第154話 ライト VS 紅蓮
シンが饒舌に喋り、唯壊が退屈そうにしている最中、その上空ではずっと戦闘が行われている。バチバチゴオゴオと大気が振動しては割れ、炎が燃え上がっている。
空中で戦うのは、【聖なる九将】序列第六位のライトと守護者の紅蓮。ライトも一応は半守護者であるがために、これは組織【S】同士の拳のぶつかり合いなのだが、創造主ジュンが守護者たちに説明していないため、この場にいる両者が当然のように敵だと思っている。
いや、敵という認識は正解だ。
ライトの初撃は、ジュンを狙ったものだったのだから。ジュンの“黒の捕食者”が喰らわなければ、辺り一面圧縮攻撃で大破していたに違いない。
敵側と体現するかのように、ライトの眼球は黒い。黒眼は蒼髪をより際立たせると同時に、〈赤眼の劇薬〉に似た何かを服用、もしくは別の力が働いているのは明らか。
重力使いは縦横無尽に空を移動し、仕掛ける。
対する紅蓮も、魂魄を使用して空中飛行する。羽根が無くとも空を飛べるのは守護者ならではだが、それを可能にするのは少数のみ。守護者の中で上位の能力を持つ者だけだ。
「硬いですね」
「そうか?」
ライトの言葉は、紅蓮の炎熱剣を指し示すほか、頑丈な身体、反射神経、研ぎ澄まされた戦い方を示唆している。最強種に近い重力攻撃があまり意味を為していないからだ。
「貴様をジュン様から引き離した時点で、私の任務は概ね完了している」
ライトの初撃を防いだ段階で反撃に転じるのは容易だった。“小火山弾”も発射圏内ではあった。
躊躇ったのは、空中戦では分が悪いと判断したため。回避させない攻撃技が、あの場では必要だった。
ゆえに紅蓮は炎拳でもって、ここまで引っ張ってきた。重力という圧縮攻撃に耐えながらだ。
当然のように、左手は血だらけ。
「回復しなくていいんですか?」
ライトは、守護者が“半自動治癒”を使用できるのを知っている。
が、紅蓮は翠をライバル視しているだけあって、この状態になっても使う素振りは見せない。左手に包帯巻き、右手で炎熱剣を持ち直す。
「さっきも言ったはずだ、私の任務は概ね完了していると」
「そう思うのは貴方だけですよ」
確かに物理的距離は遠い。
今現在、ジュンはギルテと戦っているのだから。
その地はネルフェール国の国境を越えた先、妖国グリムアステルの領土内。
ジュンをストーキングするライトにとっては非常に遠い。
だかしかし、重力という能力を有している時点で距離は然程関係ない。
それに同じ空中移動術でも、重力を駆使できる方が速いのは当然だ。素早さという面では、圧倒的にライトが上。上手く嵌まれば、相手の攻撃も防御も半減可能。重力は万能能力。
ライトが本気出して移動すれば、紅蓮は絶対に追いつけない。
「でも、私は貴方の行動をとても嬉しく思っています」
丁寧にお辞儀するライト。
「何が言いたい?」
「簡単です。私も戦いたかったのですよ」
「それは、黒眼と何か関係があるのか?」
「あーこれですか」
黒眼をパチクリさせながら頷くライトは肯定した。
「半分ほどはそうですね。なにやら、〈異世界の宝具〉らしいですよ」
「〈異世界の宝具〉だと?」
「ええまぁ、詳細は省きますが戦わないといけないんです。でも私には好都合でした」
「何が、だ?」
「だって紅蓮さん、強いじゃないですか!おそらくの見立てですが、守護者の中ではNo.2でしょう?」
「………No.1だな」
否定されたのに、ライトは大いに笑っている。空気伝えに、響く声。
「まぁ、そう言いますよね、普通は!誰しも!敬愛して止まない方の一番でありたいと!そう願い、そう信じ言動しますよね!!かくゆう私もそうなのですよ!!」
「なるほどな」
話まとめれば、ライトは認めて貰いたいのだ。
創造主ジュンに、自分の愛を受け止め理解して、その上で、傍に置いて欲しいと懇願しているのだ。
そのために、信頼厚い守護者を叩く。己の手で、力で打ち勝つ。紅蓮に勝つことができれば、次は懐刀の翠。
自尊心の塊。
今だって負けを一考してやいない。
「この勝負、勝たせてもらいます」
蒼髪のホストが呟き、
「望むところだ、私は決して本気出さないがな」
赤髪の鬼教官が発破をかける。
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