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悪役令嬢に転生しましたが、人型機動兵器の存在する世界だったので、破滅回避も何もかもぶん投げて最強エースパイロットを目指します。  作者: 真黒三太


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超電磁にラV・ソングを 4

 そんなこんなで無事にシスター・マリア・アームストロングとして、ファルコンビッグ城の修道院へと潜り込み……。

 俺は、順調にシスター・マリア・スティーヴ含む聖歌隊メンバーとの絆を深めていた。

 いやあ、ここまで色々とあったもんである。

 まず、このメンバー……歌唱隊としては、驚くほどのド下手揃いだったからな!


 スティーヴは、オドオドとしてロクに声も出さず……。

 マークゴードンは、そもそも協調性もやる気もない。

 ビッグバートはデカい声張り上げるだけで、歌の体を成しておらず。

 ジェイミーロビンソンは、どうにかせねばならぬという思いこそあったものの、その手段が思い付かない。

 リトルジョンに至っては、ただなんとなく在籍しているだけで、修道院の掃除をロボットに任せてしまおうとばかり画策し、ジャンク品からこれを作り上げていた。


 なんだろうな……。

 スポーツ漫画で、問題児しかいない部活の顧問として赴任した教師キャラみたいな気分である。

 多分、舞台は二子玉川だ。


 で、将を射るために馬を射るために、俺は彼女ら聖歌隊をまず、徹底的に鍛え上げた。

 スティーヴには、歌う喜びを知ってもらうため、手でお腹を補助してやりながら腹式呼吸を習得してもらい……。

 マークゴードンは、そもそも修道院入りするまでの境遇に問題があったため、ジェイミーロビンソンの協力を得て解決。ついでに、ジェイミーロビンソンとの仲も深まり、アイエエ! クノイチであることや、キキョウさんの親戚であることも知った。

 ビッグバートには、自分一人が気分よく歌うのではなく、皆でハーモニーすることが大切であると説くと共に、彼女の見せ場となる大声量ソロパートを用意し……。

 リトルジョンは、自作していたタコ型お掃除ロボットが偉いシスターたちの怒りに触れて捨てられそうだったので庇い、むしろ、この創意工夫をこそ褒めてやるべきだと直談判したら懐いてくれた。


 いやあ、色々とイベントこなしたなあ。

 映画だったら、そろそろ80分くらい尺使って、いよいよクライマックスへ突入する場面である。ちなみに俺は100分前後にまとまった映画が好きで、配信待ち吹き替え派だ。


 とはいえ、現実というものは非情にして退屈なもの……。

 そもそも、目的はあーあー……ネッド男爵ガヤッテイル秘密ノ事業ヲ調査スルコト……であり、男爵本人には今のところ全然近付けていない。

 と、いうわけで、俺は将を射るための馬である聖歌隊メンバーとさらに交流を深めるべく、ネオマニラのビーチへやって来ていたのである。


「うわあ……皆さん、楽しそう!

 ねえねえ、あたいたちも遊ばない!

 ビーチボール、前からやってみたかったの!」


「ビッグバートったら、はしゃぐんじゃないの。

 アタシたちは、遊びに来たわけじゃないんだよ」


「そうそう。

 外でせーそー作業? っていうのをやりに来たんだからさ」


 ビッグバートにツッコミ入れるマークゴードンとリトルジョンだが、そう言っている彼女らもどことなーく楽しそうだ。

 まあ、普段が厳格な修道院暮らしだからな。

 男女共に開放感たっぷりな水着姿となり、波打ち際ではしゃいだり砂浜に寝そべったりしている観光客たちの姿や、それを相手に威勢よく商売する屋台の光景なんかは、刺激的だろう。

 ……ところで、ついさっきまで、ちょっとだけうなじにピリッとした感覚があったな。

 まあ、すぐになくなったし、カミュちゃんムズムズではなく、潮風に肌がひりついたのだろう。


「でも、確かにシスター・マリア・アームストロングが言っていた通り、ゴミが多いわね」


 水着姿の男性に顔を赤らめたりしていたスティーヴが、このビーチへ存在する問題に気付き、深刻な顔となる。


「観光産業の問題点ってやつね。

 もちろん、きちんとゴミを持ち帰るマナーの良い観光客も多いけど、そうでない人間も同じくらい多い。

 思いっきり景観を汚しちゃっているわ」


 ジェイミーロビンソンが、肩をすくめながら言った通り……。

 美しきビーチのそこかしこに見られるのが、打ち捨てられたゴミだ。

 さすがに、行政も対応しているのか、言うほど景観を汚しているわけじゃない。

 だが、回収しきれていない――あるいは、回収した先からゴミがポイ捨てされているのか、砂浜には空の容器や飲料などがそこかしこに見られるのだ。


「だからこそ、わたしたちの出番ですよ」


挿絵(By みてみん)


 手近に捨てられていたゴミ――スポーツドリンクの容器だ――を拾い上げ、一同に振り返りながら告げる。


「主が与えたもうた美しきビーチを、美しいままに……。

 せっかく、お年寄りのシスターたちから外部で奉仕活動する許可をもらったのです。

 わたしたちで、綺麗なビーチにしましょう!」


「「「「「おう!」」」」」


 かくして、地道なゴミ拾い活動が幕を上げたのであった。




--




 ――あばばばばば!


 ――なんかカミュちゃまきちょる!


