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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
ユーレイと魔法と黒い紐
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51話 適していない魂

「悪いが、もう一度調べてもよいか?」


 ショーじいの真剣な表情を見て、小さく頷く。


「うん」


 ショーじいの魔力がゆっくりと流れ込んでくると、さっきと同じように不快感に襲われた。それを我慢していると、またフッと不快感が消えた。


「やはり変じゃな」


「ショーじい、何が変なんだ?」


 お兄ちゃんが、心配そうに私を見ながらショーじいに聞いた。


「魔力はしっかりある。でも流れが切れる」


 魔力はしっかりあるんだ。でも、流れが切れるってどういうこと?


『なんか、嫌な言葉だな』


 ユウがショーじいの言葉に思わず顔をしかめる。


「それは、悪い事なのか?」


「ん~」


 お兄ちゃんの質問に、ショーじいが険しい表情で考え込む。そんな彼の様子を見て、お兄ちゃんと顔を見合わせた。


「大丈夫だよ」


 心配そうな表情でもしていたのか、お兄ちゃんが私の頭を優しく撫でる。


「どうしたんだ?」


 少し離れたところで魔法の練習をしていたカリアスとタグアスが、心配そうに私たちのそばにやって来る。


「リーナにちょっと……」


 お兄ちゃんが言葉を濁すと、カリアスたちが首をかしげる。


『もしかして、魔法通路が切れているのか?』


 オルガトのつぶやきを聞いたユウが、鋭い視線を彼に向ける。


『どういう事だ?』


『そのままの意味だ。魔力の流れる通路が切れているせいで、魔力が流れないんだ』


『だから、魔力が移動しないのか?』


 オルガトとユウをチラッと見る。


『通路が切れている場所は無理だな』


 まあ、そうだろうね。でも私、捉えた魔力を右手にも左手にも移動できなかった。それってつまり、両方の魔法通路が切れているってことだよね?


「リーナ」


「はい」


 真剣な表情で私を呼ぶショーじいに視線を向ける。


「魔力は心臓の近く、体の中心部分で作られると言われておる」


「はい」


「わしは、その中心部分に向かって魔力を流した」


 そうだったんだ。


「でも、あと少しで中心部分に辿り着けると思ったところで進めなくなった。違う方向から魔力を流してみても、結果は同じじゃった。全身を調べたわけではないが、リーナの魔法通路には異常があるかもしれん」


 あ~、つまり……。


「ショーじい、リーナは魔法を使えるようになるの?」


 お兄ちゃんの質問に、ショーじいが少し困った表情になった。


「難しいかもしれんな」


 いや……ムリじゃない? だって、魔力を作っている場所から魔力が移動できないんだよね? それって、どう考えても魔法は使えない状態だと思う。


「リーナ」


 お兄ちゃんの手が、私の右手を優しく包む。


 そうか私……魔法が使えないのか。少し楽しみにしていたんだけどなぁ。でも、まあそういうこともあるよね。うん、あるよ。


「リーナ、大丈夫?」


 お兄ちゃんが、少し泣きそうな表情で私を見る。


「大丈夫」


 どうして、お兄ちゃんが泣きそうなのよ。私は大丈夫なのに。


「そっか」


 お兄ちゃんの手が私の頭を撫でる。

 

 どうしてだろう。少し視界が滲んでいる。もともと魔法のない世界にいたんだから、魔法が使えなくても困ることはないのに。だから、大丈夫なのに。


『なぁ、もしかしたら……リーナではなくて、リンの魂だから魔法通路がないんじゃないか?』


『何を言っているんだ?』


 ユウの質問にオルガトが怪訝な顔をする。


 えっ、まさか?

 

『元々俺たちは魔法を使えない世界にいた。つまり、魂が魔法に適していないんじゃないか?』


 あ~、ありえそう。


 なぜかユウの考えが、ストンと腑に落ちた。


「リーナ、本当に大丈夫か?」


 タグアスが、私の左手をギュッと握って心配そうな表情をする。


「うん。大丈夫」


 まだ少し悲しいけど、しょうがない。だって、ユウの考え通りなら、どんなに頑張っても魔法は使えないからね。


『今のはどういう事だ? おいユウ、リーナ。魔法を使えない世界って? 何? 何?』


 あぁ、オルガトがやかましくなってしまった。


『うるさい。あとでな』


 適当にあしらうユウに、オルガトは彼の肩を掴むとずいっと顔を近づけた。


『うわ、顔が近い。なんだよ』


 上空で騒ぐ二人にため息が出る。


『あとで、しっかり聞くからな』


『わかった。わかったから離れろ! 近い!』


「今日はここまでにしようか」


 お兄ちゃんが私を心配そうに見ながら言う。


「お兄ちゃん、私は大丈夫。だからみんなはちゃんと練習して」


 お兄ちゃんはカリアスたちに目を向けてから、再び私に視線を戻す。


「今日は終わるよ。俺も、カリアスたちも集中できそうにないし」


 お兄ちゃんの言葉にカリアスたちが頷く。


「そう? じゃぁ、今日は早めに終わって、そうだ! お菓子でも買いに行く?」


 私が笑って言うと、お兄ちゃんたちがホッとした表情になった。

 

