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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
ユーレイと魔法と黒い紐
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74話 洞窟内は?

「リーナ殿?」


 オルガトと話していると、フォガスさんが戸惑った表情で私の名前を呼んだ。


 あっ、私がイラっとしたのがバレたのかも。

 

「ごめんなさい。えっと、洞窟の中に魔石があるみたいです。それを、一緒に見に行こうと言われて断ったら……」


 やばい。オルガトが「フォガスたちに取られたらどうするんだ」と言ったことを、うっかり口にしそうになった。はぁ、イライラした時は、つい口が軽くなってしまうな。


「洞窟に魔石があるんですか?」


『そう、しかも最高ランク以上の魔石がたくさん!』


 フォガスさんのそばで大興奮で話すオルガト。残念ながら、その声は私にしか聞こえていないけど。

 

「最高ランク以上の魔石だそうです」


 私がオルガトに視線を向けると、フォガスさんだけではなくキーフェさんもお兄ちゃんも私の視線を追う。


 やっぱり見えないとわかっていても、つい視線を向けてしまうものなんだね。

 

「最高ランクのさらに上……特級ランクですか?」


 キーフェさんがオルガトの方を見て話す。見えていないため、オルガトからはちょっとズレているけれど。


『特級ランク? 俺の時は最高ランクまでしかなかったけど、今は特級ランクがあるのか』


『リーナ、これは言わない方がいいかも』


 オルガトからユウに視線を向ける。


『精霊だったら、知ってそうな情報だろう?』


 そうかな?


「はい、たぶん?」


 ユウを信じて返事だけしておこうと思ったけど、ちょっと心配で疑問形になってしまった。


「それは、確かめた方がいいでしょう。ですが、崩落したばかりの洞窟内は危険だと思います」


 砂埃が落ち着いた洞窟へフォガスさんが視線を向ける。


『あっ、そうか。リーナたちは、小さな石がぶつかっても怪我をするんだったな。魔石の事で頭がいっぱいで、その事を忘れていたな』


 オルガトの言葉にユウが申し訳なさそうな表情で私を見る。


『俺も、あの光景に興奮してリーナが生きた存在だって事を忘れてたよ』


 思い出してくれて良かった。


『リーナたちはここで待ってて。洞窟内を見てくるから』


 オルガトはそう言うと、すぐに洞窟に向かって飛んでいく。


『俺は見てもわからないから……あっ、チャルト子爵たちがどうなったか見て来るよ。天井が崩れていたらぐしゃって潰れているのかな?』


 ユウはちょっと恐ろしい事を楽しげに言いながら洞窟へと飛んでいった。


 あれ?

 

 ユウの様子に首を傾げる。ユウにとって、チャルト子爵の命はどうでもいいものみたいね。さっきは、この世界の命の軽さに戸惑っていたのに。


「変なの」


「リーナ、精霊たちはなんて言ったの?」


 お兄ちゃんの問いに、洞窟へ視線を向ける。


「洞窟内の様子とチャルト子爵たちの様子を見に行ってくれたの。少しここで待っててって」


「そっか。それなら、あそこで座って待っていようか」


 お兄ちゃんを見ると、彼は座りやすそうな倒れた大木を指していた。


「そうだね。フォガスさんとキーフェさんも、それでいいですか?」


 フォガスさんとキーフェさんを見ると、二人とも微笑んで頷いてくれた。


 倒れた大木に近づくと思った以上に大きくて、少し困ってしまう。


 座れない……。


「リーナ殿、失礼します」


 フォガスさんの声が聞こえると体がフワッと浮き、気づけば大木に腰かけていた。


「ありがとうございます」


 フォガスさんを見ると、嬉しそうに微笑まれた。リーナは五歳だけど、中身は三一歳なので、ものすごく恥ずかしい気持ちになる。


『リーナ、ダメだ。洞窟内はまだ崩れそうになっているところがあるから入れない』


「洞窟内はまだ危険みたいです」


 フォガスさんにオルガトの言葉を伝えると、彼は頷いた。


「わかりました。では、アルテト司教に連絡を取り、専門家を派遣してもらいましょう」


 アルテト司教?


「迷惑になりませんか?」


 お兄ちゃんが少し心配そうにフォガスさんを見る。


「大丈夫です。特級ランクの魔石が見つかったと言えば、アルテト司教が信頼している専門家をよこしてくれますよ」


 フォガスさんの話を聞きながら首を傾げる。


 ほんの少し、フォガスさんの表情に違和感を覚える。


 いつものように、優しく微笑んでいるのにどうしてだろう?


