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悪役令嬢に転生しましたが、人型機動兵器の存在する世界だったので、破滅回避も何もかもぶん投げて最強エースパイロットを目指します。  作者: 真黒三太


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決戦開始

 廃コロニーの残骸や老朽化した宇宙船などが無数に寄り集まり、これもジャンクパーツを改造した連絡通路によってそれぞれ結び合わされ、さながら遺伝子配列のごとき複雑な様相を呈している……。

 正常な神経の人間ならば空中分解を心配するだろう内部に集っているのは、いずれもガラが悪く、真に頼れるのは己の実力だけであると悟っているような――裏社会の住人たちだ。


 ヤクザがいる。

 海賊がいる。

 ニンジャがいる。

 あるいは、表立っての商売ではなく、彼ら相手に利益を生み出す闇商人たちの姿も散見された。


 そのような者たちが、廃棄された輸送船の格納庫を改造したバーに集い、それぞれダンスやミュージック、酒などを楽しんでいるのである。

 当然ながら、他の区画においては、あらゆるみだらな行為を行うための施設や、あるいは、PLを始めとする各種兵器の密造工廠(こうしょう)などが整っていた。


 さながらここは、銀河に生み出された――ソドムとゴモラ。

 人類は英知を持って宇宙へ進出すると共に、旧約聖書へ記された悪徳までも持ち込んでいたのである。


「スカベンジャーズを取り込めなかったのは痛いが……。

 その他、ここ『薔薇の園』に呼び寄せた者たちは我が意に賛同し、旗下に加わってくれた。

 まずもって、順調といえるだろう」


 二階席から下のバカ騒ぎを見下ろしていたカトーは、そう言ってテキーラの入ったグラスを飲み干した。

 度数の高いアルコールを入れてこゆるぎもしないのは、単にアルコールへ耐性があるだけではなく、真に酔うべきはこれからのイクサであると心得ているからである。


「対して、あちらの戦力は削りに削ってある。

 ふふ……自画自賛しているようで、少々こそばゆいですが、な」


 答えたのは、同じく階下の騒ぎを見下ろしていたヴァンガードであった。

 日本の鎧武者を思わせるフルヘルムに漆黒のコートという装いは、常の通りだが……。

 今は飲み物――冷たいリョクチャだ――を手にしている都合上、口元の部分が開口しており、そこだけで美形と断じれる唇が露出している。

 サイボーグじみた印象を与えられるこの怪人物だが、こうして飲食物を取っている様からは、やはり生の人間であることが知れた。


「ムッハハ……お主の働きぶりには感謝している。

 お主を遣わした御仁にも、是非、そのことを伝えて頂きたいものだな。

 何しろ、お主らの情報と技術の提供がなければ、この『薔薇の園』を秘密裏に建造することも、ここまで速やかに事を起こすこともかなわなかったのだから……」


「我々は、そう大したことをしていません。

 ここ『薔薇の園』にせよ、提供したのはあくまでも小型重力コントロール装置のみ。

 築き上げられたのは、カトー殿の力があればこそですよ」


「力があれど、振るう機会がないのでは、錆びついたカタナと同じ……。

 その場を整えてくれたことに、わしとここへ集った裏社会の者たちは感謝しているのだ」


 ――ミシリ。


 ……と、ガラス製のショットグラスに力を込めながら、カトーは答える。


「我らは、我らなりの想いをもって荒れ果てた帝国社会で生き、一定の秩序をもたらしてきた。

 だが、それに対し、ケンジを始めとする表の者たちが何をしてくれたか?

 ――何もしていない。

 ばかりか、隙があれば狩り立てようと躍起になっている。

 これは、聖戦だ。

 裏と表をひっくり返し、我らがここにあることを銀河中へ知らしめるための、な」


「志の崇高さは、よくよく理解しています。

 この私も、非力なれど力をお貸ししましょう」


「うむ、頼りにしている。

 とはいえ、これだけの強者たちが集まったのだ。

 決戦では、数によって押し潰す王道の戦術を採用することとなるだろう。

 何しろ、彼我の戦力差は圧倒的なのだから、な。

 ……いや、油断は禁物か。

 このような時にこそ、襟元を正さねば」


 言葉通り、カトーは着ているキモノの襟元を正す。


 ――ブーッ!


