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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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25話 フィリア、さようなら

『おはよう。お~き~て~』


 ユウの騒がしい声に目が覚める。


『おはよう』


 満面の笑みにため息が出る。


「おはよう。朝から元気だね」


 無駄に元気なユウ。もう少し寝ていたかった。それに、足が筋肉痛で動かすたびに痛い!


『もう、最高に面白かった! リーナにも見せたかったよ!』


「何を?」


 夜中に何があったの? ユウの様子から、私や家族にとって不利な事ではなさそうだけど。


『あのクズが夜中に来た!』


「えっ! 痛っ!」


 勢いよく起き上がったせいで、足に痛みが走る。


『どうした? 怪我か?』


「筋肉痛。昨日は頑張ったから」


『あぁ、必死な顔で走ってたもんな』


 それは、できれば忘れてほしい。


「それでクズがきてどうしたの?」


 まさか、夜中に来るなんて考えもしなかった。


『脅せと命令していたから、その結果を見に来たんだ』


 そういえば、少し脅せと言われてたけど、報酬をケチったせいで結局実行されなかったんだよね。


『それなのに見張り役は何もしなかった。それを知って激怒してた。あのクズ、顔を真っ赤にしてすごい顔になってたぞ』


 それ、ちょっと見てみたかったかも。


「それで?」


『クズはすぐに、見張りをしている奴らのリーダーに怒鳴り込みに行った』


「そんな存在がいたの?」


『あぁ、見張りをしている奴らは、裏家業を生業にしている者たちみたいだ』


 えっ、それはかなり危険な者たちでは?


『リーダーの奴は、表の顔もあるみたいだったけど。まぁ、今、それはどうでもいいよな』


 いや、それも重要。でも今はいいか。


『それでクズなんだけど、怒鳴り込んだのに逆に脅されてさ。とりあえず、すぐに金を払えって。払わないと、これまでの悪事を全部ばらすって言われてた』


 これまでの悪事?


「他にも何かあるの?」


『その辺りは口にしなかった。でも、クズの表情から何かあると思う』


「そう。お金はすぐに払いそう?」


『あぁ、クズの慌てぶりからして、すぐに払うと思う』


 一回目の報酬を払ったら、命令を実行するかもしれない。そうなったら、家族が怖い思いをする。


「どうにか、報酬の支払いを遅らせられないかな?」


 うーん、やっぱり無理かな。でも、何か方法はないかな?


『リーナ』


『うぉっ』


 フィリアが勢いよく部屋に飛び込んできた。その勢いのままユウにぶつかり、ユウは壁の中に消えていった。

 

 実体があったら、壁に激突していただろうな。


『手紙は、司教に渡されたわ』


 フィリアが私の肩をつかむ。その迫力に思わずのけぞる。


「教えてくれて、ありがとう」


 ユウが消えた壁を見つめる。でも、なぜか戻ってこない。どうしたんだろう?


『ミナリーたち、教会から依頼を受ける事もある有名な冒険者だったの! 実力のある冒険者なのは知っていたけど、教会関係者に顔が知られているほど有名だったなんて』


 そうだったんだ。そんな冒険者に手紙を託せたなんて、本当に運が良かった。


『手紙だけど』


 その後どうなったんだろう? 牧師はすぐに動いてくれたのかな?


『牧師はその場で手紙を読んで、すぐに人を集めたわ』


「人を?」


『うん。そして、すぐにこの村に向けて出発したの』


「えっ、もうこっちに向かってくれているの?」


 ちょっと早すぎない?


『そうなの。私もビックリしたわ。彼らの話からわかったんだけど、呪いを掛けた者を放置するのはすごく危険な事みたいなの。特に、今はダメだとか言っていたわ。その理由については、わからなかったんだけど』


 何か理由があるみたいだけど、すぐにこっちに向かってくれたのは嬉しいな。


『おい』


 あっ、ユウだ。


『フィリア!』


『んっ? ユウ? 何処にいたの?』


 フィリアの質問に、ユウがビックリした表情をする。私もビックリしてフィリアを見る。


『えっ、気づいていなかったのか? フィリアに吹っ飛ばされたんだけど!』


『えっ? あぁ、そういえば何かにぶつかったような?』


『あんなに勢いよくぶつかっておいて?』


 唖然として呟くユウに、フィリアが笑いながら謝る。


『あはははっ、ごめん。許して?』


「あっ」


 フィリアを見て、小さな声を上げる。だって、彼女の周りにうっすらと光が集まってきているのに気づいたから。


「カリアスとタグアスは、フィリアの友人に会えたの?」


 この光は、彼女の心残りがなくなった事で生まれたもの。そして、この光に気づいた死神が彼女を迎えに来る。


『うん。彼女、リットンから話を聞くと、カリアスとタグアスを抱きしめてくれたわ。そして、私がしっかり守っていくと言ってくれたの。リットンたちも様子を見てくれるみたいだから、もう大丈夫。これで、安心だわ』


