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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

欠損少女シリーズ 『傷ついた少女達を治し癒し惚れさせる再生技師の刻々なるままに』


「ぅぁ……ぅぅぅ……ぁぅぁ………」


 汚いかごの用な物に入れられた。傷と汚れが酷い金髪の女の子が僕の目を見つめている。


 僕の名前はハルカ・カナタ。日本からの転生者であり。この世界オルフェリアでは、再生技師として働き生計を立てている。


 そして、現在、僕の目の前には、苦しそうな小さいうめき声を上げ続ける女の子が店の片隅に放置されている。


 かつては隣国ミラの聖女様として、あがめられたれの果て。


「だからよう。ハルカよう。さっきから何回もやるって言ってんだろう? この不良品をただてお前にやるってよう」


 この胡散臭そうな人はこの店。雑貨屋兼廃棄フリークリバル屋の亭主のタダルさん。


 僕がいつも買い物に来ると。店の不要品をただて押し付け…くれる迷惑な人だ。


「だから。さっきも言ったじゃないですか。無理ですって……」

「そこをなんとか頼むぜ! コイツは1日中呻うめいていてうるせえくせによう。下腹部は処女を失う前に、熱せられた鉄で焼かれまくって使いものにならねえときた。毎日毎日下はされるわ。困ってんだよ」


