表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
ユーレイと魔法と黒い紐
51/87

49話 見守り、だよね?

 契約の印を見て、ホッと胸をなでおろす。

 

『不思議なものだな。こんな印は見た事がない。生きていれば研究出来たのに、残念だ』


 そうだ。彼は研究者だったんだよね。精霊について、何か知っていることはないかな?


「オルガト」


『うん?』


「精霊について何か知らない?」


 私の突然の質問に、オルガトは不思議そうな表情を浮かべる。


『精霊? 女神の友人たちだよな』


 友人たち?


「女神が認めた存在なのは本で学んだけど、友人なの?」


『教会で呼んだ本に「友人たち」と書いてあったから、そうだと思う。ただ、知っていることはこの程度だな。俺は精霊には惹かれなかったから、目についた本をざっと読んだだけなんだ』


「そっか」


 それは本当に残念だ。


『でも、俺の友人で精霊について調べていたやつがいたから、そいつに聞けば……って、もう死んでるのか』


 そうだね。その友人がユーレイになっていない限り、私は会えないね。


「悪い。精霊については、手伝えないと思う」


「うん、ありがとう。さて、もう寝るね」


 時計を見ると、いつもの就寝時間を過ぎてしまっていた。


『もう? もっと話をしないか?』


 少し慌てた様子で、オルガトが私を見る。


 久しぶりに誰かと話せたから、会話に飢えているのかな。でも、明日も学校があるから私は無理だ。


「ユウがいるよ」


『えっ、俺?』


 私がユウを見ると、自分を指して首を傾げるユウ。


「そう。私が寝たらユウだって暇でしょう? だったらオルガトと話をしていればいいよ。という事で、あとはよろしく」


 寝る準備をして、歯を磨きに行く。口の中がさっぱりしたあと、部屋に戻ってベッドに横になる。チラッと二人を見ると、なぜか困った様子でお互いをうかがっていた。


 何をしているんだろう? まぁ、いいか。


「おやすみ」



『ぐずっ。それは酷いな』


『そうだろう? 本当に悔しくって、悔しくって。しかも最初から俺を殺すつもりだったとか言われて。俺は、あいつ等を信じていたのに……うぅ~』


 目が覚めると、二人のユーレイが話ながら泣いていた。二人の様子から察するに、ユウはオルガトの話を聞いて悲しんで泣き、オルガトは悔しくて泣いているのだろう。

 

 それにしても、目覚めてすぐにユーレイの泣き顔を見ることになるなんて……。


「おはよう」


『リーナ、聞いてくれ! オルガトの殺した奴らは酷いんだ! 彼にいろいろと助けてもらったくせに、金に目が眩んで殺すなんて!』


 朝からやかましい。


 窓から差し込む光はとても清々しいのに、どうして私の目の前には号泣しているユウがいるんだろう?


『リーナ! 聞いてる?』


「聞いてるよ。でもちょっと静かにして」


『あっ、ごめん。ちょっと興奮しちゃって』


 ユウが私の前から離れると、オルガトがそばに寄ってくる。


『おはようリーナ。今日は洞窟に行くのか?』


「はぁ。今日は学校があるから行かないよ。調べる事もあるし」


『そうか。でも、なるべく早く洞窟へ行きたいな。だって今日にも魔石がなくなっているかもしれないだろう?』


「そうだね。でも、今日は無理だからね」


 このやり取り、きっとこれから毎日あるんだろうな。


 学校へ行く準備をして、ダイニングへ向かう。


「おはよう、リーナ。あれ? どうしたの? 疲れた顔をしているけど」


 心配そうに私の顔を覗き込むお兄ちゃん。


「大丈夫。ちょっと寝るのが遅かっただけだから」


 寝るのが少し遅くなって、そして朝から二人のユーレイがやかましいだけだよ。


「魔法の練習はどうする? 疲れているなら今日は休むか?」


『休もう! そうしたら、洞窟へ! いてっ』


 オルガトの肩をユウがバシッと叩いているのが見えた。


『しつこいぞ。今日は無理だとリーナが言っていただろう?』


『そうだけど……』


 縋るように見てくるオルガトを無視して、お兄ちゃんに微笑む。


「魔法の練習はやるつもりだよ」


「無理はしないでね」


「うん。わかった」


 優しいお兄ちゃんに癒されつつ、ダイニングで朝ごはんを食べる。


『おいしそう』


 オルガトの熱い視線を無視して食べると、お父さんが私の様子を窺っているのがわかった。


「お父さん。どうしたの?」


「昨日……いや、なんでもないよ」


 お父さんは少し考えると首を横に振った。そして、真剣な表情で私を見た。


「何か困った事があったら、お父さんに言うんだぞ」


「えっ?」


 急にどうしたんだろう?