 嬉しそうに微笑む彼女を見て、私も思わず笑顔になる。


「良かったね」


『リーナ、ありがとう。本当に、ありがとう』


 フィリアが私の手をギュッと握る。


「私もありがとう。こちらの問題に、カリアスとタグアスを巻き込んでごめんなさい」


『ふふっ。そのおかげで、カリアスとタグアスの成長も見られたわ。あの子たち、手紙を早く届けたいからと、休憩もせずに隣の村まで行ったのよ。これは大切な友人を守るための手紙だから、少しでも早く司教に届けるんだって』


 思っていたより早く手紙が届いたのは、二人が頑張ってくれたおかげなんだ。


『友人のために頑張れるなんて素敵よね?』


「うん。すごく素敵だと思う」


『ふふっ、最高のプレゼントだわ。あっ』


 窓から外を見るフィリア。


『行かないと』


「そうだね。フィリア、さようなら」


 私を見てきれいに微笑んだフィリアは、無数の小さな光となって消えていった。


『あれが死神?』


 ユウが窓から外を見て呟く。


『翼の生えた馬に見える』


 えっ?


 ユウの説明が気になり、急いで窓から外を見る。ユウの言う通り、真っ白な馬に綺麗な翼が生えている。そして、その馬の周りに淡い光がたくさん見えた。


「この世界の死神だね。おそらく別の呼び方があると思うけど」


『角があったらユニコーンなのに』


 ユウの言葉に首を傾げる。


「ユニコーンは角だけでしょう? 翼のある馬はペーガソスだと思うけど」


『ペーガソス?』


「英語読みのペガサスの方がわかるかな。天馬とも呼ばれるけど」


『あぁ、ペガサスか。あっ、消えた』


 フィリアを迎えに来たペガサスは、役目を終えたのだろう。一瞬でその姿を消した。


「ユウには全く気づかなかったね」


 ユウの存在に気づいていたら、少しくらいはこちらを見たはずだけど、全然見なかった。


『そうなのか?』


「うん」


『リーナ』


 ユウを見る。


『司教、こっちに来ているんだろう?』


「うん」


『上手くいって良かったな』


「そうだね」


 まだ完全には安心できないけど、きっと大丈夫。


『今日は、家でゆっくりだな』


 ユウを見る。


『学校は行かない方がいい。報酬が払われたら、奴らが何かしてくるはずだ。だから、今日は皆と一緒にいた方がいい』


「そうだね。うん、今日は皆と一緒にいよう」


『そうだ。見張っている奴のリーダーだけど、棟梁と呼ばれる奴だったぞ』


 棟梁?


「それって……お父さんの仕事仲間では?」


『えっ? あっ、リグスは大工だ!』


「うん」


 ユウと顔を見合わせて、黙り込む。


『えっと、クズが捕まると……きっとあれはリーダーの事も話すぞ』


 そうなると棟梁と呼ばれる存在にも影響があるだろうな。でも、彼は悪い事をしているんだから、捕まるのは仕方ないよね。お父さんにはショックかもしれないけど。


「というか。仲間なんだから、お父さんを助けてくれてもいいと思わない?」


 『んっ?』


「大切な仕事仲間でしょ? それなのに見張るなんて、お金のために? そんな人、とっとと捕まればいいと思う」


 お金のためにお父さんを見捨てるような人なんて、必要ないよ。お父さんはきっと悲しむだろうけど。


 コンコンコン。


「リーナ、起きてる?」


「お兄ちゃん、起きてるよ」


 扉を開けて入ってきたお兄ちゃんは、私の姿を見てホッとしたように笑った。


「朝ごはんに行こう。あっ、まだ着替えていなかったのか」


「ごめん、先に行っていて。着替えてすぐ行くから」


「わかった」


 お兄ちゃんが部屋を出ると、急いで着替える。

 

 あと少しで、日常を取り戻せる。お父さんとお母さん、それにお兄ちゃんとスーナ。絶対に守り抜いてみせる。

 

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