 ――ブーッ!


 ――ブーッ!


 非常事態を告げるブザーが『薔薇の園』中に鳴り響いたのは、その時であった。


「きたか。

 情報提供は、相手に降ったスカベンジャーズだろう。

 小惑星帯に潜ませたここのことは、ヤクザとニンジャがそれとなく裏社会で伝え回っていたからな。

 それにしても、守るのではなく自ら挑んでくるとは……ケンジめ、存外と度胸がある」


「数で劣る側がわざわざ攻勢を仕掛けてきたのですから、よほどの秘策があるのでしょう。

 私はひとまず控え、お手並みを拝見しようと思いますが?」


「それでよろしい。

 ――音楽を止めよ!

 諸君、戦いの時間だ!」


 カトーの命に従い、音楽の止まった空間で、屈強なならず者たちが、それぞれの母船へと引き返していく。

 いよいよ、タナカ伯爵家を転覆せしめるオオイクサが始まるのだ。




--




「ケンジめ、カカシを立ててきたか」


 自らも移動した旗艦オーサカのブリッジで、巨大スクリーンに表示されたレーダー表示を見据えたカトーは、一目で敵の戦術を看破していた。


「破壊されたPLの残骸をひとまずは浮かべ、数の偽装を図ってきたというわけですか。

 健在なPLにとっては盾となりますし、可能な機体にはタレットとしての機能も付与してありましょう。

 少ない数を補うには、なかなかの手ですな」


 カトーが座した艦長席の隣に立つヴァンガードが、敵の戦術をそう評する。

 そう、レーダー表示だけで見るならば、敵の総戦力は悪漢たちを取り込んだカトー軍に匹敵した。

 ただ、これはあくまでも、見せかけ……。

 破壊されたPLを、数少ない稼働可能な艦で根こそぎ係留してきたのは、明らかだ。


「ならば、取り立てて脅威とみなす必要もあるまい。

 ――各艦、砲撃戦準備。

 PL隊は、砲撃の後に敵陣へ突っ込み、これを引き裂け」


「ヨロコンデー!」


 カトーの命に従い、ブリッジへ詰めるオペレーターヤクザたちが、味方陣営に指令内容を伝達していく。

 ほどなくして、『薔薇の園』前面へ展開した艦隊が、次々と艦砲のビームやミサイルを放っていった。


「これこそが、始まり。

 新たな時代の開幕を告げる狼煙よ」


 その光景を見ながら、カトーはそうつぶやいたのである。




--




「……始まった」


挿絵(By みてみん)


 取り戻した専用パイロットスーツに身を包んだ俺は、愛機のコックピット内で小さくつぶやく。

 あれだけ、堂々とした決戦に固執していたカトーだ。

 少々の怪しさがあろうとも、目の前へ出現した敵に対し、正面から叩き潰そうとしてくるのは――計算通り。


「後は、ここからわたしたちがどれだけ上手く動けるか、か」


 言いながら、機体のセッティングを確かめる。

 ユーリ君とチューキョーが誇る技術者たちの手際は、完璧の一言だ。

 隠密性を高めるため、限りなく低出力で運用されていたプラネット・リアクターが、徐々にその力を解放し始めていた。


 お読み頂きありがとうございます。

 次回は、強化主人公機のお披露目です。


 また、「面白かった」「続きが気になる」と思ったなら、是非、評価やブクマ、いいねなどをよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ソドムとゴモラ、薔薇の園、アッーーー!!
拙者、主人公機(量産型のカスタムタイプ)大好き侍 特に汎用性が高い機体に互換性のある武器持たせて闘い方変えるタイプが一番味が出るんだから
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