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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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46話 見えてる?

「「ただいま」」


 カリアスたちと別れて家に帰ると、おいしそうな匂いがした。


「お腹が空いたね、お兄ちゃん」


「そうだね。魔法の練習を頑張っているからだね」


「うん」


 魔力を動かす練習を始めると、お兄ちゃんは両親に、魔法の練習を本格的に始めたことを報告した。どうやら、魔力を動かす練習を始めるのが、魔法の練習の第一歩とされているらしい。


 その日から、魔法の練習がある日はお兄ちゃんの夕飯の量が増えた。そして私も、魔力を動かす練習を始めると夕飯の量が増えた。


『最初は夕飯の量に驚いたけど、食べ切るんだもんな』


 そう。お兄ちゃんの前に並んだご飯の量に驚いたけど、今では同じ量を食べているんだよね。魔力を動かすことが、こんなに体力を消耗してお腹が空くものだとは知らなかった。


「どう? 魔法の練習は上手くいっているの?」


 夕飯を食べたあと、リビングでのんびりしているとお母さんが心配そうに聞いた。


「今日、初めて魔力を動かす事ができたよ」


「そうか。動かせたのか、おめでとう」


 お父さんが嬉しそうに笑うと、お兄ちゃんも同じように笑った。


「リーナはどうなの?」


「私はまだまだだと思う。動く気配もしなくて」


「そうなの? リーナはすぐにできるかと思ったわ」


 お母さんの言葉に、私とお兄ちゃんは首を傾げる。


「どうして、そう思うの?」


「リーナって、小さい頃に魔法を使った事があるのよ」


「えっ?」


『リーナの隠れた才能か?』


 お母さんが知っているんだから、「隠れた才能」ってわけじゃないと思うよ。


「リーナの二歳の誕生日にケーキを作ったんだけど、リーナってば本当に嬉しかったのね」


 お母さんの話は気になるけど、なんだか恥ずかしい話になりそう。


「ケーキを前にはしゃいで、ケーキに手を突っ込んじゃったのよ」


 やっぱり!


 楽しそうに話すお母さん。お父さんも思い出したのか、とても楽しそうな顔で笑っている。


『うわっ。見てみたかった』


 絶対にイヤ!


「リーナは、崩れたケーキと汚れた手を見て大泣きしたの。でも、手がべたべたするのが嫌だったのか、泣き止んで手を目の前で振ったのよ。するとクリーン魔法が発動して、手がきれいになったの」


「そうそう。あれを見た時は驚いたよな。まだ魔法を習っていないリーナが魔法を使うから」


 お母さんの話にうなずくと、お父さんも会話に加わった。


「魔法を習っていないのに、使えるものなの?」


 お兄ちゃんが不思議そうに私を見る。それに私は、首を横に振った。


 小さい頃のことだから、さすがに本当のリーナも覚えていないみたい。


「魔法を習う前に、魔法を使う子は稀にいるのよ。でも意識して使ったわけではないから、使い続ける事はできないの」


『そうなんだ。使い続けられたら、いろいろな事ができて楽しかっただろうな』


 お母さんの説明に、ユウが残念そうに呟く。私は、使えなくてよかったと思っているけどね。何事も、普通が一番だよ。


「小さい時に無意識に魔法を使った子は、魔法の習得が早いと聞く。だからリーナがすぐに魔法が使えるようになるさ」


 お父さんが私の頭を撫でる。


 本当に魔法を使えるようになるのかな?


 魔力を捉える事はできたけど、その先はまったくできる気がしないんだよね。だって、お兄ちゃんもカリアスたちも、魔力を動かせなくても動きは感じたって言ってた。でも私は、それを感じることができていない。


『リーナ、明日からも頑張ろうな』


 ユウの応援を聞きながら、お父さんを見る。


「頑張るね」


 みんなを信じて頑張るしかないよね。


 お風呂に入り、自分の部屋に戻る。


『リーナ、今日も勉強をするのか?』


「するよ。ユウには負けてられないからね」


 ユウより文字を覚えていないなんて、絶対にイヤ!

 

 勉強机に向かい、文字の練習を始める。最初の頃より、きれいに書けるようになったと思う。でも、線の位置を逆に書いたり、点を付ける位置が違ったり。小さなミスが多いから、それを減らしたい。


『リーナ。今の文字は、点の位置が間違っていないか?』


「えっ、本当?」


 またやってしまったの?

