い。
その意味する所はつまり、個人必殺技の使用も了承しているということ。
黒い陸竜が、召喚者である陰牢と融合する。
「“装甲黒竜術師”」
四隊長カイの時に使った必殺技を、ここでも拷問官は披露したのだ。
◇◆◇◆◇◆
≪ゾビィー VS 型≫
地下、地下都市、誰も居ない遺跡、財の一つ、その傍らで猫が宙を舞う。
「シュバシッ、……だニャン」
効果音を自ら口ずさむ余裕は、この場所が薄暗いため。夜間行動を得意とした生物が本領発揮できる空間。
無造作に落ちている岩に飛び乗れば、隣の建物へと大ジャンプ、追随許さず真っ暗中を駆け巡る。
型の瞳はいつにも増して猫目だ。次いでに耳や尻尾も普段以上に敏感になっている。毛や肌のそれまで過敏に反応、ゾビィーの攻撃など後ろが見えているかのように簡単に避ける。
「ニャハ♪」
対するゾビィーの必殺形態は死軍と周辺の土や草木を混ぜわせ、自らを囲む鉄壁へと変貌させる技である。見た目的には、顔の無い草土巨人をゾビィーが操っている形。
腕が蔓状に伸びたり、岩土を簡単に飛ばせる。当然だが、攻撃全てに腐蝕効果付き。遺跡となった地下都市が本物の廃墟と化すのは秒読み。
鋭利な蔓が型を襲う、も片足上げて回避。更には、ピョンピョン跳ねて何処かへと行く。宛は無し。適当行動は、真面目に戦う者を立腹させる。
「逃げるな卑怯者!」
「ニャンニャンニャン♫」
壊れる、崩れる、腐食する。
「待ってって……」
「ニャッフー!」
鋭利な蔓でさえも遊具と一緒。何本あっても変わらない。
「この……」
仕舞いには、その蔓に乗ったりぶら下がったりと巫山戯る。
「真面目にやれよォ!!」
「不真面目最高ニャン!!」
ゾビィーの堪忍袋が限界だったのは言うまでもない事実。
◇◆◇◆◇◆
≪シルフ VS ドラゴ≫
“竜坤の構え”により、自身を軽量化させ、俊敏に行動できるようになったが戦況は大して変わらない。無論、負傷した翼を仕舞うことで空気抵抗は無くなったし、気を逸らす必要性も消えた。
しかし、中距離戦を一番得意とするドラゴが近距離戦を一番得意とする者に勝てる筈もなく、防戦一方。
(ちィッ、何故我はこうも無様なのだ)
知人を探すため国を留守にした。知人を見つけ、連れ帰ろうとしたが拒否された。同立ち位置の者と戦う羽目になったが、負ける寸前。良い所など、1ミリもない。
(何が、帝国の王だ)
何も為していない。この戦場で最も価値を見出だせない、体たらく。不必要だったのでは、無駄な心配だったのではと思ってしまう。
(我が出ずとも良かったかもしれん、こんな老いぼれ、誰も期待せんわな)
運命的に数合わせに呼ばれた存在、そんな風に思ってしまいがちなのは、対戦相手が同じ【聖なる九将】序列第五位シルフだったのもある。
シルフは真面目で誠実。
これまでの歴史や実績がそれを物語っているし、シルフ自身と一杯交わす経験だってドラゴにはある。
特定の人物に対して、やや拗れた部分はあれど、全体的な内容を加味すれば、正義者として存分な働きをしている。
〈正義〉という概念はシルフ、もしくは自分にこそ相応しいと思うほどだ。
(いや、それは詭弁だな。征服王の征服活動を容認した正義者など居る筈ないのだ)
過去の実績を鑑みれば、ドラゴが一番の正義者だったのは間違い無い。
だが今は逸脱者。そう罵られても返す言葉は思い浮かばない。
(何処で道違えたか、最初からか……ああ、そうかもしれんな)
ゲイに価値無し。竜人も同じ。
好意を寄せた相手は女体化した。
しかし、知人のように乱心する気概は全くもってない。
それを良しとするか悪しとするか、一途である方が夢叶える可能性は大いにあるのだが、夢と同じく譲れないモノがドラゴにはある。
それが民や配下、帝国に住まう者、己で築き上げた実績、ついて来てくれた仲間。
王としての領分を忘れない限り、心を乱して倒れるわけにはいかないのだ。
防戦一方だからとか関係ない。
男気魅せるは、今此処。
女体化したジュンに、自分の価値を証明するため、シルフを自由にさせてはならない。
