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悪役令嬢に転生しましたが、人型機動兵器の存在する世界だったので、破滅回避も何もかもぶん投げて最強エースパイロットを目指します。  作者: 真黒三太


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超電磁にラV・ソングを 9

 様々な計器と巨大スクリーン……。

 それから、無数のホログラムウィンドウが浮かぶファルコンビッグ城のブリッジは、まさに騒然という言葉がふさわしい状況であった。


「未確認飛行物体群、ネオマニラ上空になおも浮遊中!」


「ドクロ型のマシーンは、ここファルコンビッグ城を目指して進撃中です!」


「迎撃にリッター隊を向かわせていますが、駄目です! 逐次撃墜されていきます!」


 オペレーターたちが、悲痛な声で報告を上げていく。

 モニターを見上げれば、彼らの言葉が裏付けられるように……。

 電子ジャーめいたファルコンビッグ城の上部ハッチを開いて出撃させたPLたちは、謎のドクロマシーンによって次々と殴り倒され、撃墜されていた。


 それにしても、不可思議なのはビームが当たらないこと……。

 出撃したリッター隊は、たまに思い出したかのごとくビームライフルを発射するのだが、荷電粒子ビームはあれだけ巨大なドクロマシーンに当たることなく、明後日の方向へ飛んでいくだけである。

 まるで、アクション映画のやられ役たちがどれだけ乱射しても主役には当たらないというあの現象を、巨大なロボットサイズで再現しているかのようだ。


「来たか。

 見ての通り、戦況は悲惨だ。

 我が方のリッター隊は、謎の機体に対して成す術がない。

 このままでは、じきにこのファルコンビッグ城へと到達されることだろう」


 ブリッジへ入ったスティーヴたちに対し、滅多なことでは着用しない軍服をまとったネッド・ラゴール男爵が、深刻そうな声音で告げる。


「お父様……。

 言われた通りに参上いたしましたが、これは一体?」


「うむ……。

 まずは、現状について簡単な説明をしよう。

 正体不明のマシーンたちを操っている勢力は、その名も――ハイヒューマン。

 フィリピンVは、外宇宙からやって来た彼らに、狙われているのだよ!」


 な……。


「「「「「「なんだってー!?」」」」」」


 合唱よろしく、皆の声がハモった。




--




「なんですってー!?」


「本当なんですか!?

 キバ……ご領主様!」


 聖歌隊のメンバーが口々に問いかけるのを、後ろから見やりながら……。


 ――計画通り!


挿絵(By みてみん)


 俺は一人、邪悪な笑みを浮かべる。

 そう、たった今、フィリピンV全体を巻き込んでいる騒乱……。

 これは、俺とネッド男爵……それからラゴール男爵軍上層部及びパイロットが結託して行っているヤラセなのだ。

 ここまで……長かったぜぇ。


 きっかけは、語るまでもない……ヒラクが乗っていたマグという機体に用いられていた超電磁誘導技術であった。


 ――超電磁。


 その三文字を聞いて、全長六十メートル級の合体ロボットが思い浮かばない奴は、そりゃもうモグリである。

 当然、俺も思い浮かべた。

 で、せっかくだから超電磁パワーで五機の戦闘機が合体するスーパーロボットを建造し、乗りたいと思った。

 コスモアイドル、カミュ・ロマーノフ……思い立ったら即行動である。


 とはいえ、問題は山積みだ。

 具体的には、資金、人手、技術の三つが足らない。

 だが、カミュ・ロマーノフとして生まれながらに施されてきた貴族令嬢の教育が、ここに光明を差した。

 それこそ、この惑星……フィリピンVだ。


 ――フィリピンV。


 そのド直球な惑星名から分かる通り、フィリピン人の末裔たちによって構成される単一人種惑星である。

 しかも、その領主であるネッド・ラゴール男爵は、天才的な科学者としても知られた人物だという……。

 ここに、ピースは揃った。

 今世と前世の知識が交差した時、超電磁は――始まったのである。


 まず、資金と人手に関しては楽々とクリアだ。

 万人がご存知の通り、フィリピン人というのは超電磁――マシーンの方――に目がない。

 どのくらい目がないかといえば、アホみたいに気合いの入ったCGによるレガシー実写ドラマを、本家以上のボリュームでこさえちゃうくらいである。

 その他、主題歌を陸軍軍歌に――当然日本語で――採用したり、アニメの流れと酷似した革命で政権樹立したり、前世地球におけるフィリピン人の逸話は数限りない。


 その末裔を治める領主に、超電磁技術をちらつかせれば、どうなるか……?

