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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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8話 何を話すべきなのか

『寝られないのか?』


 ベッドに入り、ジッと天井を見ているとユウから声が掛かる。


「明日のことを考えているの」


 彼らにどう対応したらいいのか。


『明日のことは、明日考えればいいよ。今、考えたって無駄だと思うぞ』


 ユウを見ると、肩を竦めた。


『寝ないと、また熱がぶり返すぞ』


 心配そうな表情に変わったユウを見て、微笑む。


『心配しているのに……』


 あっ、心配している事を笑ったわけではなく、ユウの存在にホッとしたんだけど。でも、これを言うのは少し恥ずかしいかも。


「心配してくれてありがとう」


 ユウから天井に視線を戻す。


「彼らに、何を言えばいいんだろうね?」


『呪いによってリーナという少女が亡くなったこと。そして、リンという……少女が、憑依してしまった事だろう』


 少女?


「私は三一歳だったんだけど」


 少女というには無理がある年齢だと思う。


『年齢は、言わない方がいいだろう』


「どうして?」


 ユウはおかしな事を言うな。


『だって、もしかしたらリーナの両親より上の可能性があるだろう?』


「えっ? その可能性があるの?」


 でも確かに、三人も子供がいるのに若く見えた。


『たぶん。その場合、自分より年齢の上の娘ができるわけだからさ。気まずいだろう』


「そもそも、私はここにいられるのかしら?」


『なんで?』


 ユウが驚いた表情で私を見る。


「だって、リーナの体だけど、中身は違うから」


 体はリーナだけど、中身は家守リンという別の存在で。つまり彼らにとって、私は赤の他人になる。


『俺は、大丈夫だと思うけど』


「どうしてそう思うの?」


『だって、彼らはリーナをとても大切に思っているから』


「だから、私という存在が許せないと思うかもしれないでしょう?」


 娘の体を奪った存在なんだから。


『奪ったなんて考えてないか?』


 ユウを見る。彼は私の表情を見て、ポンと軽く頭を叩いた。


『奪ったんじゃない。リンは、リーナがいなくなった体に入ってしまっただけだ。それも知らない間に』


「そうだけど、それを話してわかってくれるかな?」


 リーナの家族にとっては、それが本当の事なのかもわからないのに。


『リーナの家族がどういう態度を取るのか。それは、明日になってみないとわからないよ。つまり、今考えても答えなんてでないって事だ』


 それはそうだけど。


『明日にならないとわからない事を、ずっと考えるのは無駄だ。そんな事をしていると体を壊す。だから今リンがする事は、リーナのために休息を取る事だと思うぞ』


「うん。そうかもしれないね」


 リーナの体なのだから、大切に扱わないと駄目だよね。


「はじめてユウを頼もしく感じたかも」

 

『はじめてって。俺、仕事ができる先輩だって人気だったんだぞ』


「そうなの?」


『あぁ、仕事が丁寧で早いって言われていたんだ』


「すごいね」


『定時で上がらないと、ギルド仲間に迷惑を掛けるし。別のゲームを楽しめないからさ』


「……そう」


 ユウの原動力は、間違いなくゲームだね。

 

 そんなにゲームは面白かったのかな? 私もした事はある。パズル系のゲームを時間つぶしのために。でも、それ以外は手を出さなかったな。


『そうだ、リーナ。いや、リンか?』


「リーナでいいよ」


 リーナの家族に拒否された時は、リンとして生きよう。それまではリーナのままで。


『精霊が見える事にしたらどうだ?』


「えっ?」


 どうして、その部分でウソを吐くの?


『ユーレイが見えるなんて言ったら、リーナのことを聞かれるぞ?』


 ユウの言葉にハッとして、周りを見る。


『どうしたんだ?』


「どうして気づかなかったんだろう。 亡くなったリーナはどこにいるの?」


 憑依したという事は、この体にリーナの魂はなかった。つまり、リーナの魂はこの体から出たはず。


「ユウ。ずっと私の傍にいたのなら、リーナの魂がどうなったかわかるよね?」


『俺の意識がはっきりしたのは、リーナの苦しそうな声が聞こえた時なんだ』


 まだリーナの魂が体の中にあった時かな?


「それで?」


『リーナに声を掛けたんだけど、全然気づいてくれなくて。少ししたら、ぐったりして動かなくなったんだ』


 もしかして、その時にリーナは亡くなった?