無敵状態になったとしても。
踏ん張る必要がある、絶対。
「我は、感傷的だった」
「降参か?」
「悪いがそれは絶対に有り得ない」
「ならば、安らかに逝くがよい。私にも譲れないモノがあるのだ」
「知っている、だから枷を外そう」
「な、んだと……?」
蒸気が舞い、変貌していく。
靡く風に姿現したのは、転生前、竜人化する前の姿。
「ここからは王でなく、ただ一人の勇者として戦わせてもらう」
そこに仁王立ちしていたのは、自らも白く光る大剣持ちの毛深い人間。ただのおっさんの登場である。
◇◆◇◆◇◆
≪ライジン VS カンネ&スズ&夢有&紫燕≫
巨大化した夢有を先頭に、と言いたい所だったが、ここは温泉屋敷。空振りパンチで地面に大穴開けてしまっては、営業に支障を来す。それ故、能力発動できない状態だったのだが、好戦的な雷の化身ライジンの取り計らいにより、広い奥地まで移動を終えた4人。
「俺もしっかり遊びてぇからな、礼はいらねぇぞ」
と言うが、当然誰も礼を言うつもりは毛頭ない。女湯を強襲した時点で、ライジンの評価は地に落ちている。
尤も、敵対している以上、評価の意義は全く関係ない。
戦いにおける礼儀正しさとは、互いに互いを認めてこそ成立する。そのため、この場では不一致。破廉恥には、それ相応の処罰が必要、なのだが───
「んなッ、弾丸が曲がる!?」
紫燕の自慢の二丁拳銃は的に向かわず、
「この人当たんないよ!」
夢有の巨人パンチは簡単に避けられ、
「超感覚ねん、常人の身体能力を超えてるわぁ」
カンネの遊撃も意味を為さず、
「最大の問題は物理攻撃の無効化どすよ」
スズが繰り出す必殺の数々は悉く、ノーダメージ。
「ハハッ、いいぞ、もっとやれ!」
反面、ライジンは余裕の笑みで愉快に立ち回っている。
攻撃が当たらない。当たったとしても、身体すり抜ける。
電気を帯びた気体や液体に近く、心臓を貫いたと思っても、そこに心の臓はない。それでも尚、ライジンは活動している。
4人がかりで倒せない相手。
と、ここで動いたのはカンネ。
戦況を覆す手立ては、やはり彼の能力、“お1つ貰います”。確定で能力の一部もしくは武器を奪取できる力は偉大。何を奪えるかは不明であるため運要素が強いのはたまにキズ。
「これでもおくらいねぇん」
願わくば、物理攻撃無効を奪取できれば最高だったが、奪ったのは〈能力〉でなく〈武器〉。
「……棒?」
「あぁそりゃ、母なる天空城で掻っ攫ったやつだ」
「ぐらうんどぜろ?」
「覚えなくていいぜ、この世界じゃねーしな」
それでも武器を奪えば戦況が変わる。そう思うのは当然も、依然としてライジンは馬鹿笑い。
意図を理解したのは数秒後、奪ったばかりの武器が簡単に壊れたのだ。
棒は木屑となっていった。
「そん、な………」
これでは水の泡。弱体化も起きなければ、隙だって作れやしない。
現状、打開は不可。
挙句の果てに、興味持たれた者が一人。勿論カンネである。
強引に首根っこ掴まれたカンネの足は、大地を離れた。
「やぁん、離してちょうだいぃん」
「ちょっおまッ……キモいぞ!」
ジタバタクネクネと忙しないが、これは危機的状況だ。共和国の代表者が連れ去られる事態が起きてはならない。
すかさず応戦するスズ・夢有・紫燕も、しかし────
「“放電する龍玉”」
轟音と共に炸裂する電流が、温泉女将のスズに直撃する。
「キャッ……ッ!」
不可避の電撃受けたスズは一溜まりもない。近くにいた夢有たちも重傷ではないが、それなりにダメージを負った。空飛ぶ龍のように、電撃が散ったからだ。
加えて行動制限と感覚欠損は判断を鈍らせる。まるで、始めから計算し尽されたかのよう。
「んなっ……えっ!?」
「ワワワワァー!!」
ライジンは磁力操作も可能にしていた。
何が起きたか理解できない二人は動き封じられるだけでなく、遥か遠くへと、商国と共和国の国境付近まで飛ばされてしまった。
「───さて、どうやって持ち帰るかだよな?」
呟く雷の化身ライジン。
疑問に答えられる者は居らず。
◇◆◇◆◇◆
≪シン VS 唯壊≫
