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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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15話 女性のユーレイはフィリア

「あなたのお名前は?」


『私はフィリア・ランカです』


『あれ? 苗字があるという事は貴族なのか?』


 ユウの言葉に不思議そうな表情をするフィリア。私も首を傾げてユウを見る。


「ランカは村の名前だけど」


『えっ?』


 意味がわかっていないユウを疑問に思いながら説明する。


「ランカ村のフィリアという意味よ。私はリーナ・ランカ。苗字ではなく村の名前が付くの」


『そうなんだ。苗字なのかと思った』


 苗字に拘りがあるのかな? もしかしてアニメやコミックでは、苗字があるのは貴族だけという設定だったとか?


『住む場所を変えたら、ランカという名前は変わるのか?』


 えっ?


「変わらないわ。住む場所が変わっても、ランカ村で生まれた事に変わりはないから」


 そうか、さっきの説明ではちょっと足りなかったんだ。


『あぁ、そういう事か』


 良かった、納得してくれたみたい。

 

 私、わかりやすく説明するのが苦手なんだよね。ユーレイと交渉する時は、わかりやすく話す事が重要だと聞いたけど大丈夫かな。


「フィリア。あなたが会いたいと言っているのは誰?」


『二人の子供よ。私を殺した夫と一緒にいるから不安なの』


 犯人は夫なの?


『うわ。夫に殺されたのか? もしかして愛人と一緒になるためとか?』


『えっ。そうよ。あの女と一緒になりたいから、私を殺したの』


 驚いてユウを見る。よくわかったね。


『あっ、ごめん』


 申し訳なさそうに謝るユウに首を傾げる。


 なんで謝ったんだろう? 気になるけど、フィリアの交渉に集中しないと。


「フィリア、子供たちがもしも死んでいた場合なんだけど――」


『死んでなんていないわ!』


「本当にそう言い切れるの? 今を知らないわよね?」


 きつい言い方してごめん。でも、大切な事だから。


『それは……』


「亡くなっていた場合は会わせてあげられない」


 フィリアのようにこの世に留まっていたら会えるけど、無責任な事は言えない。


『死んでなんていないわ。きっと大丈夫よ』


「私には、あなたの子供たちが生きているのかわからないわ」


『……そうね、わかったわ。その場合は、仕方ないもの。死んでいたら、諦める』


「理解してくれてありがとう。子供たちは、どこにいると思う?」


 この村に住んでいるみたいだけど、子供たちのいる場所がここから遠かったら、簡単には会わせられない。私がもう少し大きかったら、もっと自由に行動が出来るんだけど。


『ここから十五分ぐらいの場所に、私たちの住んでいた家があるわ』


 近いんだ、良かった。


「子供たちの名前は?」


『カリアスとタグアスよ』


 あれ? カリアスとタグアス? どこかで聞いた事がある名前だ。あっ、お兄ちゃんの友達に同じ名前の兄弟がいる。


「もしかしてランカ村第二学校に通っている兄弟?」


『えぇ、そうよ。もしかして知っているの?』


「うん。お兄ちゃんから紹介してもらったから」


 確かにフィリアの深い緑色の髪と、お兄ちゃんから紹介された友達の髪色はよく似ている。それにカリアスのほうは、フィリアと同じ薄い緑色の瞳だった。タグアスは、薄い青色。弟のほうは父親に似たのかな。


 それにしても、フィリアの子供たちが近くにいてくれて良かった。彼らとなら、私が学校に行けば会える。もし休んでいた場合、少し遠回りをして帰ればフィリアの家に行けるはず。


『あの子達は元気なのかしら?』


 不安そうに聞くフィリア。

 

「ごめんなさい。ここ数日は、学校を休んでいるからわからないわ」


『そう』


 落ち込むフィリアに微かに心が痛む。今から学校に行けば、会わせてあげられるかもしれない。でも、今はまだダメ。


「私のほうの要望を言うわね」


『あなたの要望を言うという事は、子供たちに会わせてくれるという事よね?』


「それは私の要望を聞いて、フィリアが納得したらよ」


『私はなんでもすると言ったわ!』


「わかっているわ。でも、何をするのか聞いてから判断して」


 ちゃんと理解してくれないと、契約が成立しないの!


