特訓とオーラ
お待たせしました!
着替え終わり、戻ってきたら早速授業を開始。
何を教えてくれるのか、ワクワク。
「まずは私のことは師匠と呼ぶように。私はお前たちのことは名前で呼ぶ」
「「はい、師匠!」」
「よろしい。では初めに、どれだけのことが出来るか確かめる。といっても、2人が武術などの心得が無いことは聞いている。だからマナの操作がどれだけ出来るかを知りたい」
武藤さん、あらため師匠に言われ愛浬からチャレンジ。
肩幅に足を広げて道着姿で「ん~~~!」と目をつぶり、体内にあるマナを感じようと一生懸命な愛浬。
白髪美幼女が道着姿で踏ん張ってる姿は萌える!
「がんばれ、あいり!」
心から迸る想いのままに応援してみたけれど、どうにも芳しくない様子。
凪沙の応援により、愛浬のマナ操作が良くなった! みたいな支援魔法にはならないようだ。無念。
「よし、愛浬もういいぞ。次、凪沙やってみろ」
愛浬は今まで、マナの活性化などやったことなかったのだろう。ウンともスンともいかない様子に師匠もそんなものだろうという顔で、愛浬は少し気落ちしてしまった。初めてならそんなものだよね。僕も初めての時はそんなものだった。
だがしかーーーし!
僕は赤ん坊の時からマナの活性化を練習していたから多少の自信はある。僕が愛浬の分もがんばるぞ!
「フンっ!」
僕は気合を入れて踏ん張る。
体内にあるマナを感じ取り、初めて師匠を見た時のことを思い出し、頭から降りていき指先へ、さらに巡り足の爪先へ、円を描くように反対の爪先から指先、頭へと素早く流れるイメージをする。
ただイメージするだけなら簡単だ。
しかし、思い通りにしようとすると粘着質な物体を無理やり動かそうとしているようで難しい。最近は続けているおかげでマシになって来たが、師匠のような感じにならない。
今日は愛浬が隣に居るおかげか、いつもよりうまくいっている気がする!
これなら良い反応を貰えるかなと期待を込めて師匠を見ると、すごい睨まれていた。
「あのぉ、師匠?」
恐る恐る声をかけてみる。
あれれ、僕なにか悪いことしたかなぁ……?
「あっああ、すまない。そういえば凪沙は、先ほど入ってくるとき何か感じていたようだが、何を感じた?」
「あの時ですか? 師匠の体からマナの流れっぽいものを感じました。とても速くて、淀みのない流れが体中を駆け巡っているようでした」
「まさか、その歳であれを感じ取ったのか…………なるほど」
師匠は面白いことを知ったという顔で笑う。
「凪沙、お前はマナの活性化のやり方を誰に教わった?」
「ボクは1人で学びました」
「ほぉ~う1人で……か」
今度は、これは面白い、みたいな顔になった!?
何かまずいことでもしたのかなぁ……。
「よし。どうやら愛浬はマナを扱うのは初めての様子だ。だから凪沙、お前が愛浬にマナの活性化を教えてみろ」
「はい! って、ええええええええ! 師匠が教えるんじゃないんですか!?」
おかしい。僕が習うはずが、なぜ教える立場に。
「人に教えるという事は、自分がどれだけ理解しているかが重要だ。だから教えさせることでどれだけ理解しているかを知りたい」
「な、なるほど」
確かに一理ある。
驚いたけれど、これも自分の復習だと思ってやってみよう。
それに愛浬に何かを教えてあげるって、なんだかドキドキしちゃうね!
愛浬の方に振り返ると、なぜだか落ち込んでいた。
「凪沙ぁ……ごめんなさい」
そして謝られた!
「なんで謝るの?」
「だって、私がマナの活性化ができないせいで稽古が進まないから…………」
なるほど、愛浬は自分のせいでって思っているのか。
友達想いで責任感のある彼女らしい考え方だ。
「あいり、そんなことないよ。ほら、手を貸して」
慰めの言葉を言い募るよりも実践で証明しよう。
まずは両手を掴み取り胸の位置へ。今度はいつも通り自分の内にあるマナを動かす。
「あ……これがマナ?」
どうやら僕の手を流れるマナを感じ取ったみたい。
続けて愛浬にも僕のマナを流し込む。
この時のコツは自分の体の延長線上だと思いこませることで、少しずつ自分のマナを馴染ませる。マナを持ってない無機物などは良いが、マナを持つ動物などにやろうとすると拒絶反応が出て弾かれたりしてしまう。
うまくマナを送り込めると相手の疲労回復や、リラックス効果などちょっとしたことが出来たりするのだが、これもギャルゲーで知った知識だ。
そのまま愛浬に僕のマナを流し続けて、僕を起点に循環させながら愛浬のマナも外側からりからちょっとずつ溶かすように馴染ませて動くように働きかける。
すると――――
「あっすごい、私のマナが動いてる感じがする!」
「え……うそ」
愛浬の喜び声と師匠の呟き。
しかし僕は、飛ぶ勢いで喜ぶ愛浬に夢中で師匠の呟きに気が付くことはなかった。
「これで愛浬もマナの動かし方分かった?」
「うん、やってみるわ」
愛浬は言うや否や静かに目を閉じて集中し、何かを確かめるかのように呟く。
「たしか、これを……こう、して…………こう!」
そう言った瞬間、握っている手から僅かに暖かいモノが動き出したのを感じた。
「すごいよあいり! 流石ボクの嫁!」
「きゃっ」
僕は喜びのあまり愛浬に抱きついた。
まさか1回で成功させるなんて、流石が僕の嫁!