戦況は一方的だった。
損傷しても死なない、痛覚遮断も関係ない。
“破壊者”の前では、全てが無に等しく、絶望的。
言語話せないリドルは、他と同様にひび割れ壊れていく。
「オーノォ!!なんてことだ!」
嘆くシン、それを眺める唯壊はというと、『ほらね』といった表情で呆れている。
「結局何だったのそれ?」
豪語した言葉は嘘だった、そう捉えて仕方ない。リドルの身体は微塵も残らなかったのだから。元々期待もしていなかったが、これでは研究された意味もよく分からない。
(唯壊が最強ってことに変わりないわね)
研究の物差しで測れない力、絶対的な破壊力。
為す術無く、触れられず、地面から壊れたリドルが物語る。
1人になったシンはというと、あろうことか墓を建てている。素早い。戦場では無意味かつ隙作る行為であり称賛できないが、まるで最初から死ぬ前提だったかのように墓石まで準備されている。神父服であるのも、一層雰囲気を醸し出す。
だが唯壊にしてみれば馬鹿にされているのと同じ。ピキッと苛立ち見せるのは、キレかけている証拠。
「ねぇ」
祝詞を捧げるシンは返答しない。
「そぅ………じゃ死ねば?」
大地壊れ、シンに届く────
「!?」
筈だった。無事だったのは、何かに衝突したから。
同時に放たれた楔が襲う。
既で何本か避けた唯壊ではあるが、一本服袖に触れ、動き止められた。
「なに?」
目線先のシンは赤眼に変化している。先程の最中に服用した、という訳だ。
「異世界の宝具の効果は一時的だったんです。能力封じにまで至った効果も、彼の時で終わる筈でした。が、研究したんですよ、これもね」
淡々と喋り出すシン。
「研究結果により、赤眼の作用時間内であれば、失った能力封じを再現できるようになりました。それでも100%とはいきませんがね」
虚ろな何かが、姿透明なまま現れる。
「リドルもね、別世界の輸入品なんですよ。この世界に悪魔や天使といった存在いないでしょう?死して尚、霊体として活動できるなんて、壁として大いに役に立つじゃないですか!」
「あぁ゙ー、うぅ゙ー」
呻くリドル。
「あんた最低ね、モテないでしょ」
「でしょうか?自分としてはイケメン枠だと思うのですが」
毒吐く唯壊に、細目のシンが返答。
場はまた、2対1の状況。
「殺しがいがあるわ」
「私も死にがいがありますよ」
二通りの笑みが、戦場を湧き立たせる。
◇◆◇◆◇◆
≪ライト VS 紅蓮≫
重力と炎。
重さと熱さ。
両者を比べれば、空気や大気に影響及ぼす副次的効果持つ重力のが、圧倒的に強い。防御性能にも長けることで優勢はライト、紅蓮が攻めあぐねる構図は当然と言える。
しかし、決定打は未だ。ライトは大技を連発しているのにだ。
純粋に、紅蓮の方が能力者としての技量が高い結果だろう。
しかし劣勢守勢なのは変わりない。勝利には、機転利かせる必要がある。が、思うように事は運ばず、炎は重力壁に阻まれる。
ライトは強い。
では何故【聖なる九将】同士の闘いでは、シルフが上手だったのか。
答えは単純、シルフが剣聖だからである。重力壁を容易く斬り裂ける力量を彼女が有していたからに過ぎない。
同じように出来れば問題解決だが、紅蓮のパワーは並だ。筋骨隆々の守護者ではない。
そもそも守護者内に、シルフのような剣の使い手は居ない。
刃状の武器使いを挙げれば、式・陰牢・紅蓮となる。多少なりと、日頃から鍛錬する紅蓮のが一番練度は高いが、達人級の剣士は存在しない。剣士ポストは空席、と言って差し支えないほどだ。
それでも、紅蓮の炎熱剣は剣として有能ではある。温度も、自身の力加減で変更出来るし、何より常に燃える炎は厄介。剣のみで戦っても、効果範囲の広い紅蓮が、式の太刀や陰牢の大鎌を凌駕する。
但し、それは通常の戦闘環境に於いてだ。
火は空気がなければ消える。
これは、紛う事なき事実、普遍的現象。
重力使いでなく、空気使いだったなら手も足も出なかっただろう。
負傷した手そのままズルズルと進めば、誰が敗者になるかは明らかだ。
(───どうするか?)