「いいな。行こう、行こう」


 タグアスがどこの店に行こうか言い始めると、ショーじいが家から数枚の小さな紙を持ってきた。


「お菓子を買いに行くなら、割引券をやろう」


 ショーじいがお兄ちゃんに四枚の割引券を渡す。


「あっ、団子屋『オドー』の割引券だ」


 割引券を見たカリアスが嬉しそうに笑う。


「お団子が好きなの?」


 私の質問にカリアスが頷く。


「大好きだ。甘いタレの掛かった団子は最高だ!」


「あぁ、あれは最高だ!」


 どうやらタグアスも好きみたい。


「「ショーじい、今日もありがとうございました」」


「「ショーじい、『オドー』の割引券をありがとう」」


 私とお兄ちゃんはいつもの挨拶をしたのに、カリアスたちがいつもと違った。そんな二人を、お兄ちゃんが呆れた表情で見る。


「あはははっ。そんなに好きなら、団子屋の割引券を貰ったら、またお前たちにやろう」


「「やったぁ」」


 喜ぶカリアスたちに苦笑いを浮かべたお兄ちゃんと私は、ショーじいにもう一度挨拶をして団子屋『オドー』に向かった。


 団子屋『オドー』はランカ村の中心部にある人気店の一つだ。店に入ると、多くの客でにぎわっていた。


 注文する団子をみんなで選びながら、順番が来るのを待つ。


「いらっしゃいませ、注文はお決まりですか?」


 順番が回ってくるとお兄ちゃんがショーじいに貰った割引券を見せる。


「この件を使いたいのですが、どの団子にも使えますか?」


「はい、大丈夫ですよ」


『うおっ、うまそう。俺が生きていた時は、こんな店はなかった! いいなぁ、俺も食いたい!』


 オルガトが、団子屋の天井辺りをくるくる飛びながら声を上げる。


『オルガト、うるさい。どうせ食べられないんだから叫ぶな!』


『ユウ、お前は食いたくならないのか?』


『食ってる奴を見て羨ましいとは感じるけど、最初の頃に比べると食べたいとは思わなくなったな』


『そうなんだ。俺は、食べたいという気持ちが湧くけどな。あっ、でも、そう思うようになったのは自我を取り戻してからかもしれない』


 自我を取り戻した事が影響してるのかな?

 

「リーナ。カリアスたちは甘いタレの団子を選んだけど、一緒でいい?」


「うん」


 お兄ちゃんが指した団子を見て頷く。店員から団子を受け取ると、それぞれお金を払い店から出た。


「広場があるから、そこで食べようぜ」


 カリアスの提案に頷くと、広場にある椅子へ座って団子を頬張る。

 

「「うまい」」


 カリアスとタグアスが同じような笑顔で団子を食べているのを見て、お兄ちゃんと一緒に笑ってしまう。


「リーナ、おいしいな」


「うん。甘さもちょうどいいね」


 団子を食べ終わると、少しだけ広場でゆっくりする。


「こちらでしたか」


「えっ? フォガスさん?」


 広場に入ってきたフォガスさんに、みんなが首をかしげる。


 朝はお兄ちゃんと私の様子を見るために学校まで一緒に行くけど、午後からは彼らも仕事があるので、こんなふうに会いに来ることはほとんどない。


 もしかして、何かあったのかな?


「どうしたんですか?」


 お兄ちゃんの質問にフォガスさんは微笑む。


「仕事が早めに終わったので、みなさんの頑張っている姿を見ようと思ったんですが、今日の練習はもう終わったと聞いてしまって。でも時間があるので、みんなの顔だけでも見ていこうかと思って探していました」


 えっ、わざわざ探してくれたの?


『何かあったんじゃないか?』


 やっぱり、ユウもそう思うよね?


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― 新着の感想 ―
手に通せないならほかの部分はどうだろう。 いっそ心臓付近から発動とか。 あるいは頑張っていれば開通したりしないかな。
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