第152話 ライジン VS スズ & カンネ & 夢有 & 紫燕
ルクツレムハ征服国南部は、グラウス指揮の元、順調に復興を遂げている。以前のような花畑は未だ皆無も、人が住めるまでには戻ったし、焼けた大地にも舗装された道が増えつつある。
そんな南部の端、アリサの村とはまた違う商国との国境を通り抜けるは、雷の化身ライジン、【五連星】の一人。雷の化身だけあって、人間のような皮膚表面は無く、ギザギザしており、顔も獣のような風体している。
共和国方面にも近いこの場所は人通りが多い。道行く者が眼をギョッとする。
恐ろしい見た目しているにも拘らず、悲鳴が起きるまでに発展しないのは、道行く者がルクツレムハ征服国の民であるからに違いない。ライジンが襲わないのもあるが、グラウスたちの教育は十分行き届いているということ。
さもすれば、ライジンすら征服王の手の者、すなわち【S】に所属する誰かに勘違いされた可能性はある。
それを悟って拍子抜けし、ノシノシと歩を進めているのだ。
元より弱者に興味ないライジンにとっては、一般人を甚振るなど、何の面白みもない。
商国の地で、シズクを甚振ったのは、紋様が目を引いたのと、一応は能力者だったからだ。身のこなしも悪くはなかった。そういう意味で、遊びに値する存在と言えた。
この地、ルクツレムハ征服国には同価値以上の者が存在した。
直接会っていないないが感じた。
その者達を強襲するのは簡単だった。
がしかし、止められた。同僚が、『1つ試したい』と言って制止してきたからだ。
そもそも、今日この地を訪れたのは同僚たちに会うため。密会場所に、ルクツレムハ征服国内が指定されたのは、彼らの悲願である〈ゼロの復活〉が関係している。
【五連星】は、元【聖なる九将】序列第三位アルトに追随する部下で、五連星という名だけあって、化身は五人存在。全員が自由行動を言い渡され、悲願達成のために、各自行動をしている状況。
ゼロの魂及び肉体は壺に封印されているが経年劣化と外側からの圧力により、壺にはヒビが入り、悲願は年内に達成見込みではある。
しかし、完全なる復活を為すには、この世界に散ったゼロの欠片を供給する必要がある。世界崩壊の危機を招く存在に必要なのは負の思想。
その地慣らしという意味で、各地で戦を引き起こし、復活の場を形成させつつあるのだ。【聖なる九将】に守られていながら、世界で時折戦いが勃発するのはそういうこと。誘発しているのだ。
であれば、現時点で異世界に飛ばされた壺を持ってきて備えるのも一つの手かもしれないが、強者や反勢力が存在する以上は、盗まれないよう慎重に行動すべき。
復活させる場所も、丁寧に確認する必要がある。
ルクツレムハ征服国内も、その一つ。
同僚のヒョウジンとスイジンに会い、下見も終わり用件は済んだ。
だが、その後の二人の行動には納得がいってない。自分の欲求を制止したのも気に食わない。
「スイジンとヒョウジンめ、一体何企んでんだ、あいつら?」
二人が、〈異世界の宝具〉を持っていたのは分かった。それをどうするかまでは問い質してないが、効果については知っている。
何故ならそれが、〈七大神具〉と呼ばれる伝説級の代物だったからだ。威力規模はライジンの攻撃力を簡単に超える。
この世界に存在しない異物を持ち込む時点で世界の理が歪むのに、〈七大神具〉なんて使用したら、一溜まりもない。既に、〈異世界の宝具〉ですら、一度使用している形跡があるのに、これ以上は世界に負担が掛かってしまう。
何が言いたいかと言えば、ライジンは好戦的だが、頭は悪くない。智将とまではいかないが、復活に支障を来す恐れがあることくらいは、容易に想像できているのだ。
「何か別の意図が……?もしかして肉体の器?一時的な代替品は用意できていると聞いていたが、保険かもしれんな」
考えても、答えは出ない。
それに今は、欲求を制された方が頭にきている。
「今日はこのまま帰る予定だったが、もう少し散歩するか」
雷の化身は獲物求め街道駆ける。
◇◆◇◆◇◆
商国と共和国の守りを言い渡された夢有と紫燕は、共和国の温泉屋敷に居る。疲れは無いが、湯に使ってゆっくりとしている。月華が管理者となった所為か、屋敷内の所々には変化が見られ、美容効能についての立て札が設置されたりもしている。
商国における準管理者の立ち位置でもある紫燕は、その勝手とも捉えられる振る舞いに驚く。
(陰牢は放任主義なのに、月華の方針は違うみたいですね)
国の代表者と面識持つ外交官以上の役割を管理者は持つという意味にもなる。
そう考えれば忙しいだけの管理者にも魅力はあり、紫燕も一つの国を任されたいと願う。
(人数的……人材的に、次の国は私になりそうですね)
夢見る仕事に思い馳せている所で、背に思いっきり水しぶき。
「ぅわっ!!」
「ザブーン!!」
勢い満点で湯遊びするのは夢有、その横にはお忍びでやって来ている共和国の代表者カンネ。
「お子ちゃまは元気ねぇん」
城の守りはライラックに任せ、代表者カンネは羽を伸ばしている。
「緊張感ないですよ」
「でもぉ、誰も来ないよ」
確かに、創造主ジュンに守りを言い渡されたが、商国にも共和国にも敵の脅威は無い。暇になり、『温泉入りたい』という夢有の誘いで温泉屋敷に到着、カンネとはそこでばったりと会ったのだ。
「お子ちゃま達に恐れなしたのよん」
「うん、夢有は強いよ!」
「まぁ、それほどです」
『自分達だけまったりしていいのだろうか』と、考えていた丁度その時────
「「!?」」
猪突猛進に近づく気配を感じ取る。
木伝えに、ドンドンと鳴り響くは轟音。
紫燕たちの前方、林に跳び移ったのは雷の化身。
「よう、俺はライジン、今から俺と遊ぼうぜ」
突如現れた獣、これは紛れも無く、覗き見・変質者・逮捕案件。
「───無礼働くお客様は願い下げどす!!」
そのライジンに初撃繰り出したのは女将のスズ。屋敷から瞬時に躍り出た。
バキっという音と共に、ライジンの横腹に一発も、骨は折れない。
「!?」
「合計4人か、ハハッ良いねぇ、悪くない」
着替えの時間も与えられた紫燕たち。
加勢に戻るも、まだ何も始まっていない。
「準備整ったみてぇだな。さぁ俺の欲求、満たしてもらおうじゃねぇか!」
「「変態どす/変態ねぇん/変態だ/変態ですね」」
心からの罵倒も屈せず興じる雷の化身ライジンと、紫燕たちの戦いが始まる。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。