 酷い言いようだ。どうせ自分から奴隷市場から買っただろうに。


 売れない商品と分かれば、僕に押し付けようと躍起やっきになって頼み込んで来る。


 いつもだったら。物を押し付けられる為、仕方なく受け取ってしまうけど。今回は駄目だ。


 ……なんせ人だもの。言葉巧みに奴隷市場で買わされたとか言っていたけど。


 流石に身体が手足が切断され。病気まで持っている人は受け取れない。


 この世界は残酷なんだ。冷静に物事を考えて適切に処理しなければならない。


 僕がいくら住む家を持っている身で、目の前の病気持ちで自分から歩く事も出来ない女の子をやしなえるとは思えない。


「なぁ! 頼むぜ! タダだぜ! タダだ! あのミラの聖女がタダで俺から貰えるんだぞ。ハルカ!」


「……そう言われて騙されて引き取ったんですか? タダルさんは?」


「う! し、仕方ねえだろう。定価の9割で元聖女売ってやるとか言われたら。誰でも買うだろうがよ!」


 悪意無き熱意。流石、自称は一流の商売。見事に奴隷商人に騙されて、この女の子を買わされたわけですか。


 このタダルさん。道徳心という物は一切持ち合わせていませんが。悪い人じゃないんですよね。どこぞの薬屋のヤブイシャみたいな人です。


「なあ~! ハルカ。頼むぜ! このままだと内の店が、この嬢ちゃんが放つあれでよう……」


「し! ちょっと静かにしてくれませんか。タダルさん。色々と考え中なので……」


「ぅぁ……ぇぅ……ぁぁぅ…………」


 うつろな目で僕を見つめている。助けを求めている?……いや。何かを訴えかけている様な目ですね。


 両腕両腕は第一関節から切断。切断面は鋭利えいりのこぎりで切られた後あり。


 左片目は潰され。かろうじて右片目が見れる状態ですか。髪も抜け毛が酷い……身体中もあざ化膿かのうした傷ばかり。


 性病……性魔病も持っている。このまま放って置けば。後、数年で寿命を迎える身体ですね。


 《《僕が彼女を引き取らなかった場合は》》


「………ぁぁぅ………ぇぅ……」


 ただれた顔で彼女は見つめている。


「……仕方ありませんね。引き取りましょう」


「ほ、本当かよ! いやー! 助かったぜ! ハルカ! 流石、俺の商売の廃棄場所……じゃなくて親友だな! ゲヘヘ」


 汚い笑い方を……これで根っからは悪人じゃないのが厄介なんですよね。国の法律やらはちゃんと守るし。


「……ただし。この女の子の欠損した身体が治って。普通に暮らせる様になっても。返してくれとは言わないで下さいね」


「おうおう。言わねえ。言わねえ。なんなら"宣言書"も書くぜ!」


「そうですか。なら、お願いします」


 僕はふところから羽ペンと宣言書を取り出し。タダルさんに手渡した。


 宣言書とは魔法契約でお互いに交わした約束をしっかり守り。もしもその約束を破った場合は、何かしらのペナルティが下される契約書。


「ハルカ。お前、懐にいつも宣言書なんて入れてんのかよ。商売好きにも程があるぜ。カキカキと……ホラよ!」


「チャンスはいつどこでめぐって来るか分かりませんからね……どうも。それでは行きましょうか。ミラの元聖女さん。貴女を治す為に」


「………ぅぁぁぅ」


 僕は、彼女が乗っている籠を優しく持ち上げて歩き出した。


「その廃棄品を治す? 無理だ。無理だぜ。ハルカ~! ソイツはもう手遅れだよ! 魔の呪いまでかかってるんだからな~! まぁ、せいぜい良い最後を迎えさせてやってくれや。じゃあな~! ゲヘヘ!!」


 悪意の無いタダルさんのいらない声援が聴こえて来る。


「……治しますよ。必ず」


 この世界は残酷だ。それは僕が産まれた時には気がついた。この世界の真実。


 だから欠損少女なんて本当は引き受けたくなかった。


 だけど彼女と目が合った時、彼女の目は、僕にこううったえかけていた。


 《《私はまだ生きたい》》と!


「それなら君を助けましょう。なんせ、僕なら君のあらゆる欠損を救えるのですから」


 僕は力強くそう告げると彼女は小さな声でこう告げた。


「…………ぁぅゅぁぅ………」


 ありがとうと……




自分の店に帰って来た。


 両手はミラの聖女が入ったかごをだふさがれている為、店の中に居るだろう"使い魔"に声をかける。


「モカ! 僕だ! この扉を開けてくれないか! 手が塞がれていて開けられないんだ!」

「………ぅぉぁ………」


「ニャン~!」


 店の中から猫の声が聴こえてきた後、店の扉が静かに開いた。


「……お帰りなさい。主様……!……両手のかごは誰?」


 黒髪の少女が僕が持つかごが気になったのか。モカは籠の中をのぞき込んだ。


「……手足無しの女の子? 何これ? 主様」


「……ぅぅぅ……」


 ミラの聖女は、モカに姿を見られるが嫌なのか。うめき声を上げ始めた。


 これは失敗した。こんな酷い姿の彼女に対して配慮にかけていた。


「モカ、数週間の間、店は君に任せる。お客様が来ても販売以外は断っておいてくれ」


「……へ? その間。主様は何するの?」


「この女の子の治療に集中する……じゃあ、後は宜しく頼むよ。僕は治療室に、このを運ぶからね」


「……それは勝手すぎる。そんな過重労働モカは納得しないよ。主さ……もう居ない?」




「ふぅ……やっと綺麗な場所に来ましたね。外は汚い場所が多くてやはり好きになれません」


 清潔感溢れる自慢の治療室に着いた。


 部屋の周囲には、ありとあらゆる貴重な医書や魔道書がたなに並び。薬草等が入った小瓶がテーブルにズラリと置かれている。


「……ゃぁぅ……ぁぁぅ……」


「おっと! すみません。さっきは恥ずかしい思いをさせてしまって……ですが。すみませんをまた君に恥ずかしい思いをさせてしまう事になるので許しいです」


「……ぅぅぅ……?」


 不思議そうな表情で僕の事を見つめる彼女。


「先ずは服を脱いで身体を清潔にしましょう。その後はセッコクの湯煎ゆせんに君をけて、身体中の傷とあざを治療していきます」


「……………ぁぅ?」


 見える方の片眼でにらむ様に僕の顔をのぞき込んで来る。


「そんな目をされても仕方しかたありません。そうしないと今の君は身体は、あの不摂生極まりない店に居たので汚れてしまっています。なので直ぐにでも君の身体を綺麗にしてあげたかったんですよ」


