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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
ユーレイと魔法と黒い紐
56/87

54話 バレバレですね

「フォガスさん」


 もちろんユーレイのことは言えないし、精霊が見えるとも言えない。

 もしウソを見破る魔法があったら、すぐにバレてしまうからね。

 だから私は、「何も見ていない」と言い切ることにしよう。


「はい」


 私を心配そうに見る彼にウソをつくのは心苦しいけど、平穏に生きていくためには必要なウソもある。


『リーナ、フォガスを巻き込んだらいいんじゃないか?』


 んっ?


「えっと、私は大丈夫です。死んだりしませんから」


 ユウの言葉が気になって、思っていたこととは全然違うことを口走ってしまった。

 

 チラッとユウを見る。


『どうせリーナの行動で、もう何かが見えている事はバレているんだから、彼を巻き込んでランサ森へ一緒に行ってもらえばいいんじゃないか』


『それはいいね』


 ユウの提案に、嬉しそうな表情で頷くオルガト。


『リーナが見えているものが、精霊なのかユーレイなのか、フォガスにはわからない。だから、このまま適当に誤魔化してしまえばいい。そうしたら、フォガスが勝手に「精霊の指示なんだろうな」って、想像してくれるよ』


 う~ん、たしかにユウの言う通りになりそうかも。


『そのうえで「ランサ森にどうしても行く用事がある」と言いながら俺たちを見たら、フォガスはきっと精霊と関係があるんだろうと考えるだろうから、それを利用して一緒に行ってもらおう』


 たぶん、私たちにとって、とてもいい案なんだと思う。

 でも、本気で心配してくれているフォガスさんを利用するなんて、本当にいいのかな?


「リーナ殿?」


 黙り込んだ私を心配そうに見るフォガスさん。

 お兄ちゃんも、私の手をギュッと握った。


 私がランサ森へ行くには、ウソをついて誰かを巻き込むしか方法がないんだよね。

 だったら、フォガスさんがいい。

 彼は信用できるから。


 フォガスさん、ごめんなさい。


「えっと、見えているというか、その……」


 あれ? どう言えばいいの?

 精霊もユーレイとも言わず……んっ?


「わかりました。それ以上は言わなくていいです。だから、安心してください。大丈夫です」


 えっ、どうしてかフォガスさんは納得してくれたの?


「……ありがとうございます」


 下手に聞けないから、これでいいのかな?


「リーナ」


「お兄ちゃん?」


 お兄ちゃんを見ると、ポンと頭に彼の手が乗った。


「何も言わなくていいよ。リーナの行動を見ていればわかるから」


 もしかして私、そんなにわかりやすい行動をしてた?

 でも、気がつくとユウを見ていることが多いから、たぶんそうなんだろうな。


 無意識に視線を向けてしまうのは、抑えられないよね。

 特にユウは、私にとって安心できる存在になってしまっているから。


「一つ教えて下さい」


 フォガスさんを見ると、彼は少し考えたあと私を見た。


「リグス殿がランサ森について質問した原因は、リーナさんがランサ森へ行こうとしているからですか?」


 フォガスさんの質問に、お兄ちゃんが私を真剣な表情で見る。


「はい」


 なんだ、それもバレているのか。


「それは精霊が……いえ、なんでもありません」


 フォガスさんは言葉を途中で切ると、微笑んで私を見た。


「俺たちがランサ森へ一緒に行きます」


『よっしゃぁ!』


 フォガスさんの提案にオルガトが嬉しそうに声を上げる。


「いいんですか?」


 そう言ってくれるのは、とてもありがたいんだけど。

 んっ?

 フォガスさんは今、「俺たち」と言わなかった?


「はい。ただ、まだ教会の修繕が残っているので、それが終わってからになりますが。それでもかまいませんか?」


『え~、早く行こうよ!』


『オルガト、うるさい。教会の修繕が最優先に決まっているだろう?』


 オルガトが不満をこぼすと、ユウが呆れた表情で彼を見る。


『だって、早く行かないと魔石がなくなるかもしれないんだ!』


『なくなっていたら、それはそれでしょうがない。諦めろ!』


 ユウの言葉に、「い~や~だ~」と叫びながら空中を飛び回るオルガト。

 それをチラッと見てから、フォガスさんを見る。


「はい。ありがとうございます。あの俺たちとは?」


 私の質問にフォガスさんが微笑む。


「キーフェたちです」


 あっ、やっぱり彼らか。

 つまり、教会の護衛騎士たちに守られながら、ランサ森へ行くことになるのか。

 すごく安心だけど、ユウたちのこともあるし、きっと緊張もしちゃうだろうな。


 そういえば、護衛騎士は三人だと聞いたけど、最後の一人にまだ会った事がない。

 どうしてだろう?


