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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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13話 ユーレイたちの思い

 ユウの言うとおり、ウソを見抜く魔法があると考えて行動した方がいいよね? もしもを恐れて動けなくなるのは避けたい。でも、あった場合の事を考えて行動しないと命に関わるかもしれない。


「よしっ、誤魔化そう」


『えっ?』

 

「精霊が見える、話せるとは言わない。ユーレイが見える事も言わない。私の行動を怪しむ者が現れて質問されたら、徹底的に誤魔化す」


『それで本当に大丈夫なのか?』


 それは……大丈夫とは、言えないよね。


「重要なのは、ユウの存在がバレないように行動する事だよね。でも、私の性格から絶対に隠し通すのは難しい」


『頑張りもせずに諦めるのか?』


「自分の性格はわかっているわ。第三者がいる場所で、ついユウを見てしまうとか、つい質問に答えてしまうとか。バレるきっかけは沢山あるから。それに、ずっと気を張り詰めて生活するなんて私には無理。だったら、ある程度でいいのよ。だって」


 おそらくユウとは、長い付き合いになると思うから。この私の勘、けっこう当たるのよね。


『何? だっての続きは?』


「まだユウとは一緒にいそうだからよ」


『あぁ確かに。何となく死ぬまで一緒にいそうだよな』


「えっ。それはイヤ」


 今、ユウの言葉にぞわっとした。まさかね? えっ、本当にそんな、まさかね?


『酷い! 俺はリーナとずっと一緒にいたいのに!』


「待った、ユウ。それを強く思ってはダメ」


『えっ?』


「ユーレイの言葉は、魂に刻まれるの。強く思いそれを言葉に出すたび、そうなるべきだと思い込んでがんじがらめになっていくの。だから私とずっと一緒にいるとか、そういう言葉を口に出してはダメ」


『そうなのか?』


「うん。言霊という言葉を聞いた事がある?」


『ある』


「言霊は言った本人に影響する言葉で、生者でも言い続ければ影響を受けるようになるの。ユーレイは、生者よりもっと早く強く影響を受けてしまうの。だから気を付けないとダメなのよ」


『そうなんだ』


「うん。そうなればいいなと思って言っていただけなのに、その事しか考えられなくなっていく。霊力レベル一のユーレイたちは、言霊に囚われている事が多いの」


『それ、なんだか怖いな』


「怖いよ。前に『ユーレイが未練を残して死ぬと、一日中その事で頭がいっぱいになる』と言ったの覚えてる?」


『うん』


「ユーレイって、未練を口にする事が多いの。会いたい人がいた場合、その人を思い出しながら『会いたい』『会いたい』と繰り返し言ってしまう。そうするといつの間にか、それ以外の事が考えられなくなってしまう。これは、自分の言葉に囚われてしまったからなの」

 

 囚われたユーレイは、本当にそれ以外の事を考えないんだよね。そのせいで何度も大変な目にあったんだから。

 

 ユウがもしそうなったら、祓う。絶対に迷わず祓ってやる。


『わかった、気を付ける』


 ユウを見ると顔をしかめている。不安がらせたかもしれないけど、重要な事だから仕方ない。


「よし、女神さまの事はだいたいわかった。ユーレイという存在が、この世界では隠し通さなければならない事も。次は、ユーレイに会いに行くわよ」


『はっ? えっ、ユーレイに会う? なんのために? この世界のユーレイは、女神が見捨てた存在なんだろう? つまり、悪い事をした奴らばかりなんだから会わない方がいいよ。危ないって』


 叫びながら首を横に振るユウを見て、笑ってしまう。そこまで怖がる必要はないのに。……たぶん?