「………ぅぁぁぅぅ!……ぁぅ……」


 赤面しながら怒る様に小さいうめき声を上げる元聖女さん。


 僕はそんな彼女を無視して、そこら中がれてボロボロになった彼女の服を《《手刀》》で丁寧に切っていく。


「………ぅぁゅぅゅ……」


 赤ちゃんの様に身体をよじらせながら抵抗してくるけど。そんな事をいちいち気にしていたら作業が進まない為、無神経に作業を進める。


「恥ずかしいのも嫌なの分かります。ですが、これも貴女の身体を清潔に保つ為ですからね」


「………ぅゅ……」


 どうやら納得してもらえた様で。先程まであった殺意をやっと消してくれた。


 彼女の服を脱がし終えると。彼女の身体の酷さがよりはっきりと分かった。


 身体の傷が本当に酷い。とくに両手両足……切断された断面は、のこぎりの扱い方も知らない素人が切った様に雑に切られていた。

 


 身体中の皮膚はうみが溜まり異臭いしゅうを放っていた。


「"メルブァ布生地"で身体をいていきますね。これは傷付いた対象者の身体を癒す力があるんですよ」


 "メルブァ布生地"を温かい聖水のお湯に浸けてからしぼり。優しい元聖女さんの身体をいていく。


「………ぁゅぅ………ぅゃぃぃ」


 汚れていた身体をかれて気持ち良さそうな顔する元聖女さん。


 この拭く作業の間に裏庭にある風呂場にセンテラのハーブを入れた湯を沸かしていく。


「……しかし酷い。身体の傷ですね。貴女の喉と口の中の治療が終わり。喋れる様になったら貴女に何があったのか僕に教えて下さいね。元聖女さん」


「…………ぅゅ」


 小さくうなずいてくれた。どうやら、僕に心を開き始めてくれたのかな?



身体を拭き終えた後、元聖女さんをかかえた僕は、裏庭にある風呂場へと移動し。彼女を湯船ゆぶねの中へとゆっくりと入れてあげた。


「………ゅぁぅ……ぅゅぃ……」


 元聖女さんの肌お湯に合わせて入れたの為、気持ち良さそうな表情で喜んでいる。良かった。


「元聖女さん。これはセッコクの湯煎ゆせんと言う湯なんですよ。効能は身体の微力再生、身体の傷やあざを癒す事が……」


「ぃゃぁぅ……」


「え?……何ですか?」


 ? 不満そうな顔で僕を見つめて、何かを訴えかけている?


「何ですか? 元聖女さん。何か僕、貴女を怒らせる様な事を言いましたか?」


「……ゃぉぃゅぉ………ぃゃぅ……ゃゅぃ……ュィ………」


 僕に何かを一生懸命伝えようとしている?


「えっと……私の名前ユイ……合っていますか?」


「……ぅゅ……!」


 力強いうなずき。成る程、この元聖女さんの名前は"ユイ"さん……さっきまで機嫌が何故か悪かったのも。


 僕がずっと元聖女さんとしか言わなかったからかな?


「そうなんですね。それでは、これからは元聖女さんではなく、ユイさんと及びしますね。ユイさん」


「……ぅぁ……ぁぅゅぇぉ……」


 ユイさんは苦しそうな声で、僕に何かを伝えた。口の動かし方からして、ありがとうだろうか?