 永き時を経て、超電磁文化は悲しいかな……失われていた。

 しかし、フィリピン人のDNAに刻み込まれた因子が、彼を目覚めさせたのだ。


 ――オッケイ!


 二つ返事とは、まさにこのこと。

 フィリピンV人の誇りにかけて、国家予算級の資金と、半端なく必要な人手を確保してくれるという……。

 そして、これは同時に、技術的な問題がクリアされた瞬間でもあった。

 フィリピンV人の誇る頭脳たるネッド・ラゴール男爵自らが、横流ししたデータの分析と研究へ従事してくれたのである。


 とはいえ、モノはハイヒューマンの出処不明な超テクノロジー……上手くいくかは疑問だったが、彼は大いにがんばってくれた。

 あるいは、その血へ眠る宿命に突き動かされたか。

 大した時間も経っていないというのに、見事、超電磁パワーで稼働し、合体する五機のスーパーマシーンを造り出してくれたのである。


 だが、ここで問題が生じた。俺だ。

 正確には、皇帝陛下が目を付けてきたことである。

 そこで、たった今起こっているこの騒乱だ。

 空を飛び回っている円盤型ドローンも、無駄にサイズだけデカいドクロロボットも、その全てが急ごしらえなハリボテ。

 フィリピンV全てを巻き込んでのカバーストーリー成立に向けて用意した小道具であり、大道具であった。


 さあ、ネッド男爵よ。

 存分に演じたまえ!


「君たちは修道院暮らしのため、知らないかもしれないが、タナカ伯爵領で起こった謀反を皮切りに、今、帝国全土で事件が発生している。

 その多くに関わっているのが、ハイヒューマンと呼ばれる存在……。

 おそらく外宇宙からやって来たのだろうこの侵略者が、美しきフィリピンVへ目を付けるのは自明の理。

 そこで私は、悪しき侵略者に対抗するための技術を開発していた。

 それが、超電磁テクノロジーだ。

 もっとも、研究過程で技術が流出し、ラノーグ公爵領でハイヒューマンが悪用していたようだがな」


 スラスラと連発される大ウソの数々。

 これを、照れも何もなく、淀みない口調で言い切るのだから、なかなか大したものだ。


「超電磁……」


「なんだか、聞いてると胸の奥が熱くなってくるわ!」


「それなら、やれそうな気がする!」


「ワタシ、ワクワクしてきたよ!」


 スティーヴを除くメンバーが、口々に言い合った。

 ククク、そうだ。その反応を待っていたぞ。


「そして、超電磁テクノロジーで生み出したのがコネクマシーンと呼ばれる五機の戦闘機だ」


 男爵が指を鳴らすと、周囲のホログラムウィンドウにそれぞれ特徴的なデザインをした戦闘機が映し出される。


「これら五機のマシーンは、抜群の連携を持つ者が運用することで、最大の能力を発揮する。

 そこで、聖歌隊の……いや、コネクチームの諸君。

 君たちにこのマシーンを操ってもらい、ハイヒューマンを倒してもらいたい」


 ネッド男爵が皆を見回すと……。

 聖歌隊あらため、コネクチームの皆が力強くうなずいた。


「ハン……荒馬を乗りこなすのと、どっちが楽しいかね」


「あたい、乗り物に乗るなんて初めて!

 なんだか、とっても楽しそう!」


「クノイチの技……まさか、活かす時がくるなんてね」


「出力や機体の管理は任せて!」


 マークゴードン、ビッグバート、ジェイミーロビンソン、リトルジョンの四人が、旺盛な戦意と共に応える。


 ――話が早い!


 さすがはフィリピン人の末裔だ……超電磁を目にすると、ノリの良さが違う。

 どこぞの新な世紀みたく、ここでごもっともなゴネっぷりを見せられると困ってしまったからな。


「では、それぞれの機体を発表しよう。

 コネクボンバーにはマークゴードン。

 コネクパンザーにはビッグバート。

 コネクフリゲートにはリトルジョン。

 コネクランダーにはジェイミーロビンソン。

 それから、コネククルーザーだが……」


 ――きた!


 コネククルーザーこそ、一号機にして最も重要な機体!

 これのパイロットをするために、この俺は……!

 ネッド男爵と俺の視線が、交差する。

 他のメンバーも、当然という顔で俺を見ていた。

 フッフッフ……信頼が心地いいぜ!


「最も重要なクルーザーには――」


「――わたしに行かせてください!」


 男爵の言葉を遮り……。

 シスター・マリア・スティーヴが前へと歩み出た。


 ――へ?


 お読み頂きありがとうございます。

 次回、コネクチーム結成です。


 また、「面白かった」「続きが気になる」と思ったなら、是非、評価やブクマ、いいねなどをよろしくお願いします。

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