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「さぁ、遠慮せずくつろいでくつろいで~」


と、お姉さんは座卓の上にお茶と沢山の茶菓子を置いていく。

現在、僕は和室でもてなされていた。


あの後、本殿に着物姿のお姉さんが来て、僕を見るなり『アラ、来てたのね』と親し気な反応をされ、流されるままに本殿隣にある住居へと招かれたのだった。


「しっかし。もういとと仲良くなってるなんて、やるねぇみつちゃんっ」


「母さん、とりあえず説明を」


座卓を挟んだ僕の向かい側に座る巫女さんが、僕の隣に居るお姉さん……もとい、彼女のママさんを睨み付ける。


「言ったでしょ糸、居候する子が居るって。今日から家族になる因幡いなば蜜ちゃんよ」

「確かに写真で見た……。五色糸ごしきいとです、宜しくお願いします、蜜さん」


小さく頭を下げられた。


――なんとまぁ偶然立ち寄った神社が新たな僕の住処だったとは。

前もって知ってたのは住所だけで、町の散策に飽きたら携帯で調べようと思っていたのに……

これもまた、縁ってヤツか。


「宜しくお願いします」と僕も頭を下げる。

糸さんの僕を見る瞳は未だ懐疑的なソレだった。



夕方。


『歓迎会するから用意が出来るまでにお風呂入っちゃって』と、宮司でもあるらしいママさんに言われたので、有難く頂戴する事に。


「ふぅ」


と息を吐く僕。

檜づくりの大きなお風呂だ。

 木の香りが体の疲れを薄めてくれる。

今日からの新しい生活、明日から新しい学校。上手くやっていけるだろうか。


「何か心配事かえ?」

「色々とねぇ……、……で、君はどちら様で?」


いつから居たのだろう。

桜色髪の姫カット少女が僕の側に居た。

切れ目で生意気そうで中学生ぐらいの、不思議な魅力のある美少女。


それと――〈既視感〉。


「あ~うむ、この家の関係者じゃな」


とばつが悪そうに明後日の方を見る少女。

糸さんの妹さんかな?

でも、彼女は黒髪でこの子は……複雑な家庭なのだろうか。

まぁ誰にでも触れられたくない部分はあるよね。


「そ、そんな事より、先程は大変だったようじゃな!」

「作業員の兄ちゃんに追われた事? そうでもない。この神社の御神体様が助けてくれたし」

「そうじゃろそうじゃろ! もっと感謝せい!」


無い胸をエッヘンと張る少女ちゃん。

偉そう。

丁度が良いので色々とここの事を訊く


「有名なの? この神社」

「うむっ。云百年と続く由緒正しいエリンギ……エンギリジンジャーじゃ」


噛んだ。

由緒正しいキノコ生姜炒めとは一体?


「まぁ、再び栄え出したのは『糸が生まれてから』じゃが……」

「糸さんが? それってどういう」


『ガラッ』


「おや。まだ入ってたのですね」


突然の乱入者。

髪を下ろした糸さんが、一糸纏わぬ姿を曝け出している。

いや、彼女の家だしいつ風呂に入ろうが彼女の勝手なのだけれど……

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