 

「本当だ。右じゃなくて左だった」


 しっかり位置を覚えておかないとダメだね。


「よし、文字の練習はおしまい。あとは――」


『え~、まだ勉強するのか? 遊ぼうよ』


「遊ぶと言っても、もう夜だよ」

 

 空中で文句を言っているユウに、呆れた表情を向ける。


『だって、最近は魔法の練習でまったく遊んでくれないし』


 いや、魔法の練習をする前だって、ユウと遊んだ記憶はないんだけど。


「何がしたいの?」


『…………んっ?』


 何も考えていなかったな。


『最近の話をしよう』


 ユウを見て首を傾げる。

 

 ずっと一緒にいるから、改まって話をする事はないと思うけど。


『あ~、リーナの行動は全て見ているから、話を聞く必要はないのか!』


 そうだよね。


 文字の練習のあとで読もうと思っていた本を見る。


 また明日でもいいか。


「ユウ」


『何?』


 不貞腐れた表情をしていたのに、私が呼ぶとパッと明るくなる。その変化に、つい笑ってしまう。


『えっ? 急に笑い出してどうしたんだ?』


「なんでもないよ。それより、最近の調子はどう? 不満を強く感じたり、不安になる時間が増えたりしていない?」


 空中に浮かんでいるユウと向き合う。


『不満? 不安?』


 私の質問に不思議そうな表情をするユウ。そんな彼の様子を見て、問題なさそうだとわかり、少しホッとする。


 この二つの感情が強くなると、自分の感情が押さえられなくなる。だから、この質問をするのは実は怖かった。でも、ユウはまだ大丈夫みたいだからよかった。


『こんな状態だから不満はあるけど、仕方ないと思ってるよ』


 少し寂しそうに話すユウを見る。


『日本のホラー映画とか結構好きで見てたけど、まさか俺が怖がらせる方になるなんてな』


 ユウの性格から、怖がらせる事はないと思うな。どちらかといえば、コメディ映画の方が似合いそうだよね。


『リーナは本物が見えるから、ホラー映画は見ないか』


「見ないわね。どれが役者のユーレイで、どれが本物のユーレイかわからなくなるから」


『……んっ?』


 不思議そうに私を見るユウに笑いかける。


「ユーレイたちは、自分たちの事を話題にしていたりすると興味を惹かれるの。だから、ユーレイを題材にしたホラー映画を撮っているところでは、本物のユーレイが集まりやすいのよ」


『もしかして映画の中に写り込んでいるのか?』


「そうよ。それも一人や二人ではなく沢山ね」


 ユーレイに驚くシーンを見たことがあるけど、その驚いた役者の隣にずっと本物のユーレイが寄り添っているの。そっちが気になって、ストーリーなんて追えないわよ。


『そうなんだ。見えなくて良かった』


 少し顔色を悪くしたユウに視線を向ける。


「ユウはユーレイが苦手なの?」


『偽物だとわかっていたから楽しめたんだと思う』


「そう」


 まぁ、そういう人は多いわ。映画にしても、お化け屋敷にしても、本物じゃないとわかっているから楽しめるのよね。


『おかしいよな』


 ユウの呟きに視線を向ける。


「何が?」


『ユーレイなのに、ユーレイが怖いかもしれないなんて』


 フィリアと初めて会った時も、ユウは悲鳴を上げたよね。


「そういうユーレイはいるから、気にしなくていいわよ」


 ユウがフィリアに初めて会ったときは、彼の態度に驚いた。でも、「ユーレイを怖がるユーレイがいる」と教えてもらった話を思い出したんだよね。


『俺みたいに、ユーレイを怖がるユーレイ?』


「そう」


 私が頷くと、少しほっとした表情をするユウ。


「でも、なるべく悲鳴を上げないようにね。相手に興味を惹かれると面倒だから」


『わかった』


 頷くユウを見て、少し安心する。


 あれ? ユウがズボンをはいている。といっても、太ももあたりまでしか見えないけど。


 えっ、どうして? 今までは腰のあたりまでしか見えていなかったのに。もしかして……ユウの霊力レベルが上がったの?


 コツン。


 窓から小さな音が聞こえた。


『ひぃいいぃぃぃ~』


 えっ? 窓の方を凝視するユウの視線を追う。


「あっ」


『えっ……俺のこと、見えてる?』


 しまった。ユーレイと視線が合ってしまった。


「私が殺したユーレイは今日もやかましい」を読んで頂きありがとうございます。

本日の更新で「第1章 私を殺したユーレイと、一緒です。」が完結いたしました。


すみません、第2章に入る前に少しお休みをいただきます。

更新を再開いたしましたら、またリーナたちをよろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

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