「はい……それでは、セッコクの湯煎ゆせん内での、ユイさんを治療を始めていきますね」


「………ぅゅ?」


 今するの?みたいな反応をされたけど。するに決まっている。


 そうそうに、ユイさんの身体中にできた化膿かのう内のうみ取りやあざいやしを行わなければ。ユイさんの身体はどんどん弱まっていく。


「先ずは、この"ハリスの癒し針"を使って、ユイさんの身体の中にある毒素を抜いていきますね」


 僕はテーブルに置いてあった道具箱から細い長針を取り出し。ユイさんに見せてあげた。


「………ぃゃぁぁ……いゃぁぅ…ぁぅ!…」


 なんだか。イヤイヤ言っているけど。僕が彼女を絶対に治すと決めたからには。嫌がろうと治療は絶対に受けてもらう。


「あ! 心配しなくても、針を刺しても気持ちだけですから安心して下さい。それにセッコクの湯煎ゆせん内で傷を負っても直ぐに治りますからね」


 ユイさんが怖がらない様に笑顔で、今から行う治療を説明して……プスリッ!


「…………ぃぁぃぁ…………ゥュ……」


 ユイさんの腹部にあった化膿かのうした部分にハリスの癒し針を軽く刺した。


 すると。ユイさんの化膿部分に刺した針先から、毒素と思われる膿が針の上部へと移動し泡状となって空気中へとただよい始めた。


「……ゅぁぁ」


 膿が抜き出された化膿部分はれが引き。刺された箇所かしょと共に傷が治っていく。


 それがあまりにも気持ち良かったのか。ユイさんはとろけた顔をしながら目をトロンとし始めた。


「可哀想に。こんなに濃いうみが身体中にあるなんて、どれだけ悪辣あくらつな環境にさらされていたんですか。貴女は……」


「……ゅぃ……ぃぃ……」


「気持ち良いですか? それは良かった」


「……ぁぃ」


「それじゃあ。ユイさんの身体の悪い箇所を、どんどん刺して治していきますね」


「……ぅゅ」


 承諾してくれたので、どんどん刺して治していく。


「……ぅ……ぃぃ……ぅぁ……ゃぅ……ぃぃ……ゃぉ……ぉぉぅ……」


 刺した時は多少はチクッとして刺激される様で、一瞬だけ嫌そうな顔はする時はあれど。次の瞬間には蕩けた表情へと早変わりする。


 そんな感覚が交互に来るのだから幸せな気分になったりするのかもしれない。


「この、セッコクの湯煎ゆせんの効能は凄いんですよ。ユイさん」


「…………ぃぅ」


 ……幸せそうな顔で何か考えている様なので、淡々と説明していこうかな。


「セッコクの湯煎ゆせんかる事によって、細胞の微再生が起こります。それと古傷をいやし、欠損した体は再生し手足も時間はかかりますが生えてきます。それとこれは僕独自で開発した秘薬を混ぜた配合なんですが………聞いてますか? ユイさん」


「………ぅぁ」


「……ここからの解説が楽しいんですけどね。リラックスしてるみたいですし。しばらくセッコクの湯煎ゆせんに使ってましょうか」


「ぁぃ……」


 ハリスの癒し針を使って、ユイさんの身体をむしばんでいた化膿かのうあざ摘出てきしゅつほとんど終わった。


 次は欠損した彼女の手足を始めとした身体の再生行程へと移る事に決めた。




ミラの元聖女。ユイさんの身体の《《欠損》》は尋常じゃない程に酷かった。


 両胸はえぐり切られた様に切断されていたし。

 鼻、口、両耳も太い針で指した様な、不自然な無数の穴が空いていた。

 体内も毒を飲まされていたのか五臓六腑ごぞうろっぷ全てが弱まっている。


 こんな娘を奴隷市場で売ったなんて、どんな最低な人物なんだろうか?


