第117話 各地の情勢③ 温泉屋敷編
温泉屋敷の攻防は続く。圧倒的有利から没落したが、優位性は尚、スズと月華に傾いている。
“枝折り”
折る、折る、折る。
バッキバキに砕き、曲げる。
体を多少なりと大きくしたからといって、敵ではない。
スズの素手に触れたら最後、骨は折れる。
「どないしまひょ?」
気絶失神は簡単だが、死に至すには首を狙わないといけない。
しかし死体処理は面倒、それこそ営業妨害でしかない。
慰謝料を請求したいところだが、宛て先は不明ときている。
「厄介どすねぇ」
彼らが帝国人でないと薄々感じているのは、スズがドラゴの膝下で働いていたからだ。悪巧みする輩の名前は記憶している。
無論、新進気鋭の可能性は否めないが、身元確認の連絡が滞っているのは情報が少ない証。
つまり、温泉屋敷の権利云々の話は虚言だったということ。
争いを起こすだけの口実も、誰が得するかまでは判明しない。
(謎が深おすなぁ──っと今は……)
歯向かう輩を成敗するしかない───管理者となった者と共に。
(そちらは任したわぁ)
スズと背中合わせで戦う月華、連続攻撃は炸裂している。
体捌きだけでは、勢い抑えられないと判断し、切り替え、能力を発動している。
月華の攻撃でも死者は出ない。そのため、気絶者は山積みになっていく。
「次!」
(②番、④番、③番)
拳、掌底、肘の連続攻撃。
体術の基礎も無い相手に回避や防御は不要。
攻撃の一点張りで薙ぎ倒してく。
「もう一つ!」
月華も敵の意図を理解はしていない。管理者という役目を与えられ、無我夢中に相手しているだけ。
但し、他の守護者と変わりない評価で終わりたいとは思っていない。
抜きんでる評価、月華にだって一番に成りたい思いはある。
ジュンに褒めてもらいたい欲求はある。
「まとめて来てください!」
ただ負けん気はあるが、他に強すぎる個性がいるため、ぱっとしない立ち位置に定着してしまっている。
容姿では勝負できない───他にも見た目の良い守護者はいるからだ。
戦闘力では勝負にならない───自分より強い守護者が多いからだ。
智力は高いとは言えない、生活スキルは普通、美容に興味はあるが身体特性上必要としない、突出した何かがあるわけでもない。
それら全て、創造主ジュンにそうあって欲しいと思われ創られた結果なのだが、自分自身に不満を覚えなくもなかった。
だが、払拭の機会は突如として現れた。
それこそが、管理者という仕事。
一番へと昇華できる可能性を、秘めていると言っていい。
(ボクにだって、戦う以外にも役に立つことを証明しなくちゃ)
それを成すためには今戦う必要があるのだが、相手が強すぎないことは功を奏している。
運は味方に回りつつあるということ。
この機を逃してはならない。
「ハアアァァ!!」
頼れる存在を背に、武術美女は躍動する。
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