ゲーム内で愛浬のスペックはヒロインと呼ぶに相応しい高さを持っており、勉強はテストで学年5位以内、運動神経もそこそこ良く、マナの扱いのテストも上位となっている。
勉強以外は主人公がどう関わってくるかで変わってくるので厳密には言えない。ただし愛浬ルートに入ると、主人公と切磋琢磨しあい全教科でトップ3に入る程となる。まさに愛の力がなせる業。
「ほんの少しでもコツを掴めればいいほうだと思っていたのに、まさかマナの操作ができるようになるなんて。それもさっき凪沙がやったことは…………」
師匠が何か言っているけどそれどころではない。
「ありがとう凪沙。凪沙のおかげで私もできるようになったわ」
と愛浬が抱き返してくれて、僕は更にうれしくなって強く抱き返した。
わいわいと喜び合っている僕たちに師匠は語りかける。
「凪沙、お前は本当にマナの扱い方は習ったことはないのか?」
「えっと、それはどういう……」
僕が誰かに師事されていないことは伝わっているはずなのに、それを聞かれるなんて。少し困惑する。
「父親に習ったりはしていないのだな?」
「……え? はい、お父さんは忙しくてそんな暇もないので」
この世界ではマナの扱い方を小学生から学び始める。
そこで少しずつ優劣がつき、篩にかけられて優秀な子たちが専門の高校へ入り『杖』を取得する資格を得るのだ。
この間の誘拐犯は『杖』を持っていたが、あれは違法で入手した物であり、この様な『杖』を使った犯罪行為が勃発している。
「そうか。流石あの人の娘というべきか。それにこちらも…………これは面白くなってきた」
僕の答えに楽し気に微笑む師匠。
あの人ってお父さんのこと? 一体何者なんだ……!? いや、僕のお父さんだけれども。
「予想外にも早く次に進めるから、このまま続けるぞ」
「「ハイッ!」」
「いい返事だ。今の感覚を忘れる前に次のステップへ行く。マナとはエネルギーだ。魔法の発動もそうだが、体を動かすことにも使える。その1つがマナ活性化による身体強化で、これはより素早くマナを循環させることで効果が高まる」
僕は事前にゲームで知り得ていた知識とすり合わせながら師匠の説明を聞いていた。
『恋守護』はギャルゲーでありながらも多様性に富んでおり、主人公を育成してNPCと呼ばれるゲームキャラクターと戦ったりもする。その結果でルート分岐があって難易度の高いルートもあるのだが、今ではいい思い出だ。
主人公の育成でマナの扱いに関して触れるのだが、シナリオの一部で軽く話に出てくる程度なので、実は詳しいことは知らない。
「活性化させるマナの量が多いければ多いほど良い。そして、ある量に達すると…………」
ブワンッ
「このようにマナが溢れ出てくる」
ゲームでは一定の強さになってくると、今の師匠のようにキャラクターのアイコンや2頭身のチビキャラクターがこのようなオーラを纏う状態になり、僕たちはこの現象をそのままオーラと呼んでいた。
中盤以降から出始めるオーラ持ちのライバルキャラクター。これが1つ目の壁として立ち塞がってくる。
オーラを出せる師匠は、やはりタダ者ではないのだろう。
マナの総量は個々に決まっており、努力次第では伸ばすことが出来るが生まれ持った才能に左右されることが多い。
だから特訓すれば誰もがオーラを出せるという訳でもない。
ちなみに僕も愛浬もオーラ持ちになれるキャラクターなので安心だ。
今の師匠の様にカッコ良くなれる。そう考えると今からワクワクしてくる!
それに今日は愛浬が隣にいるおかげか、いつもよりもマナが活性化している気がするし、いっぱい頑張ろう!
師匠が説明を終えて、僕たちのマナ活性化の特訓が始まる。
「あいり、がんばろうね!」
「うんっ!」
高揚感と共に身体がブワッと暖かくなる。
よーし、張り切るぞぉ!
ブワンッ
「「えっ」」
「あれ?」
そして早くも、オーラがでました。
あるぇ?
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『感想と感想返信は大切だと思った』
https://book1.adouzi.eu.org/n5051eb/
2000文字程度のモノなのでサックリ読めます。




