第110話 死屍累々
“死屍累々”は四隊長の一人、マコトの能力。飲食でもいい、注入でもいい、何らかの形で、マコトの血を身体に入れた者は数時間で操り人形と化す。異物として抗体に抵抗された場合や血を抜かれた場合は消滅するが、そうでない時───つまり、血が身体全体へと循環し、巡り終わった時は脳を乗っ取られる。
「全隊、止まれ!」
マコトが、四隊長の中で一番に兵を持つのはそう言う理由。自ずとギルテの兵力も加算されていく。
「どうされますか、マコト様」
「準備万端ですよ、マコト様」
脳を乗っ取られた者は、マコトの命令を愚直に聞く。死ねと言われれば生命を絶つし、守れと命じられれば肉壁となる。死を恐れない軍隊。
ゾビィーの“腐蝕死群”に近い能力を有しているが、似て非なるものだ。何故なら、ゾビィーの方が圧倒的に被害を拡散させやすい。加えて、腐蝕は伝播する。有機物無機物関係無しにだ。世界を恐怖に陥れるのは、ゾビィーの力で間違いない。
マコトの能力では影響力が低い。本人が接触する必要は無いが、直に一人一人相手しなければならない。兵は一気に増えない───が、見た目に変化が生じないため不思議がられることもない。自爆によって部屋を爆破したメイドたちも“死屍累々”で作り上げた兵士。
「これより進軍を開始する」
「やってやりましょう、マコト様」
「目に物見せますよ、マコト様」
死装束と隠し面で統一されている者達は、マコトの軍という証。ギルテの部下でもあるがために、全員が細剣を携行している。
「死をばら撒け、そして死ね、糧となれ、あの御方のために──」
◇◆◇◆◇◆
マコトの軍含め自軍が征服王一派を強襲するのを遠目で俯瞰していたのは、同じく四隊長のルゥ、隣には部下が1名。
「どこもかしこも戦端が開かれました」
「そうだな」
「幹部勢はまだ誰も戦闘していないようですが、ルゥ様は戦局をどうみますか?」
「今のところは五分だな」
「【六根】の奴らは役目を理解しているんでしょうかね?」
「【六根】……か、彼らがどういう集団かは理解しているかね?」
「殺戮集団……ですよね?」
「彼らは、妖国グリムアステルの東側に位置する国を治めている」
「へえ!!それは初耳です!」
「勿論、表向きには公表されてない。牛耳る結果に導いたのはギルテ様の力だ。根強い契約が生きているはそのため……」
「じゃあ、今回もしっかり働いてくれるということですね!」
「それは違うな」
「どうして!?」
「別に死にたくないからだ」
(彼らの役目は遊撃……もしくは陽動に近い)
「お言葉ですが、殺戮集団に属しているなら、死に物狂いで戦うんじゃないですか?」
「だろうな……だが今回、本隊は来ていない。束ねているのは全員副長クラスだ」
【六根】という殺戮集団は、6つの組織が1つに成って立ち上がった組織の通称、6人の長が代表を務めている。今回はその側近である副長6人と数百名が派遣されている。
「暗殺術は心得ているが、全員が能力者とは限らない。それに副長クラスなら、SSランクには満たない。SかA程度だから戦況を動かす要因にはなりにくい?」
「冴えているな」
「えへへ、ありがとうございます」
「戦いにおいて重要なのはやはり数だ。ギルテ様が考案した薬は成果をもたらしている」
(マコトの血とゾビィー殿の腐蝕、それと赤眼の劇薬との混合薬は死軍を作るのに最適だった。流石はギルテ様、感無量だ)
全てを混ぜ合わせたことで、ネルフェール内に住む民は全員死軍となった。身体能力を向上させながら腐蝕効果を持ち、尚且つ統率が取れている軍は最強たらしめる。
本物の能力者の前では無意味という声はあるが関係ない。疲労は蓄積する。
これだけは、変わらない。マコトの血だけでは、短期間伝染は不可能だったため、腐蝕を混合させたのは正解だった。
(事象改変とやらは気になるが、そう何発も連発できるはずない。前回は征服王の民が犠牲になっていたからという意見には同意する。それに──)
「戦場はこの地だけでない」
ルゥの言葉は本当か否か。想像を超えそうな面白さに、ルゥの部下キリクも心躍らす。
「ははっ、いやーこの先どうなるやらですよホント」
「その薄気味悪い笑い方は直すよう伝えたはずだが、本当にお前は、ダリィとは正反対の性格をしているな」
「死んだ兄のこと言うのはよしてくださいよ、ほら来ましたよ」
「むっ……あの肉壁を越えてきたか」
「ははっ、死にましょう、ルゥ様、あの御方のために」
「ああ、捧げよう、あの御方のために──」
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