第142話 開園
当日、園の入り口では、招待状を送った属国の代表者を含めた多くの者達が集まり、開園式典が始まっている。
ただ予想通りに、妖国の関係者は誰一人として参加していない。妖国を知る、【聖なる九将】のクロウが言うのだから間違いない。
そのクロウも拍手喝采中。
この世界で初めての長期開催複合型施設を造り上げた実績は、後世に語り継がれることだろう。民間人の利用は明日からも、盛り上がるのは必然。計画したジュンも鼻高々だが、別に実績が欲しい訳では無い。民から崇められたい、賞賛が欲しい、潤沢な利益を得たい、という感情はまるでない。
ジュンの欲は一点、守護者との逢瀬。好みの女子との遊園地満喫。残念なことに、幼児体型でその後にこじつけるのは難しいが、普通に遊ぶ分には支障無いし、誰から何か変な事を思われるでもない。そう、欲を堪能する準備は万端なのである。
しかし、さすがにというべきか、今日は満喫するどころではない。本日は主催側、あくまでも補助に徹する必要があるのは、欲望まみれのジュンでも理解している。
初日から問題があっては名折れだ。称号を気にはしない性格とは言っても、閑散としている遊園地を歩きたいとは誰しも思わない。
ゆえに、今日は裏方。他人の満喫姿を微笑ましく眺めるだけ。
守護者から反発を買いそうな事案でもあるが、予め言い聞かせている。
(順調そのものね)
挨拶程度の式典が終わり、続々と園内に入る代表者たち。ジュンもその後に続く。
裏方とは言っても、本物の裏方作業は式や紫燕など守護者の仕事。当のジュンは、何もしない────とまでは言わず、代表者やその家族たちと中身の無い会話をする。この中身の無いは比喩だ。実際は、重要な話だったりもするのだが、記憶していない。それほどまでの精神状態になってしまうのは、ジュンが零の胸に抱えられているからだ。
(あんっ!!快適♡♡)
歩を進める度に、背にあたる柔らかな感触が揺れるのを覚える。密着で、芳醇な香りも当然に感じ、夢心地の気分になる。
自足で歩くことも宙に浮くことも、勿論可能ではある。
がしかし、それでは会話は難しいし、傍から見れば変だ。同じ目線で歩き会話するくらいが、聞き役には丁度よい。そういう理由で、零の判断を採用しているのだ。
(うんっ……ッ、いい揺れ♡)
このままでは本当に我忘れ、欲望に忠実な獣になってしまいそうではある。心臓音を跳ね上げないようにするのは限界に近く、最早“自動治癒”発動圏内と言える。
(はぅ、このままホテルへ……旅館へ、レッツゴーよ)
運命の悪戯か、方向転換した先は旅館。がしかし、ジュンの思い実らず、玄関先で立ち止まるのは、興じる側でないためだ。
零の目線は、丁寧に指導した兵士たちに向けられている。接客の練度を確認している最中なのだ。無論、眼中にない存在たちであるのは確固たる事実だが、兵士の失敗は自分の恥、任された仕事に真摯に向き合っているということ。
読心術持ちでないため、主の要望には気が付かない。おかげで、その主の目も覚める。
「問題、なさそうね」
「はい」
「何か心配事?」
「いいえ、ただ考えていたのです。この園を造った本当の目的を………」
(え……?はっ、まさか!バレた!?今度こそ読心術??)
「彼らのような、虫けらも多少は必要ということですね」
「………え?」
「ジュン様の威光を、強さを、凄さを永く後世にまで語り継がせるために、塵くずたちを利用、付き従う者には飴を与える、これはその一環ということですね」
「………え?」
「真意は隠してこそ、私もお供致します」
「あ、うん、はい、よろ……しく?」
(全然バレてなかったわ……)
久し振りに勘違いゾーンに突入。
目的悟られぬまま、無事に初日を終える。
簡単な慰労会も終了し、ジュンも意気込む。
(練りに練ったデートプラン、明日は満喫するわよ!!)
丸一日使って守護者全員、一人ひとりとデートする計画は果たして成功するのか。遂に明日、ジュンにとっての本番を迎える。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。