「……ぃぅ」


「良かった。セッコクの湯煎ゆせんに身体が馴染んできたみたいですね」


「ぁぃ……」


 さっきは僕に裸を見られて恥ずかしかったのか、機嫌が悪くなっていたけど。身体が綺麗になって機嫌が良くしてくれた様だね。


「それでは、ビーワの果汁を飲みましょうか。口と喉の傷を少しずつ治せます。最初は少量で飲みましょうね。ユイさん」


「………ぅ、ぅゅぅ?!」


 いやー良かった。作ったは良いけど使う相手が、なかなか現れなかったから在庫ばかり溜まる一方だったから、全力で、ユイさんに使ってあげて治してあげよう。


「そう最初は数滴すうてき口にふくめるだけで良いですよ。ゆっくり……はい。そんな感じです」


「………ぁぃ………ぉぃちぃ!」


「美味しですか? それは良かったですね。フフフ」


 栄養失調におちいっている為か、口を使っての飲食はまだまだ難しく。ビーワの果汁を飲むのも一苦労だった。


「それでは髪も洗いましょうか。ヒッポファンの実の果汁から作ったシャンプーなんですよ。いたんだ髪に栄養をもたらしてくれるんですよ」


「………ぁぃ」


 ユイさんは、湯煎ゆせんに初めて浸かった時よりもだいぶリラックスしてくれている為、最初の頃よりも治療をスムーズに行える。


 ヒッポファンの実は、豊富な栄養が含まれた果実。それを僕独自に研究しシャンプーに加工した。


 これも生前に製薬関係仕事で少しだけ働いていた知識の賜物たまもの……今は生前の事を思い出している場合じゃないか。


 ユイさんの髪のだけをらし、少量ずつシャンプーを付けて泡立てあげていく。


「……ぁゎ」


「そうですね。泡立てますね……これも最後は。さっき、ユイさんから抽出した傷と共に。僕が集めてておきますね」


「……?」


 知り合いの"呪詛師"が近くに住んでいて。他者から受けた痛みを保存する様な技術を持っていれば。


 その痛みを保存して呪詛師に鑑定してもらいその痛みで"呪い返し"が行える。


 その後は、オルフェリアの世界の衛生協会に問い合わせて。突然、ユイさんの様な数多あまたの奇病にかかった人物を特定する事が可能。


 まぁ、この事は治療中のユイさんにはまだまだ話す事ではないけど……


「……ぁゎ……ぁゎ……ぅぅぅ〜♪」


 ユイさんが小さな声で歌っている? そうか! ビーワの果汁を飲んだ事で、口と喉の傷が少しだけふさがったのか。


「ユイさん」


「……ぁぃ?」


「これからは、この身体の再生行程をこれから何度も何度も繰り返していきます。そうする事によって、ユイさん失ってしまった身体の"欠損"も少しずつですが必ず再生していきます。小さな穴がけられてしまったくちびるの様に」


「……フヒィぴぅ?……!……こぇぁ」


「少しだけ。声が大きくなりましたね。それに口調と少しなめらかに。良かったですね」


「……ぅゅ……ぁりがぅぉ……はるぁしょぅ」


「いいえ。大丈夫ですよ。僕にもかなりのメリットを頂いていますからね。僕もユイさんを治せて嬉しいです」


 うん。本当に貴重な薬草を使わせてもらってありがたい。


 ……ユイさんの髪洗いが終わった後、ユイさんの身体をメルブァ布生地で優しくいてあげる。


「……!……はるぁしょぅ……ぉてぇとぁしぃ……」


 ユイさんが身体をバタバタさせながら、僕に何か必死に伝えようとしている。嬉しいそうにしているし。気がついたかな?


「あ! 気づきましたか? 両手両足の感覚出てきたでしょう? 凄いでしょう?」


「……ぅん……ぅぁ!」


「この行程をセッコクの湯煎ゆせん法と言うんですよ。何度も何度も繰り返して、身体を生やしていく……まぁ、嘘と欺瞞ぎまん蔓延はびこるこの世界では一切信じられていない再生技法です。これ世界の大半の人達は、この真実を知らずに人生を終えます」


