第147話 合成獣 VS 月華 & 式
圧倒的数的不利。雑魚兵と言えど、肉体強化された者達が絶えず追ってくる。
【DS園】へと向かっているのは月華と式。死軍でない以上、触れること厭わないが、当たり前のように時間稼ぎに使われている。殺されて造作ない兵は死軍と同等、ただの肉壁。
“半自動治癒”で疲労回復する守護者たちにとって、無理解な行為ではあるが不必要な行為ではない。
刻一刻と【DS園】は破壊されていく。
ドガンッ!!
監視塔通り過ぎ、園を囲う壁に大穴開けて直通させる。自分たちで造り上げたなど、最早関係ない。
敵への最適最短直結経路。
地割れ、瓦礫、火だってなんのその。阻む物は飛び越え、蹴り上げ、路を作る。
「いた!!」
立ち止まる先、破壊行為繰り返すのは人外の怪獣。式を超える背丈の上、背中の骨は隆起し、肌は紺碧色をより黒くした色合い、十数本の牙に太い腕と脚、爪は鋭利に尖る。瞳は魚類に近い。
「ギョア?」
「ハハッ、いいねぇオモロそうだ」
「皮膚は硬そう、かも?」
「問題ねぇ!!俺の敵じゃねーよ」
「あっちょっ───式!」
問答無用の先制攻撃。
「おっとォ?」
ガキンッ、と金属音。月華の読み通りに皮膚は硬く、肉を断つのは不可。
「上がダメなら横ならどうだ?」
太刀の回転斬り。
が、これも胴に阻まれる。
「ヒュゥ、硬いなこりゃ」
「だから言ったじゃん、てか連携は?ジュン様にも言われたよね!?」
「そうだっけか?ん〜忘れた。なら、そっちが合わせろよな」
「はぁ、いいよ。式は好きなように戦って、ボクが合わせるから」
劇薬を服用した赤眼の者達も最短経路でやって来る。つまりは彼らを撃退しつつ、硬い皮膚持つ怪獣を倒さねばならないのだ。
「能力、“全我全俺”発動だ!」
「能力、“組み込み武術”発動します!」
◇◆◇◆◇◆
守護者二人と怪獣一体の戦いは、直ぐに決着しない。
硬い皮膚が原因でも、赤眼の雑兵が原因でもない。長い尾攻撃も難攻不落であるが最大の問題はそこではない。
攻略の糸口掴めないのは────
「ッ……おもっ……!」
「今度は重力!?」
相手が能力を有しているから。
急な環境変化に空間が揺れ平衡感覚が失われるも、古城の鍛錬場で日々経験している月華は、重力層から難無く抜け出す。
「なッ──!?」
「危ない!!」
間一髪、顔面踏み付けを逃れたのは我を忘れた人間のお陰。僅かな隙間が生まれたことで回避成功。
式の変わりに踏まれた赤眼の兵、首から上はひしゃげ、指令なき身体が痙攣している。更には、踏まれたそこら一帯が腐蝕し始めている。予期せぬ能力は他にもあるということだ。
「───っと、つまり全部で何個だ?」
「操作と重力と腐蝕………今の所、3つだね。顔や身体もよく見るとツギハギぽい感じだから、怪獣よりは〈合成獣〉の方が的確かも」
「それくらい、オレでも分からぁ。要は全部で何個なんだっての?」
「そんなのボクが解るわけないじゃん」
「ちっ、使えねーな」
「ハァ!?ボクは式に合わせてる身なんだから、分析はそっちでやってよね」
「オレが分かるわけねーだろ」
「知ってる、あーもう!来るよ!」
炎と水が付加された打撃を華麗に躱す。
「4つ目か」
「札を使っているあたり、少しは知性があるみたい」
未完成の合成獣は、4つの能力を保持している。
マコトの“死屍累々”、ニシミヤライトの“重力操作”、ゾビィーの“腐蝕死群”、カイの“付加師”。
「───だが、能力は自分のモノに成りきれてない感じだな」
「だね」
先の戦いで能力をコピーする能力者が存在した以上、その実態は報告書伝えで、全守護者に共有されている。コピー能力者を相手したのは、式・夢有という組み合わせで、言語化の難しい二人だったのだが、遠目から型が観察していたこともあり、文書として成立した。
『これで貸し1つニャンよ』の言葉で犬猫の喧嘩がおっぱじまったのは言うまでもない。
話は戻るが、ギルテ側の判明している能力も再共有された。茶会襲撃含め、これまでの数々の戦いにおいて、ギルテに与する者達が関わっていると結論付いたためだ。
要するに、マコトの“死屍累々”も、カイの“付加師”も、式と月華の二人は知っている。
赤眼の後続部隊が奇襲かけずに、合成獣の傍へと駆け寄るのは、元より操作対象だったことを意味する。
がしかし、先程の赤眼兵は自分勝手に動いてしまった挙げ句、踏み潰され腐蝕も交わり粉々になってしまった。肉壁とは言っても、これは明らかな命令違反。マコトの能力を十分に扱えてない証拠たりうる。
付け入る隙はある。但し、打開策にはならない。
何故なら────
キィン!!ドガッ!!
「ちっ……」
「くぅ……」
想定以上に皮膚が硬いのだ。素早さは当然のように遅く、攻撃力は高いが突出していないのに、防御力は極めて高い。オマケに4種の能力を有しているときている。
式のパワーを持ってしても崩れない。殺傷能力の低い攻撃技の月華なら尚更だ。
現状は詰み。
だからこそ連携し、攻略の糸口を見つける必要がある。
この場に智将がいれば容易いが、猪突猛進の勇将ばかり。
しかし、諦めムードには決してならない。創造主ジュンの采配を理解しようとしているのもあるが、単純に彼女ら二人は諦めが悪い。良く言えば、負けず嫌い。
「ゼッテー斬る!」
「必ず一本取るよ!」
〈弱すぎず、強すぎない〉二人組、燃やすのは熱き闘志。
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