 ――私は宇宙港でサングラスかけてたし、まあ、大丈夫だろうが……。


 ――クリッシュ! お前は顔を知られてるから隠れろ!


 観光客向けに串焼きの料理をしつつ、ヴァンガードは炭火由来じゃない汗をかきながら、慌てて同胞に警告したのである。


 ――言われなくてもスタコラサッサだよー。


 ――あと、思念波は感知されるからもう出しちゃダメだよー。


 見れば、それだけ思念で言い残したクリッシュが、さっさと荷物をまとめてビーチから出て行くところであった。


「お兄さん、どうしたのー?」


 目の前には、串焼きが出来上がるのを待つ観光客のお姉さん……。


「ああいや、申し訳ありません。

 尼さんたちがビーチに来ているのを見て、少し驚いちゃって」


 串打ち三年焼き一生とは、あくまで旧人類にとっての指標……。

 誇り高きハイヒューマンであるヴァンガードは、キロいくらのカッスイ肉から最高潮の旨味が引き出せる瞬間を見逃さない。

 突然のカミュちゃま登場に動揺しつつも、見事、ビキニねーちゃんが希望した鶏もも肉の串を四本焼き上げる。


「はい、どうぞ!」


「ありがとう……あそこのシスターたちって、最近話題になってるファルコンビッグ城修道院の聖歌隊かしら?

 あたし、何回かここへは来たことあるけど、シスターがビーチに来るなんていうのは初めてね」


「見たところ、ゴミ拾いをしてるみたいですねー」


 ――カミュちゃまに拾われるゴミとなりたい。


 そんなことを考えつつ、シスターたちの様子を見た。

 すると……である。

 シスターの一人が不意に口を開くと、何やら歌い出したのである。


「拾おう、この美しき砂浜で。

 主の愛で満たされる世界を夢見て。

 ひとつずつ、手を伸ばそう。

 神の恵みと共に、地を清める」


 長く伸ばした黒髪が印象的なシスター……。

 事前調査したところによると、確かシスター・マリア・スティーヴという娘だ。

 本名はマリアンヌ・ラゴールで、ここフィリピンVを治めるネッド・ラゴール男爵の娘だという。


「この海を見て、広がる青空。

 神が作りし、この素晴らしき惑星(ほし)

 だけど目を凝らせば、悲しみの影。

 誰かが置いたゴミ、私たちの使命」


 スティーヴに続き、ぽっちゃりした娘さんが豊かな声量で歌い上げる。


「拾おう、この美しき砂浜で。

 主の愛で満たされる世界を夢見て。

 ひとつずつ、手を伸ばそう。

 神の恵みと共に、地を清める」


 ややスレた印象を受ける娘が、確かな友情に満ちた笑みと共に引き継ぐ。


「貝殻が語る、昔の輝き。

 鳥たちの歌声、愛の調べ。

 小さな行いが、大きな変化に。

 私たちが希望の灯を灯す」


 日系フィリピンV人の少女によるソプラノパートが、全体の歌調を引き締め……。


「拾おう、この美しき砂浜を。

 主の愛で満たされる世界を夢見て。

 ひとつずつ、手を伸ばそう。

 神の恵みと共に、地を清める」


 最年少の少女が、いまだ声変わりしていない喉を精一杯に震わせた。

 これは……これは……。


「かーわいいー!

 歌いながらゴミ掃除するなんて、フィリピンVのシスターさんたちは、とっても陽気なのね!」


 串焼きを受け取ったビキニねーちゃんの言葉は、しかし、正確ではない。

 フィリピンVに潜入するなり、当然ながら例の修道院で行われるミサへ通い詰めているヴァンガードには分かる。

 これは――即興歌。

 歌詞もリズムも、この場で思いつくままに歌っているのだ。


 その完成度は、聖歌隊メンバーが積んできた研鑽の程をうかがえるものであり……。

 ついに、カミュちゃま――シスター・マリア・アームストロングがこれを引き継ぐ。


「『与えられた地を守るのは私たち』。

 主が語る声を聞いて。

 祈りを込めて、一歩一歩。

 愛を持って世界を癒す」


 ――グゥレイト!


 心中で喝采を上げるヴァンガードだ。

 愛機であるベレッタは機動性重視の調整を施してあるが、今だけはなぜか砲撃支援機に乗りたい気分である。

 そうしている間にも、六人による歌は続く。


「「「「「「拾おう、この美しき砂浜で。

 主の愛で満たされる世界を夢見て。

 ひとつずつ、手を伸ばそう。

 神の恵みと共に、地を清める」」」」」」


「おお……」


 笑顔で歌いながらゴミ拾いへ興じる少女たちの姿を見て、自然、ヴァンガードは砂浜に膝を突いた。


「「「「「「アーメン、アーメン、主と共に

この砂浜に愛を残そう。

 アーメン、アーメン、祈りの中で。

 未来のために、手を繋ごう」」」」」」


「エイメン……!」


 そして、そのまま両手を組むと、このセッションへ居合わせた幸運を主に感謝したのである。


「祈った!?」


 ビキニねーちゃんの驚く声など、耳には入らなかった。


 ※ゴスペルパートはAIに作らせました。


 お読み頂きありがとうございます。

 次回は、衝撃の真相が明らかになります。


 また、「面白かった」「続きが気になる」と思ったなら、是非、評価やブクマ、いいねなどをよろしくお願いします。


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