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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
ユーレイと魔法と黒い紐
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52話 断りたいけど、ムリだよね

「何か、俺たちに話でもあるんですか?」


 お兄ちゃんが、フォガスさんを不審げに見る。

 慌てた様子を見せたフォガスさんは、首を横に振った。


「話というか、えっと……」


 フォガスさんは困った表情を浮かべ、私とお兄ちゃんを見た。


「アグス殿とリーナ殿は、ランサ森に行かれる予定があるのですか?」


「えっ?」


 お兄ちゃんが驚いた声を上げる隣で、私は「どうしてそれを知っているの?」と目を見張った。


「違いましたか?」


 私とお兄ちゃんの様子を見たフォガスさんが首を傾げる。


「どうしてそんな事を思ったのですか?」


 お兄ちゃんがそう尋ねると、フォガスさんは少し考えてから口を開いた。


「リグス殿から聞かれたのです」


 お父さんが何を?


「ランサ森には、危険な魔物や魔獣がいるかどうか」


 あぁ、やっぱり昨日のオルガトとの会話を聞かれたんだ。あれ? 違うか。オルガトの声はお父さんには聞こえていないから、私の独り言が聞こえたんだ。


 それにしてもお父さん、フォガスさんにランサ森について聞いたのか。

 どうしよう。


『リグス殿って誰だ?』


『アグスとリーナのパパ。朝、会っただろう? 名前を知らなかったのか?』


『あぁ、だってみんな、お父さんって呼んでいるじゃないか』


『そうだったな』


 フォガスさんの言葉に少し緊張していると、頭上から聞こえたオルガトとユウの会話に力が抜けた。


「どうしてお父さんは、そんな事を聞いたんだろう? リーナは、何か知ってる?」


 私を見たお兄ちゃんは、少し表情を変えた。


「リーナ? もしかしてリーナが、ランサ森に行こうとしているの?」


 どうしてバレちゃったの?

 えっ、もしかして表情に出てた?


「えっと……地図を見て興味が湧いて、ランサ森がどんな場所なのかなって」


 あ~、かなりムリがある説明だったみたい。

 だって、カリアスたちまで怪しそうに私を見てる。


「そうなんだ。地図か」


 お兄ちゃんがじっと私を見つめる。


「リーナ」


「うん。どうしたの、お兄ちゃん」


 どうしてだろう?

 お兄ちゃんは笑顔なのに、ちょっと怖い。


『普段穏やかな者が切れると怖いよな』


 ユウがそう呟くと、そっと私から離れた。


 あっ、逃げた!


「まさか、一人でランサ森に行こうとしていないよね?」


 お兄ちゃんの質問に、首を横に振る。


「そんな事は全く思っていないよ。本当に」


 慌てて否定すると、お兄ちゃんが私の肩に手を置く。


「本当に興味? それとも」


 お兄ちゃんはそう言いながら、スッと空中に視線を向けた。


 あ~、お兄ちゃんはユーレイが関係していると気づいて、違うな。

 精霊が関係していると思っているんだ。


「やっぱり」


 小さく聞こえたフォガスさんの声。

 

 何が「やっぱり」なんだろう。

 ものすごくイヤな予感がする。

 

「リーナ殿」


 フォガスさんを見ると、真剣な表情で私を見ている彼がいた。


「はい」


 何?

 フォガスさんは何を言うつもりなの?


「ゆっくりお話ししたいのですが、少しお時間をいただけませんか?」


 話?

 ランサ森の事かな、もしかしたらユーレイ……ではなく精霊の事?

 

 フォガスさんの表情からして、私にとってあまりいい話じゃなさそう。

 だから、本当はすごく断りたいけど、ムリだろうな。

 ……ムリ?


 フォガスさんが、ジッと私を見つめる。


 ムリだね。


「わかりました。えっと、今からでいいですか?」


「はい、ありがとうございます」


 いったい、どんな話だろう?

 

 ドキドキしていると、お兄ちゃんが私の手をギュッと握った。


「俺も一緒でいいですか?」


 お兄ちゃんが睨みつけるようにフォガスさんに聞く。

 

「もちろんです。リグス殿やカーナ殿が一緒でもかまいません」


 少し怖い雰囲気のお兄ちゃんの手を引っ張る。


「んっ? どうしたの、リーナ?」


 あれ? 私を見るお兄ちゃんはいつも通りだ。


「えっと、私は一人でも大丈夫だよ」


 フォガスさんの話の内容によっては、一人がいい。


「ダメだよ。リーナを一人には出来ない」


 やっぱりダメかぁ。


「それなら、お兄ちゃんと二人で聞く。いい?」


 お父さんやお母さんは何となく巻き込みたくない気持ちが強いんだよね。

 私が、彼らの大切な娘を奪ってしまった気持ちがあるのかも。

 もちろん、お兄ちゃんからも妹を奪った気持ちはあるんだけど、一緒にいてくれる時間が長かったからなのか甘えてしまう。


「もちろん」


 嬉しそうに笑うお兄ちゃんに、私も微笑む。


「どこで話をしますか?」


 お兄ちゃんの質問にフォガスさんは考え込む。


「アグス殿とリーナ殿の家の近くにある広場ではどうですか?」


 フォガスさんが言った場所は、帰る途中にある。


「そこでいいです。みんな、帰ろうか」


 お兄ちゃんが承諾すると、フォガスさんがホッとした表情を見せた。

 そんな私たちの様子を見ていたカリアスが、心配そうにお兄ちゃんに声を掛けた。


「大丈夫なのか?」


「うん、大丈夫。フォガスさんは信用出来る人だから」


 お兄ちゃんはカリアスを見て笑った。


「さっきは睨んでいたのに?」


 タグアスが、お兄ちゃんを見て首を傾げる。


「それは、リーナと二人だけで話そうとしているのかと思ったからだよ」


 精霊の話かもしれないし、私は二人きりでもよかったんだけどね。


 みんなで家に帰る途中、フォガスさんから教会の様子を聞く。

 かなり修繕も進んで、あとは庭を整えるだけになっているみたい。

 そして祈りの部屋にある3枚目のステンドグラスも、あと二日で直るらしい。


 次に教会へ行った時は、緑のステンドグラスが見られるんだね。

 楽しみだな。


 話をする広場に着くと、カリアスたちは少し心配そうな表情を見せながら帰っていった。

 二人を見送ると広場に入り、座れる場所を探す。


「岩があるから、そこに座ろう」


 誰かが座るために置いたのか、広場の隅にはちょうどいい大きさの岩がいくつか並んでいた。

 それにお兄ちゃんと並んで座ると、その前にフォガスさんが立った。


「座らないんですか?」


「話をする時は、お互いの顔を見て話したいので大丈夫です」


 フォガスさんは、お兄ちゃんの質問に答えると、少し緊張した面持ちで私を見た。


「リーナ殿、単刀直入に聞かせてもらいます。あなたは精霊が見えていますね」


『うわぁ。本当に直球で聞いてきたな』


 ユウがビックリした様子で、フォガスさんの周りを飛び回る。


 やっぱり、精霊についてだった。イヤな予感って、当たるもんだね。


「…………」


 教会関係者にウソをつくのは怖いので黙っていると、お兄ちゃんが私を心配そうに見た。


 どうしよう、このまま黙っているわけにはいかないし。

 

「わかりました」


 えっ? フォガスさんがなぜか納得したように頷いたので、ビックリしてしまった。

 

 私、まだ何も言っていないよね?


『今ので、何がわかったんだ?』


 ユウも不思議そうな表情で、フォガスさんを見つめた。


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