「女神さまね。『さ・ま』。忘れてるよ」


 私も気を付けないと忘れそう。


『ごめん。でも、女神さまに罰を下されたユーレイにどうして会いたいんだ?』


「罰を下されたユーレイではなく、ユウみたいな心残りがあってとどまってしまったユーレイに会いたいの。世界が変わっても、人の思いはそれほど変わらないと思うから」


『人の思い?』


「元の世界で、最も多くのユーレイが望んだ事は『最後に、最愛の人に一目だけでも会いたい』なの」


『その思いが一番多いのか?』


 ユウを見て頷く。


「どの国も、この思いが一番多かったわ。次が『ありがとう』や『ごめん』と伝えたいとかね」


 服が入っている木箱を開けて、お兄ちゃんのおさがりのズボンとTシャツを出す。


「ユウ、あっちを向いて」


『わかった』


 ユウが後ろを向いたので、服を着替える。


『会いたいのが、俺みたいな奴だとはわかったけど、会って何がしたいんだ?』


「私が知っているユーレイと、この世界のユーレイの違いをまず調べたい。あと、話ができる状態のユーレイがいたら、交渉ね」


『交渉?』


「うん。私が、あなたの心残りを解決してあげるから、私に協力してって」


『協力! えっ、そんな事をして危なくないのか?』


 ユウが私の傍に来る。


「まだ、こっちを向いていいよと言っていないのに」


『ごめん。ビックリしすぎて……』

 

「着替えが終わっていたからいいけど、気を付けてよね」


『うん。それで交渉とか協力とか、そんな事をして大丈夫なのか?』


「大丈夫よ。霊能者の仕事の一つが、ユーレイたちの心残りを解決する事だから」


『えっ、仕事?』


「心残りのあるユーレイが増えすぎると、いろいろと問題が起こるの。だから霊能者たちはユーレイが増えすぎないように、彼らの望みを叶えるの。そして協力した見返りに、彼らから少しだけ霊力を貰う」


『霊力を?』


「うん。通常は少しだけ霊力を貰うの」


 その霊力を家神さまに奉納して、神社の運気を上げるんだよね。


『霊能者の仕事って地味なんだな。リーナから除霊の話を聞いたから、悪霊を除霊したりしているのかと思った』


「悪霊は死神の仕事だから、霊能者は手を出さないよ。それと曾祖母によれば、死神はとても面倒事を嫌うそうで、悪霊になるまで放置する事はないみたいなの」


『面倒事を嫌う死神?』


「うん。悪霊の相手は、大変なのかな? その辺はよく知らないけど」


『そうなんだ』


 なんとも言えない表情で空中を睨むユウ。


 ろくでもない事を考えていそうだな。


『こつこつ仕事に励む死神? イメージが』


 やっぱりね。

 

『あっ、ユーレイの心残りを解決して、リーナは何を望むんだ?』


『教会の情報。あと、クズの情報よ』


 まずは敵の情報を集める。そして、ユーレイの情報も集めたい。


「ユウ、行こう」


『母親に言わないのか?』


 不思議そうに私を見るユウ。


「うん」


『心配するから言った方がいいと思うぞ?』


 私もそう思うけど。


「言ったら、ダメだと言って出してくれなくなると思う。でもどうしても、ユーレイに会わないとダメなの」

 

『ん~……わかった。でも、家の周辺だけ、遠くには絶対に行かないからな』


 悩んだユウは、真剣な表情で私を見る。


「もちろんわかってる。クズの手先がいるかもしれないしね」


 そんな危険な事はしないよ。


「お母さんが起きる前に戻って来たいから、急ごう」


 部屋の扉をそっと開け、足音に気を付けながら玄関に向かう。玄関で外履きを取り、裏口に行く。


『玄関から出ないのか?』


 チラッとユウを見て頷く。裏口に来ると、ゆっくりと扉を開け、外に出て外履きを履いた。


 えっとまずは、ユーレイを探して様子を見る。意思疎通ができそうなら、交渉を持ちかける。注意点は、私が声を掛けるまで見える事がバレないようにする事かな。


『誰かいる』


「こっちを見てる?」


 靴を見ているふりをして、ユウに聞く。


『いや、こっちを見て……ひえっ』


 ユウの様子がおかしい。


 靴から空中に浮かんでいるユウに視線を向けると、真っ青な表情で何かを凝視している。チラッとユウの見ている先を確認すると、そこにはユウと同じように空中に浮かんでいるユーレイが、こっちを見ていた。


『ユ、ユーレイがいる!』


「はっ?」


 いやいや、ユーレイを見て、どうしてそんな反応をするの?


『私が……見えるの?』


 あっ、やばい、知られた。もう、気を付けようと思ったばかりなのに!

 

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