「リーナ、俺も一緒に行っていい?」


 お兄ちゃんが私を不安そうに見る。


「フォガスさん、ランサ森は危険なところですか?」


 お兄ちゃんが一緒なら私も安心だけど、危険な森だったら一緒には行けないよね。


「魔獣や魔物がいます。でも、それほど強くないと聞いています」


 それならお兄ちゃんと一緒に行っても大丈夫かな?


「お兄ちゃん」


 お兄ちゃんを見る。


「どうした?」


「一緒に行ってくれる?」


「もちろんだよ」


 私の問いに、少し驚いた表情を見せたお兄ちゃんは、嬉しそうに笑って答えた。


「ありがとう、お兄ちゃん」


「リーナ殿、アグス殿、今日は話を聞いて下さりありがとうございました」


 フォガスさんが私とお兄ちゃんに軽く頭を下げた。


「いえ、話が出来て良かったです」


 いろいろ誤魔化してしまって申し訳ないけど、一緒にランサ森へ行くって言ってくれてありがとう。

 すごく助かります。


「少し暗くなりましたね。家まで送ります」


 家は、屋根が見えるくらいすぐ近くだけどね。


「ありがとうございます」


 お兄ちゃんはフォガスさんにお礼を言ったあと、私の手をそっと引っ張った。


「帰ろう」


「うん」


 岩の上から立ち上がり、三人で家へ向かった。


「リーナ殿」


「はい」


「ランサ森へ行く事、しっかりリグス殿と話して下さいね」


「はい、わかりました」


 お父さんはランサ森について、フォガスさんに相談したんだよね。

 もしかして、お父さんも一緒に行く事になるのかな?


「家の前に馬車が停まっているけど、誰だろう?」


 お兄ちゃんの視線の先には、少し豪華な馬車が停まっている。


「誰だろうね?」


 ランカ村でよく見かける馬車とは違い、どこか気品を感じる馬車だった。


 私は、貴族が使いそうなその馬車を見て、少し嫌な気分になる。


『俺が見てくる』


『俺も行くよ』


 ユウとオルガトが馬車に向かって飛んでいく。

 それを見送っていると、お兄ちゃんがそっと私を抱き寄せた。


「お兄ちゃん?」


 お兄ちゃんを見上げると、険しい表情で馬車を見ていた。


「あれ、貴族が使う馬車だと思う」


「そうですね。馬車の扉のところに紋章があります。あれはアーオス伯爵家ですね」


 フォガスさんはお兄ちゃんの言葉に頷くと、馬車からわかった事を教えてくれた。


「アーオス伯爵家って、ランサ村の領主さまじゃなかった?」


 私とお兄ちゃんを狙ったバーガル子爵が、ランサ村の領主だと思っていたら違ったんだよね。

 バーガル子爵はランサ村の管理を、アーオス伯爵家から任されていただけだった。

 アルテト司教にその事を聞いて、お兄ちゃんとビックリした事を覚えている。


『リーナ! 首に紐! 前に見たのと同じような紐がぐるぐる巻きだ!』


 ユウがすごい勢いで私のところへ飛んで来るので、思わず体が引けてしまう。


「どうしたの? 貴族が怖い?」


 お兄ちゃんは、私が体を下げたので貴族を怖がったと思ったみたい。


「大丈夫。ちょっと、すごい貴族が来ているから驚いただけ」


 慌てて誤魔化すけど、首に紐って何?

 首に紐がぐるぐる?

 あっ!

 見張り役たちの首に紐が巻き付いていた奴だ。


 えっ、あれと同じ?

 ……あの馬車に乗っている人に、すごく会いたくないんだけど。


『金~、金~。大金だ~』


 オルガトが興奮した様子で、私たちのところに飛んで来る。

 そして、「金」と言いながら上空をぐるぐる飛び回った。


『オルガト、鬱陶しい』


 本当にね。


「私を殺したユーレイは今日もやかましい」を読んで頂きありがとうございます。

申し訳ありませんが、次の更新は10月8日(水)になります。

これからもリーナとユウをよろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

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