「……はるぁしょぅ?」


 怖い者を見る様に見られてる。いけない、いけない。ついつい怖い顔になってしまっていた。


「あ! すみません。変な顔になってましたね。アイルのワンピースですよ。これを着ましょうか。ユイさん」


「……きれぃ……」


「そうですね。1000着以上あるので、ユイさんに全てあげますね」


「……せぇん?!」


 僕はユイさんにアイルのワンピースを着せてあげた。その時のユイさんは顔は少し驚いていた様に見えた。



「……ぁぁぁぃぃゃぃぁああ!!」


「落ち着いて下さい。ユイさん! ここは《《もう》》安全な場所です! 安全な場所だから落ち着いて!」


「……ぃぁぅぅぅ……ぅぇぇぇえ……はるぁしょぅ……はるぁしょぅ……ぅぇぇ」


「はい。僕はここに居ますよ。だから落ち着きましょう。落ち着いて」


「……ぅぅ……ぁぃ……」


 真夜中。突然、ユイさんがベッドの上で暴れ始めた。


 彼女に何かしらの異変が起こると思い、僕は直ぐ隣の部屋で待機していた。


 そして、その懸念は当たってしまった。記憶のフラッシュバック。


 ユイさんはあれだけ身体中に傷をっている。いや、わされ傷つけられた記憶が残っている。


 昨日までいつ死ぬかも分からない夜を過ごして来たのであれば、夜中に突然、発作的に半狂乱になっても可笑しくはない。


「ユイさん。これからは"リアのオルゴール"の音色ねいろを聴いて眠りましょうか。それと"リムアのお香"ときますね。そうすれば、少しはリラックスして眠れる様になりますからね」


「……りぁくぅ?」


「ええ。しばらく待ってて下さい。準備します」


「……ぁぃ……ふぇ……ぅぅぅ」


 身体中を震わせている……先程まで怖い夢を見てもよおしてしまったのだろう。ベッドのシーツがれている。可哀想に。


「寝巻きとシーツも新しい物に変えますね。ユイさんをあっちのソファーに移動させてますが。良いですか?」


「……ぁぃ……ごめんぁぃ……はるぁしょぅ」


「いいえ。気にしないで良いんですよ。ユイさんは何も悪くないんですから」


 僕はユイさんの頭を優しくで、彼女の身体を持ち上げてあげた。まだ手足が再生するのも時間がかかる為、仕方ない。


 その後は彼女に着せていたワンピースを脱がして、綺麗な布地で身体を優しく拭いてあげる。


「……はしゅかしぃ///……はるぁしょぅぅにふきゅぅ///」


 ユイさんが顔を朱色に染めて身体をモジモジしている。何かの体操かな?


「ハツカネズミですか? こっちの世界にもいるんですか? ハツカネズミ」


「ぅぅぅ///……ちきゃぅ」


 ……なんでかユイさんに怒られた。


 ユイさんの身体をき終えた後は、濡れシーツを交換し。"リムアのお香"を炊く。


「ユイさん。これは呪詛魔道具の1つなんですよ」


「ちゅちぉ?……はるぁしょぅ!……やらぁ!」


 なんか。ユイさんに警戒された。勘違いさせてしまったかもしれない。


「いえ。別にユイさんは呪いませんの」


「……ふぃ?」


「この呪詛魔道具はユイさんに身体にかかっている性病、性魔病、精神錯乱、精神汚染、トラウマになっている記憶等を取り除く為の呪詛魔道具です」


「……ほりぉく?」


「はい。その後はかけた相手にそのまま全部返しますけど。僕の友人に頼んで……ユイさんに刻まれてしまった嫌な記憶の方はカウンセリングしないといけませんが。ユイさんに的割まとわり付いている呪いはがせます」


「……ぅぉぃね!」


「えぇ、それと。こちらの説明もしますね。"リアのオルゴール"これをかなでている間は悪夢を余り見る事がなくなります」


「……それぇ……れぇんしぇきゅぅぉ……」


「……伝説?……すみません。ユイさんがちょっと何を言っているのか分かりません。ウンチですか?」


「……ちぁぅ!……ゎぁぷぁぁ!」


「あぁ! いきなり飛び出したら危ないですよ。両腕はまだ再生してないんですから!」


 ユイさんが顔をトマトケチャップの様に赤くして、僕へと向かって来ようとソファーから飛び出そうした。


 だけど彼女には、《《今は》》両手両足が無い為、床へと落ちそうになる。そして、僕は彼女が落ちそうになる前に身体をキャッチした。


「………ぅぁ……ぅぅぅ……ごしゃぁぃ……はるぁしょぅ」


 なんだかユイさんが泣きそうになっている。トイレでも行きたいのかな?