『でもすぐに、リーナがまた苦しみだして。あっ、もしかしてその時にリンがリーナに憑依したのか?』


「たぶん。それで? リーナの魂は?」


『見ていない』


「えっ?」


『リーナの魂は、体から出ていない』

 

 ユーレイは、魂を見る事ができる。つまりリーナの魂は、まだ体の中にあるの?


 胸に手を当てる。まぁ、こんな事をしたところでリーナの魂がここにあるのかなんて、わからないのだけど。


『なぁ』


 ユウを見ると複雑な表情をしている。


「どうしたの?」


『リーナは呪いで亡くなったんだよな?』


「うん」


『アニメや小説だと、呪いが魂を吸収するという事があるんだけど、あるのか?』


 呪いが魂を吸収?


「聞いた事はないけど、呪いは専門外だから……どうなんだろう?」


 人を殺すほどの呪いには動いている心臓が必要だと聞いた。でも呪いが魂を吸収?


『専門外?』


「うん。だから呪いに付いて詳しくはないの」


『呪いの専門家がいたのか? あっ、研究者か」


 ユウの言葉に首を横に振る。


「私たちのいた世界にも、呪いはあったのよ。呪いを掛ける呪詛師もいたし、呪いを解く解呪師もいた」


『呪術師?』


「違う。呪詛師よ。じゅ・そ・し。悪意を持って人を呪う者たちの事」


『呪詛師に解呪師。マジでそんな存在がいたのか?』


 驚いているけど、少し嬉しそうだね。


「うん。まぁ呪詛師の多くは、弱い呪いしか扱えなかったけどね」


『弱い呪いって?』


「そうね。一日に一回、足の小指をぶつけるとか。外に出たら、鳥にフンを落とされるとか」


『はっ?』


 あっ、すごく呆れた表情をされてしまった。


「確かに地味だけど、毎日起こる不幸だから、じんわり効いていくんだよね」


『ん~。そうか?』


「うん」

 

 数年も続けば、誰もが気にしだすからね。


『強い呪詛師もいたのか?』


「いたわ。私でも知っている有名な呪詛師は三人ね。彼らは呪いで人を殺せるだけの力があったから。あっ、話が脱線しすぎたわ」


『そうだったな。悪い』


 なんの話をしていたっけ?


「そうだ、リーナの魂は体から出ていないという事だったわね」


『うん。憑依は、絶対に魂がない体にしたできないのか?』


「うん。祖母からは、そう教わった」


 だからリーナの魂がどこに行ったのか聞いたのよ。彼女と話しができれば、彼女の気持ちがわかると思ったから。


「呪いに付いて調べないと」


 リーナの魂が、どうなったのか。


『あのさ、呪いで消滅した可能性は?』


「それは……」


 呪いに付いて学んだ時に、そんな話は聞いていない。でも、


「ここは私がいた世界とは違うんだよね」


 私が知っている呪いとは、別の力を持っている可能性がある。


「わからない。もしかしたら消滅も……ユウが言った吸収も、あるのかも」


 呪いで、魂が吸収や消滅するなんて、考えたくもないけど。


『そうか』


 はぁ、いろいろと考えたせいかな? 頭が痛くなってきたかも。


『頭痛か? だから寝ろって言ったのに』


 まさかすぐに気づかれるなんて。


『熱がぶり返すぞ、寝ろ』


 そうね。ユウの言う通りかも。


「うん。おやすみ」


『おやすみ』



 リーナの両親を前に、ゆっくり深呼吸する。


 しっかりしろ! 私なら、できる。


「あなたは、リーナではないんだね」


 リーナのお父さんを見て頷くと、彼は悲しげな表情をして俯いた。


「あの日、何があったのかお話しします」


 どこまで話すのか、起きてからずっと考えた。そして、なるべく本当の事を話すと決めた。

 

 リーナが呪いで亡くなったと思う事、その体に私が入ってしまった事。その原因は、私にはわからない事。そして、リーナの記憶を引き継いでいる事など、なるべくわかりやすく話す。


「そう。そうだったのね」


 お母さんの呟きに、ギュッと手を握る。


「リーナは、亡くなったのか」


 お父さんの呟きに、俯き目をつぶる。

 

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