「リーナ、どんなことでもいい。絶対に助けるからな」


「うん、ありがとう」


 お父さんの真剣な様子に、戸惑いながら頷いてお礼を言う。何か知っているのかなと思ってお母さんとお兄ちゃんを見るけど、二人は不思議そうにお父さんを見ていた。


 あっ、もしかして! オルガトかユウと話しているのを聞かれたのかな? 第三者からすると、私が独り言を言っているように聞こえるはず。


 あれ? でもお父さんは、私は精霊が見えると思っているよね? つまり、私が独り言を言っていても、精霊と話していると思って心配はしないはず。


 「お父さんが助ける」という話が出たという事は……あっ、ランサ森へ行く事を聞かれたのかも。そうだ、私「ランサ森へ行くには大人の協力者が必要になる」って言った! あれを聞かれたのかな?


 お父さんに視線を向けると、彼は心配そうに私を見ていた。

 

 おそらく聞かれたな。まぁ、良かったのかな。ランサ森へ行くから、絶対に話す必要はあるから。


「リーナ、学校へ行こう」


「うん」


 お父さんとお兄ちゃんと一緒に家を出て学校へ向かうと、フォガスさんが待っていた。


「おはようございます」


 丁寧に挨拶をするフォガスさんに、お父さんが軽く頭を下げる。


「おはよう」


「「おはようございます」」


 お兄ちゃんと私が挨拶をすると、フォガスさんはやさしく微笑んでくれた。


『うわっ、教会のマーク! ということは教会関係者? えっ、なんで教会の騎士がリーナのところに? もしかして、リーナって教会の騎士に見張られてるの??』


 やかましいオルガトをチラッと見て、すぐに視線を戻す。


 見張りではなく見守り役だよ。……えっ、まさか本当は見張り? ユーレイが見えている事に気づかれている? いやこの場合は、精霊かな?


「今日もよろしくお願いします」


 お兄ちゃんがフォガスさんに言うと、彼は笑顔で頷く。その笑顔を見て、ちょっとホッとする。


 こんなに優しく笑うんだから、見張りじゃない……と思いたい!


「「おはよう」」


 しばらく歩いていると、カリアスとタグアスが手を振っている姿が見えた。


『オルガト、少し黙れ』


 騒ぎ続けていたオルガトにユウがため息を吐く。


『だって、教会の騎士だぞ!』


『オルガト、教会と何かあったのか?』


『……まぁ、いろいろな』


 ユウから視線を逸らすオルガト。


 これは、あとで確認した方がいいかな?


「アグス、リーナ。しっかり勉強をしろよ」


 お父さんとの分かれ道に来ると、お父さんが私とお兄ちゃんを見る。


「わかった。お父さんも仕事を頑張ってね」


 お兄ちゃんの言葉に嬉しそうに笑うお父さん。


「カリアスとタグアスも頑張れよ」


 お父さんは、そばにいたカリアスとタグアスにも声をかけ、教会へ向かって歩き出した。少しだけ、その後姿を見送ると学校へ行く。


「「「「フォガスさん、行ってきます」」」」


 学校の校門前でフォガスさんと別れると校舎に入る。


「勉強、頑張ってね」


「うん、お兄ちゃんも」


 お兄ちゃんたちとも別れ教室に向かう。


『学校かぁ、懐かしいな。俺、学校が好きだったんだよな』


 オルガトが、私の周りをくるくる回る。


『落ち着け! リーナの邪魔になってるぞ』


 ユウの注意に、回るのを止めるオルガト。


『悪い。でも、学校なんて久しぶりだから。今の学校では、何を教えているんだ?』


『リーナは文字と草だな』


 草ではなく薬草ね。


『そうか。それは一五〇年前と変わらないんだな』


 一五〇前から、最初は文字と薬草なんだ。


『薬草なんて、勉強しなくてもいいと思うけど』


 ユウの呟きにオルガトは真剣な表情で首を横に振る。


『薬草は重要だぞ。怪我をした時、毒に侵された時、知っていたら助かる事が出来るんだから』


 この世界には魔物と魔獣がいる。だから、もしもの時を考えて薬草は全員が最初に習うみたい。前の世界なら薬局に行けば傷薬がすぐに買えたけど、この世界では薬も高いし、すぐに買えない事もあるみたいだからね。


「私を殺したユーレイは今日もやかましい」を読んで頂きありがとうございます。

申し訳ありませんが9月22日(月)は更新をお休みいたします。

次回の更新は9月24日(水)の予定です。

これからもリーナとユウをよろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