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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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44話 初めての魔法の練習

「リーナちゃん、バイバイ」


「ラクラちゃん、バイバイ」


 呪いの痕を気にしないでいてくれる友達ができた。二重で目がぱっちりした、可愛い女の子。淡いピンク色の髪で、とても優しい子だ。


 ただ、ユウが少し鬱陶しい。


『ピンクの髪は、乙女ゲームでは王道の色なんだ。きっと彼女はどこかの貴族の隠し子で、もうすぐお父さんが迎えに来るはず』


 それは絶対にないと思う。だってラクラちゃんは彼女のお父さんにそっくりなんだから。


「リーナ」


「お兄ちゃん。お待たせ」


 教室まで迎えに来てくれたお兄ちゃんの下に駆け寄る。そして、お兄ちゃんと一緒にいるカリアスとタグアスに、にこっと笑って軽く頭を下げた。


「今日は誘ってくれてありがとう」


「リーナが一緒だとアグスが安心するからな。昨日も『リーナは無事に家に着いたかな?』って三回も言ってたんだぞ」


 カリアスが、恥ずかしそうに頬を染めているお兄ちゃんに視線を向ける。


「仕方ないだろう? 心配だったんだから」


 お兄ちゃんの心配性がひどくなっている。私がもう少し大人になったら、落ち着くのかな?


「それに、みんなで学んだ方が楽しいだろ?」


 タグアスが私に向かって笑いかける。


「うん、そうだね」


 みんなで学校を出て、カリアスたちが住んでいた家の方へ向かう。


「そうだ! 家は見つかった?」


 カリアスたちを見ると、彼らは首を横に振った。


「おばさんが探してくれたけど、ダメだった。学校から遠い場所ならあるみたいだけど。だから、アグスが提案してくれたことを、帰ったらおばさんに話すつもり」


 もしかしたら、数日後にはご近所さんになるかもしれないね。


「リーナ。今日お世話になる人の家は青い屋根のお家だよ」


 お兄ちゃんが指さす方を見ると、青い屋根で広い庭のある家があった。


「教えてもらう人はショーじいって呼ばれているから、リーナもそう呼ぶといいよ」


 お兄ちゃんが私の肩を軽くポンと叩く。きっと、私が少し緊張しているのがわかったんだろう。


「わかった」


「お邪魔します。ショーじい、今日もよろしく!」


 タグアスが元気よく家の中に声をかける。数秒後、白髪まじりの青い短髪のおじいさんが出てきた。


「タグアスは今日も元気だな。昨日言っていたリーナという子は、君かな?」


 ショーじいが私を見る。


「はい。今日からよろしくお願いいたします」


「丁寧にありがとう。魔法は、ゆっくり焦らずに挑戦することが大切だから、今日は使えなくても気にしなくていいからな」


「はい」


『魔法! 魔法! もしかしたら面白い詠唱が聞けるかも!』


 興奮した様子で、上空をぐるぐる飛び回るユウをチラッと見る。


 詠唱があるのかな? 言葉によっては言うのが少し恥ずかしいかも。


「さて、まずは体内に流れる魔力を感じるところからはじめようか」


 広い庭に出ると、ショーじいの前に並んで立つ。


『やっぱりそこからなんだ!』


 嬉しそうにはしゃぐユウを無視して、お兄ちゃんを見る。


「どうやったら魔力を感じられるようになるの?」


「はじめてだからショーじいが協力してくれるよ」

 

 お兄ちゃんを見て頷くと、ショーじいを見る。ショーじいは、私に近づくと手を前に差し出した。


「わしの手に、手を重ねて」


「はい」


 ショーじいの手のひらに手を重ねる。


「わしからゆっくり魔力を流すから、その流れを感じたら教えてほしい」


「はい」


 胸がドキドキしてきた。ふぅ、落ち着こう。


「リーナ、落ち着いて。目を閉じて集中するといいよ」


 お兄ちゃんの言葉に頷いて目を閉じる。


「魔力を流すぞ」


 ショーじいの言葉を聞いて、手に意識を集中させる。

 

 最初は何も感じなかったけれど、ふわっと何かを両手で感じた。そして、その感じたものが、ゆっくり、ゆっくりと移動し始める。その感覚に少し不快感を覚えながら、移動するものを追う。ゆっくり、ゆっくりと両手から腕を伝って肩へ……。


