第150話 ゾビィー VS 型
守護者の型はピョンピョン跳ねる。尻尾振りながらタイミング計り、狙い澄ました獲物に飛び付いたと思ったら直前で宙返り。木に登れば、何もせずに駆け下りる。不規則かつ自由奔放、倒れ行く者達を木の棒で突くなど戯れている様子は、まさに猫そのもの。ゆらゆらと歩き襲う死軍よりも行動原理に意味を持たない生物。
「ニャン?」
型の攻撃方法は爪や尻尾。出し入れできる爪は鋭利に伸び、人の身体を簡単に切り裂く。バランス取る尻尾は、予測不能な動きをするに最適。
敵の噛み付きや伸し掛り攻撃も、回避行為だけでなく、足を掬うなどして体勢崩し、トドメを入れる。重火器や鉄武器を持つ者がいれば、上手く誘導して仲間同士で相討ちさせる。
ここまでの行動ができるのは敵が知能低い死軍であることと、先のゾビィー戦で腐蝕効果は、“半自動治癒”で治ることが判明しているからだ。接触感染しても、守護者に害はない。
また他国兵であり、憐れみも煩わしさも研究意欲もない彼女にとって、これは単純作業。唯一、楽しさ(面白さ)という観点だけ残るが、不殺遊覧するのは敵将が居なくなってから。
ただその敵将を倒すと、死軍が死軍でなくなる可能性があるため、結局〈お遊び〉はお預けになる。
(死軍だけで活動できないのかニャン?)
型は、その予想を確かめる権利を持つ。
零や陰牢のように、〈敵を生かす〉任は受けていない。屠って良し。【聖なる九将】序列第八位を、その手で倒して良いと仰せ使っているのだ。
但し、型の強さは守護者の中で言えば普通レベル。
能力こそ強い部類だが、基本値は素早さが抜きん出る他は目立たない。式と同じで獣属性を持つため、直感が働いたり夜目が利くなど特殊な状況下での戦闘を得意とするが、現状に必要性は無し。
それに、能力“吸収と放出”は、ゾビィー相手にあまり意味を為さない。
本来、吸収するのはエネルギー弾のような遠距離攻撃の類だ。そういった攻撃手段の無い者を相手する場合は敵本体を異空間へと吸収する。元ネルフェール国女王とその護衛と戦った時の様子が良い例だ。近接・召喚・回避の能力者と型の能力は相性が悪い、というべきか良さを引き出せない。
ゾビィーはどれにも分類されないが、型の能力を存分に発揮できるものでもないのだ。
泥試合に近い戦況となってしまうのは当然。
「ふんふーん、どうしようかニャン」
考えているようで考えていない型の周りを死軍が取り囲む。急な連携は術者が近い証拠。予測通りにゾビィーが顔を見せる。
「子供の次は猫が相手とはね。【S】にはそういうのしか居ないのかい?」
間接的に創造主ジュンを煽る言い草だが、ゾビィーは気付いていないし、型も丸っ切り理解してないため憤慨しない。多種多様な者がいることこそ〈普通〉と思っている節があるくらいである。
「でも、その子供相手に負けたニャンね」
「んなっ!」
ゾビィーVS唯壊戦は記憶に新しい。唯壊は子供でなく成人幼女なのだが、その事実をゾビィーは知らない。
「チッ……」
敗戦思い出し、本当の子供のように地面蹴るゾビィー。ただ直ぐに精神は安定、怒りは一瞬、流石は【聖なる九将】に在籍する大人。
立ち込めた土煙払わずに喋るゾビィー。
「君さ、適当人間だよね。もし良かったら、こっち側に付かない?」
急な提案、これこそ予測不能と言える。
だが、ゾビィーの手招きは適当猫には通じない。
「埒が明かないからって、逃げようとするのはよくないニャン」
「なんだって?」
だから逆に煽る。
「戦いから逃げてるニャンよね」
「僕が逃げるわけないだろ!」
罵倒する。
「一緒ニャンよ」
「もういい、分かったよ!」
提案不成立と共に地面は一気に腐り大穴が開く。
「ニャン?」
落ちる。
死軍もゾビィーも落ちていく。
辿り堕ちた先は地下。
余裕に着地した型とゾビィー。痛み感じない死軍は、身体滅多打ちしながら起き上がる。
「ここは地下都市」
「あーー、ニャるほど」
ネルフェール国の北東側国境は、妖国グリムアステル以外に砂漠地帯ジルタフの境界線とも交わる。地下都市が存在しても不思議ではない。
1つに集束する死軍。
これは、ゾビィーが唯壊に見せた必殺形態。
「僕が弱いって?」
型は、そこまで言っていない。
「地上は【六根】の人達を巻き込むから使わなかっただけだよ。今から君をグチャグチャに壊してあげるさ」
薄暗い地下。
「ニャハ♪」
夜目の利く、好条件の戦いが始まる。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。