圧縮された空気の弾丸が飛んでくる。
空気抵抗を無視した重くもあり軽くもある弾丸。大きさは可変式で、砲撃と見間違うほど。
更に厄介は、ライトの指操作で軌道変更も可能にする点だ。
ギリギリで避けるが無難と判断できるは、ライトの性格を知っていればこそ。
粘着質系に、余裕は不要。入り込める余地があれば、ライトは間違いなく詰めてくる。
(フン、技が豊富とは結構な事だ。流石は【聖なる九将】、変人ニシミヤライトだな)
続け様に、ライトは二の手三の手、技を投じてくる。
休む暇など与えない。
全身全霊。
後先考えないのは、異世界の宝具効果か否か。
(それを考える暇は無いな、どうやって心折らせるか……)
一応、紅蓮には必殺技がある。陰牢のように、戦況を覆す大きな一手が。全守護者が使用可能な“限界突破”とは違った、紅蓮唯一の技。
但し、即決却下。
殺す相手ならまだしも、捻じ伏せる相手に使う手段ではないのが理由。
そうなれば、最適な手段とは何か。
最適解となるかは意見が分かれるところだが、主である創造主ジュンの戦闘終わるまで耐え凌ぐという選択。
これは無理難題ではない。現状の手傷程度であれば十分可能なこと。それに紅蓮本人は、個人の勝利に固執しない守護者でもある。故に自ずと答えは出る、のだが────
「つっ………ッ!」
突如、頭割れるほどの痛みを感じた。
声も抑えられないくらいにだ。
隙を作ってしまったと後悔するが、幸いにもライトの攻撃はなかった。
だが、この痛みに覚えは無い。
「戦いの最中に余所見ですか?」
「いや、違う………」
「私も舐められたものです」
「………」
ズキンッと痛む。“半自動治癒”でも治せない頭痛。
原因解明出来ぬまま、戦闘は続行する。
◇◆◇◆◇◆
≪ギルテ VS ジュン≫
蟲と触手。
群れは群となり無限に湧き出る。
蟲は様々な種類、反面触手は一種。
されど、ギルテの蟲よりもジュンの“黒の捕食者”のが強い。一方的に喰い尽くす触手たち。噛み砕き、丸呑み、頭部だけ残したりと無作法な食事。
蟲たちは悉く消滅していく。しかし、ギルテに焦りは見えない。寧ろ、余裕の笑みさえ、見える気するくらい。
ただこれが、本当に序列第四位の力か、と疑わしくはある。
(何か狙ってる?)
もしくは、既に術中に嵌めた状態か。表情変えないのは不気味であるほどだ。
「蟲っぽいの出す以外に何かないの?」
「無い、な」
「はぁ?それなのに、あんた第四位なの?可怪しくない??」
「やたら技を繰り出す相手とやりたかったのか?なら、期待外れだろうな。それと位階付けに技の量は関係ない」
「それくらい理解できるわよ。【聖なる九将】の上位者に見えないから言ってるんでしょうが!」
「それは、言い得て妙だな」
はぐらかされる。
「───だが、弱い個体からぶつけてるのは確かだな」
と、思いきや、そうでもない。
(個体強度があるのね、でも本当にそれだけ?)
疑問を確かめるには、仕掛けるしかない。
蟲を喰らう以外の戦法。
すなわち、本体への攻撃。
普通に考えれば、回避もしくは防御行動を選択する。
しかし、ギルテはどれも選ばなかった。
その身で攻撃を受けたのだ。
壁も何も無い、普通の肉体を触手が喰らう。
結果、肉が剥ぎ取れ、血が噴き出る。
それでも尚、悠然と佇むのは、何かある証拠。
(再生してる……?それに、あれは………)
ギルテの身体から溢れ落ち消滅したのは蟲。その蟲たちは、外部に放たれた時点で身体ボロボロだった。導き出された答えは、ギルテの損傷を蟲たちが受け負っているということ。
ある意味での不死身を体現しているとも言える。
「面白い能力ね」
「同じ系統だろう?」
「さぁ、それはどうかしからね」
「こちらは情報開示したというに、意外と征服王はケチなんだな」
カッチーン、というのはまさに適確表現。
但し、顔には出さない。それが幼女でありながら大人の女性の身体を夢見る女好きの変態創造主なのである。
(心乱したら駄目よ。これくらいで反応してたら格好良くないわ。大人の身体を手に入れても中身が子供って言われて嫌われたくないもの。元女子高生だから大人でもないんだけど、ね)
無い胸擦りながら落ち着いたジュン。
と、そこへ、やって来る影。
ひと間隔開けてギルテの両脇に立つのは、【六根】の者達。
殺してもいい敵に生かすべき敵が加わる。
『面倒』と溜め息つくも、ギルテたちに気付かれることはなかった。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。