『わかった。要望は何かしら?』


 私が知りたいのは、牧師とクズの事。最初に調べて欲しいのは、


「教会にいる牧師を調べて欲しいの」


『あぁ、家の前で暴れていたあの牧師の事ね?』


 フィリアを見て頷く。


「そう。彼の全てを調べて」


『わかった。調べるぐらいなら簡単に出来そうだから任せて』


「では、契約しましょう」


『契約?』


「そう。お互いに必ず約束を果たすという契約をするの」


 これで確実にあの牧師について知る事が出来る。まぁ、絶対にフィリアと子供たちを会わせる必要が私に課せられるんだけど。


『契約するわ。どうしたらいいの?』


 うぅ緊張する。ここまで話して、ユウ以外のユーレイに触れなかったらどうしよう?

 

 そうよ。話す前に、彼女に触れられるのか調べれば良かった。


 深呼吸、深呼吸。大丈夫。契約は初めてだけど、出来る! 絶対に出来る。一応、お父さんから学んだんだから。


 フィリアの前に手を出す。


「私の手に、フィリアの手を乗せて」


 ドキドキする。心臓の音が周りに聞こえそう。


 手のひらにヒンヤリしたフィリアの手が乗る。


 良かった。フィリアの手の感触がある。これでユウ以外のユーレイにも触れられる事がわかった。


「私、リーナ・ランカはフィリア・ランカと契約する。フィリアも言って」


『私、フィリア・ランカはリーナ・ランカと契約する』


「私リーナは、フィリアと子供たちを会わせると約束する。ただし亡くなっていた場合は、会う事は出来ない。その事をフィリアは理解している。また期日は決めないものとする。フィリア、これでいいですか? 『はい』か『いいえ』で答えて下さい」


『はい』


「フィリアは、リーナが望む教会の牧師について全て調べ報告する。期日は二日とする。これでいいですか?」


 あっ、ユウが驚いた表情をした。気づかれたかな? 私のほうには期日がなくて、フィリアのほうには期日がある事に。

 

『はい』


「では、契約をする」


 フィリアの手に向かって、私の霊力を流す。


 あれ? どうして流れないの?

 

 ……あぁ、やってしまった。この器では、霊力を動かした事なんてないんだから出来るわけないんだ。


 ウソ、失敗? いや、落ち着いて。私というか前の私だけど、いっぱい練習した。私自身を守るために必要だったから、出来るまで頑張った。そう、私は出来る、器は変わったけど出来る。

 

 まず体内の霊力を感知して……あれ? すぐに見つかった。霊力が、かなり増えているからかな?

 

 感知した霊力をゆっくり、ゆっくり手に移動させて。


 良かった。思ったより、 簡単に動かす事が出来た。


『リーナ? 大丈夫か?』


 心配そうに私を見るユウに、でも今は対応出来ない。


 ゆっくり、ゆっくりフィリアの手に流して……。重なった私の手とフィリアの手が緑の淡い光に包まれた。


 光が消えると、そっと手の甲を見る。


『それは花? 契約の印?』


「そう。うまく契約出来たみたい」


 私とフィリアの手の甲には、契約が成功した印。二個のハクチョウゲの花が描かれている。


 良かった。初めての契約だけど、無事に出来た。

 

 それにしてもこの体、霊力の移動が異様にスムーズだった。なんでだろう? まぁ、それについては後で考えよう。

 

 地面に落ちているペンダントを拾う。そしてフィリアを見る。


「さっそく、牧師を調べてもらえる?」


『わかった。でも、動けないんだけど』


「大丈夫よ。契約のための移動は出来るから」


 私の言葉を聞いたフィリアは、私が持つペンダントを見たあと私たちから離れた。


『本当だ。離れられた』

 

「契約を遂行するためだから、子供たちには会えないからね」


「あっ、そうなのね」


 子供たちの下へ行こうとしたみたいだけど、それはムリなの。ごめんね。


『すぐに調べてくるわ。そうしたら、子供たちに早く会えるのよね?』


 それには答えず笑っておく。すぐに会えるかどうかは、わからないから。

 

『行って来るわ』

 

 フィリアを見送ってため息をつく。


「説明がいろいろ足りなかったな」


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