「プッ! アハハ!! ユイさんって案外おっちょこちょいなんですね。それに……」


 そして、僕はユイさんの猪突猛進な行動が面白くて笑ってしまった。


「……ェゥ?」


「ユイさんって、最初は大人しい女の子かと思ったら、結構なお転婆てんばさんだったんですね。おっちょこちょいだし……アハハ!!」


 僕が、ユイさんを見て大笑いすると。


「……ぅぅ……ぅ……ぅきゃぁぁ!!」


「は? ユイさん。何で暴れるんですか? あ、頭をこすり付けないで下さいよ。アハハ!!」


 ユイさんに頭からダイレクトアタックされた。


 生前もクラッシックは良く聴いていた。


 正しい音でかなでられる曲というのは気持ちの良いもので、聴いた人はリラックスする効果がある。


 "リアのオルゴール"もその効果があり。音色を聴いた者は嫌な思い出を思い出しにくくなり深く眠れる。


 ユイさんをベッドに寝かしつけて、"リアのオルゴール"を作動させた。


 そして、数分後にはユイさんは眠そうに目をこすり始めた。


「………ねゅぃ……はるぁしょぅ」


「……さっきよりは上手く眠れそうですね」


「……ぅゅ」


「それじゃあ、僕は自室に戻っ……ユイさん?」


 ユイさんがジーッと僕を見つめている。


「……ょるぁ……こぁぃょ……ぃっしょぃてぇほしぃ」


 夜は怖い一緒にいてほしい。彼女はおびえる顔でそう告げた。


「……そうですね。夜に1人は怖いですもんね。分かりました。ユイさんが1人で夜寝れる様になるまで一緒に居てあげますよ」


「……ゃっぁ……ぁりゅぁと……はるぁしょぅ……」


「はい。お休みなさい。ユイさん」



あれから三週間が経った。


 ユイさんの身体はみるみるうちに回復し。切断されていた両手両足や。胸部と下腹部の火傷も治り。失われた身体の部分も復元した。


 そして、驚いた事に彼女のスタイルは思ったよりもかなり大人びていて、完全に復元した時に驚いた。


「……ハルカさん。私の身体あるよ。ちゃんと……ハルカさんが治してくれたから。喋れる……手足もあるよ」

「えぇ……良かった……三週間の治療、良く頑張りましたね。ユイさん」

「……ハルカさん……ありがとう!」

「……はい。ぅぇん……うえぇんん!! ありがとう!!」

 

 ユイさんは、僕に抱き付き。喜びながら大粒の涙を流した。


 その後の彼女の生活は、再生した体のリハビリだった。勿論、僕が最後まで付き添い……そして。


 

《3ヶ月後》


「ハルカさ~ん! 新薬の"リリアの目薬"届いたよ〜!」

「ニャア。主〜! ユイは今日も元気いっぱいだよ」

「何を言ってるのよ! モカ。貴女が元気無さすぎなのよ」


「ハハハ。ありがとうございます。モカ、ユイさん……本当に今日も元気ですね。ユイさんは」

「うん! これも全部、ハルカさんのお陰で……それと私のはハルカさんが…」

「? 何か言いましたか? ユイさん」

「う、ううん。なんでもない! 私はハルカさんが大切って言おうとしたの」

「僕が大切ですか。ありがとうございます。僕もユイさんの事が大切ですよ」

「ハ、ハルカさん。そんな!私が大切だなんて!嬉しい」


 今日も彼女は元気に働いている。僕の店で明るく健康的な体でたくましい。

 

 


欠損少女シリーズ―――捨てられた聖女ユイ編

《end》


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