『フォガスの奴、怒ってるのか?』


「えっ?」


 いつの間にか洞窟から戻ってきていたユウが、私の傍からフォガスさんを見つめる。


「怒ってる?」


 ユウを見て小声で呟くと、ユウが頷く。


『俺には、そう見える』


 予定外の事が起こり過ぎて苛立っているのかな? しかも、魔石についてもお願いする事になりそうだし。


「あの、フォガスさん。いろいろとごめんなさい」


 私がランサ森に来たいと言わなければ、関わる事もなかったんだよね。


「えっ?」


 フォガスさんは、私の謝罪に驚いた声を上げる。


「フォガス、顔が強張っていたから不機嫌そうに見えたんだよ」


 キーフェさんの説明を聞いたフォガスさんは、自分の手で顔を覆う。


「失礼しました。チャルト子爵の件も魔石も見つけたのが我々で良かったと思っています。どちらも重要な案件ですので。ただ、アルテト司教が信頼している専門家の一人を思い出してしまったために顔が強張ってしまいました」


 アルテト司教が信頼している専門家に問題があるの?


「かなり変わった……と言うか、仕事熱心な方でして……」


 フォガスさんの説明を聞いたキーフェさんが笑い出す。


「プッ、ハハハハハ。失礼。でも、そんな嫌そうな表情で『仕事熱心』って言うとは思わなくて……」


「変わった人なんですか?」


 フォガスさんとキーフェさんの様子を見ていたお兄ちゃんが二人に聞く。


「一つの事に集中すると、周りが見えなくなるタイプです。そのせいで、周りがどれだけ迷惑を被っても気にしませんからね」


 あ~、それはちょっと面倒くさい性格の人だね。


 フォガスさんが少し嫌そうな表情で言うので、お兄ちゃんが少し困った表情を浮かべた。


「すみません。もし、問題の彼が来たら、なるべくお二人とは会わせないようにします。本当に、面倒な方なので」


 フォガスさんの様子から、かなり迷惑を被ったのかもしれないな。それでなければ、ここまで拒否はしないだろうから。


『あっ、リーナ』


 ユウの呼びかけに視線を向ける。


『チャルト子爵だけど、左足は潰れていたけど、まだ生きていたよ。他にも数名は生き延びたみたいだった』


 これは、フォガスさんたちに伝えた方がいいよね。

 

「フォガスさん、キーフェさん」


「「はい」」


 私の呼びかけに、二人の視線が私に向く。


「チャルト子爵と数名の方は生きているようです」


 私の説明に、二人は少し笑って頷く。


「伝えて下さり、ありがとうございます。チャルト子爵に死なれていたら情報が聞き出せなかったので、生きていてくれて良かったです。」


 キーフェさんはそう言うと、フォガスさんと少し離れた場所に行き話し合いを始めた。


『どっちが洞窟へ行こうか話しているみたいだな。それと、残りの奴らは別に助ける必要はないとか言ってる』


 ユウの言葉にオルガトが頷く。


 フォガスさんたちは話を聞かれないように離れたのに、ユウたちがいたら筒抜けになってしまうな。


「洞窟内はかなり危険なの?」


『そうだな……右側の壁はいつ崩れてもおかしくないと思う。でも、左は既に崩れてしまっているから、まだ安全かもしれない』


 私の質問にオルガトが考えながら話す。


『オルガトが誘導すればいいんじゃないか?』


『えっ?』


 ユウの提案にオルガトが首を傾げる。


『オルガトが洞窟内に入って危険な場所をリーナに伝える。リーナは聞いた内容を、洞窟に入ったフォガスかキーフェに伝える。どうだ? あっでも、声の振動で洞窟が崩れたりするならダメだけど』


『声の振動くらいでは崩れないよ。見てきた感じ、一番弱い部分は既に崩れているから』


「リーナ殿、アグス殿。洞窟から、怪我人を運び出して来ます。少し、ここで待っていて下さい」


 話し合いが終わったのか、フォガスさんが私たちのそばへ来る。


「あの、洞窟内の危険な場所を知らせてもらって、私がフォガスさんに伝えます」


 私の言葉にフォガスさんは、驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます。お願いできますか?」


「はい」


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