 初めての感覚だからかな。少し気持ち悪いな。


「あの、魔力の移動を感じました」


 流れを感じたら、報告すればいいんだよね。


「自分の魔力ではないから少し不快に思うだろうけど、少し我慢してそのままその魔力を追ってくれるかな?」


 あっ、この感覚でいいんだ。


「はい」


「その魔力を追っていると、どんどん不快感が消えていく。そうしたら自然と自分の魔力を感じ取れるようになっているはずだ。一回でできなくても、何度か繰り返せばわかるようになるから、焦らなくていいからな」


「はい」


 ショーじいの魔力を追っていると、急にそれが消えた。


「……あれ?」


 自然と自分の魔力を感じられるって言ってたけど……まったく何も感じない。


『どう? どう? 自分の魔力がわかった?』


「どうじゃ?」


 ショーじいを見て、首を横に振る。


「そうか。気にする事はないぞ。一回で感じ取れる者は、ほとんどおらん」


 ショーじいが、お兄ちゃんたちを見る。お兄ちゃんたちはその視線を受けて、少し笑った。


「俺は四回目だったな」


「俺は五回目」


 カリアスが言うと、お兄ちゃんも続いた。タグアスを見ると、なぜか横を向いていた。


「俺は……十二回目だったよ」


 小さな声で告げられた回数に、ショーじいが彼の頭をポンと撫でた。


「回数なんて問題ない、問題ない。成功した事が重要だからな」


「うん」


 恥ずかしそうに頷くタグアスを、ショーじいが微笑ましそうに見つめる。


「さて、お前さんらもまずは体内の魔力を感じて、それができたら、手に魔力を移動させてみろ。ゆっくりじゃぞ。できたら、わしを呼ぶように」


 「「「はい」」」


 お兄ちゃんたちが魔力を感じようと目を閉じる。それを見ていると、ショーじいが私を見た。


「他人の魔力は気持ち悪かっただろう?」


「少し」


 私が頷くと、ショーじいが心配そうに私を見た。


「大丈夫か? 続けられるなら続けるが、無理だと思ったら言ってくれ。あの感覚が苦手な者もおるからな」


 そうなんだ。でも確かに、気持ち悪かったよね。


「私は大丈夫です」


 お兄ちゃんたちも頑張っているんだから、私も頑張ろう。それにユウではないけど、魔法があるなら、やっぱり使いたいよね。


「それじゃ、もう一度やろうか」


「はい」


 ショーじいの手に自分の手を重ねて、目を閉じる。


 あの気持ち悪い感覚が早く終わってほしいから、早く自分の魔力を感じたい。と、思ったのに。


「あっ、わかった!」


 ショーじいに協力してもらうのは、これで九回目。ようやくショーじいの魔力が消えた時、別の魔力を感じた。


「自分の魔力を感じたら、その魔力の流れを追ってみろ」


「はい」


 自分の魔力の流れに集中していると、体がぽかぽかと温かくなってくる。


「どんな感じがする?」


「体がぽかぽかしてきました」


 ショーじいの質問に答えると、ショーじいがポンと私の肩をたたいた。

 

「あっ」


 ショーじいの行動に驚いて、追っていた魔力がわからなくなってしまう。


「ショーじい?」


 どうして肩をたたいたんだろう?


「体が温かくなったのは、しっかり自分の魔力を捉えたからだ。成功だよ。そして、今日はおしまい。かなり疲れた顔をしておるぞ」


 ショーじいの言葉に、お兄ちゃんが頷く。


「リーナ、頑張りすぎ。かなり疲れているだろう?」


「うん。でも少しだよ」


 実は、七回目くらいから少し体が重く感じられた。でも、あと少しだと思ったから、頑張ったんだよね。


『もっと簡単に魔力の流れがわかるものだと思っていたけど、難しいんだな』


 私を心配そうに見るユウ。五回目くらいから、そばに来て応援してくれていたんだよね。まぁ、その声がちょっとうるさくて、集中するのに邪魔だったけど。


「お兄ちゃんたちはどうだったの?」


 お兄ちゃんとカリアスたちを見ると、三人とも首を横に振った。


「魔力を自由に動かすのは難しいからな。まぁ、気長に頑張れ」


 ショーじいの言葉に三人は頷くと、誰が一番に動かせるようになるか話し出した。私も次は、魔力を自由に動かすことか。感じるまでに九回もかかったから、次も時間がかかりそう。でも、あきらめずに頑張ろう。


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