第107話 お茶会
お茶会の催し会場は、ネル個人所有の豪邸。王城からは少し距離が離れており、戦争の被害は全く無い。綺麗且つ清廉に建築しており、会場内は広く数百人を収容できるほど。
「わぁ、大きい」
お子様な感想を述べるのは、正真正銘の幼女、夢有。
王城を半壊させた当事者の一人ではあるが、経験を積ませるという理由で連れてこられた。
「豪華ですね」
「金かけてるってのがよく分かるよ」
「明る過ぎるのはマイナスだな」
人様の居を吟味しているのは紅蓮、両脇にはヤンにミズキもいる。
「ニャァは料理食べてゆっくりするニャン」
「オレは全部食べ尽くす」
猫犬もいる。
「作法ってどんなだっけ?」
「後ほど、丁寧にご教授致しますね」
「他のメンバーにも、多少の礼節を教えるべきでは?」
ジュンの隣は零と博。質問には納得の意を示していない。
「博の意見はもっともですが、それは致しません。私は守護者の代表ではありませんしね」
ジュンの傍に立ったり、会議の進行役を買って出るが統括者ではない。
地位は一緒、優劣は無い。
零の言葉は当然。
「ふぅん、なるほど。スタンスは理解したよ」
「それは何よりです」
同伴した守護者は計8名。大所帯だが、総勢15名(変人除く)の半分と考えれば多くはない。
翠は異次元空間。
古城での留守番は世理・唯壊・籠畏。
月華は慣れない管理者業務に手こずっているようで不参加。
陰牢と紫燕は商国代表者ルドルフに呼ばれているらしく、人数過多なのもあって優先させている。
(やっと組織っぽくなってきたわ)
急務だった人材確保は整ってきた。盤石と言っていいほどだ。守護者や配下が各々の判断で率先して行動できつつあるのも良い。世界の半分、国家と土地を手中に収めた今、当初の世界征服も半ば達成している。
元【聖なる九将】の〈ゼロ〉とその一派を倒すという目的は追加されたが、居場所が判明していない以上こちらから出向くことはできない。
〈ゼロ〉に与する者が、現【聖なる九将】にもいるのなら、征服途中に現れる可能性は大。
つまり、これまで通りの対応で良いということ、焦る必要は無い。
今は、この余興を存分に楽しむだけだ。
(さぁてとっ、マナー講座は終わったし、まずは美味しい物食べるわよ。その後は香りの良さそうなティーね)
「──お初にお目にかかります。ネルフェールの代表を務めています、ネルと申します」
「あっ、ご丁寧にどうも……ってあれ?」
「どうかなさいましたか?」
一同の?は御尤もだ。姿を知らないはずがないのだから。戦争時、直接の会話はしていないがネルとジュンは近くにいた。
戦争後の対応は零に任せっきりだったとはいえだ。
容姿が変わったことの連絡は管理者伝え、その管理者がいない場合は零が直接文書を持って行っている。
ネルフェールに管理者は配置している。
つまり───
「んにゃっ……!?」
(あー、そゆことね)
バツが悪そうに退室していく。口いっぱいに頬張った料理を落とさないのは流石と言えるだろう。
これでは前回の裏取りも意味を成していない可能性はあるが、型の性格を考えれば仕方ないと思うしかない。
(まぁ……いっか。裏切り行為みたいのはないでしょ──たとえ起きたとしても、このメンツなら余裕で対処できるわ)
『後で叱っておきます』という言葉には頷くだけして、女王ネルには経緯を簡単に説明。一瞬、驚きの感情とは別物を感じ取ったが無視をした。
「そっ、そうだったんですね。それは誠に申し訳ございません。征服王様は来ていないと思っておりました」
「大丈夫よ、こっちの問題だったし……」
「いえ、それでもですよ。大変無礼を働いてしまいました。宜しければ、こちらに──」
案内されたのは待遇の良い部屋。会場に隣接しており、他の招待客が入ることはない、密室空間。
一層豪華な仕様で、次々と料理と飲み物も運ばれてくる。
型以外の散らばっていた守護者たちも一緒に食事する。
「国の特産品でもあります、どうぞお召し上がりください」
「いただきまぁす」
「さっきみたく全制覇だ」
「がっつき過ぎだぞ」
「この容れ物、純金製じゃないかい?」
「どうでしょう?流石に全部とは……」
「……」
「どこの国にも名物ってあるのね」
「はい、勿論でございます。今日はそれはもう、端正に丁寧にじっくりと造っております」
「私の調べでは、あまり特産となる物はなかったように思えましたが、調査不足ということでしょうか?」
「え、ええ、そうだと思います。戦争国家と言えど、民はおりますし、農業・商業など多少なりとしませんと財政難に陥りますから」
「……」
「まっ、大丈夫よ、零」
「ですが、ジュン様……」
「御心広く感謝致します。これからも誠心誠意尽くす所存でございます」
「宜しくね」
「はい、それでは私はまた後ほど参ります。ごゆるりとされて下さい」
ネルが退室したことで、ジュンと守護者だけが残る。
窓の無い部屋。
特別な造りをしているためか、防音もしっかりとしている。
ここは、完全なる密室空間。
「ジュン様」
ポツンと一人言のように発したのは博だ。
「何?」
「私たちには異物に対応する処理能力があります」
「……そうね」
(人間の本来ある抗体能力ってこと?それとも、半自動治癒??)
「そのため、私の言は不必要かもしれませんが、これは毒です」
「毒だと!?オレは何も感じねぇぞ!」
「遅効性だからです。効き目はおそらく、1時間もしないうちでしょう」
「味や見た目に変化が無いのは凄いですね」
「着色料という言葉を理解するのは、この場の半分でしょうが、例えば見てください」
博が持ち上げたのは、一杯の水だ。
「良く見れば濁っています」
「じぇんじぇん分かんない」
「これくらい普通じゃないのかい?」
「それは私たちが砂漠に住んでいるからだと思いますよ」
「ミズキは物知りだねぇ」
「私では、零様や博様に遠く及びませんよ」
「半自動治癒で治るけど、敵のど真ん中にいるから気を付けてねってことね」
「仰る通りです」
「躾は如何しましょう?」
紅蓮が問うた所で、扉を叩く音。
返事無しに入室したのは、最初に料理を運んできたメイドたちだった。
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