閑話 初めてのお泊り
長らくお待たせいたしました。
今回は閑話でございます。
最初は凪沙視点、次に愛浬視点となっております。
最初は凪沙視点なかったのですが、より凪沙の気持ちが分かり易い様に入れてみました。
凪沙side
愛浬も幼稚園に馴染んできたある日のこと。
いつもの様に、幼稚園にやって来た愛浬と2人で絵本を読んでいる時だった。
「ねー、なぎさ」
「んー?」
絵本を読みながら愛浬に返事をする。
今読んでいる絵本をただの幼児向けの本と侮るなかれ。最近の絵本は内容が凝っていて意外と面白い。
愛浬に誘われて、始めのうちは付き合いで読んでいたけど、幼稚園にある絵本たちはとても面白かった……くやしぃ! でも面白いのぉぉぉ!!!
「なぎさのお家へ……お泊りに行ってもいい?」
「んーいいよー…………うん?」
あれ、今すごく重要なこと言われた気がするけど、絵本に夢中でよく聞いてなかった。
これもすべて面白い絵本が悪いんだッ!
「ごめんあいり。いまなんて言ったの?」
「だから、なぎさのお家へお泊りに行ってもいいか聞いたの」
「ふぁぁぁぁぁ!?」
「そっそんなに驚くこと?」
「だってあいりがボクの家に泊まりに来るんだよ。嬉しすぎておどろくよッ!」
「そう、なの?」
「そうだよ!」
このあと僕は、終始幼稚園でニコニコしながら落ち着かない様子だったらしい。
仕方ないよね。だって早くお母さんに愛浬が泊まりに来る事の是非を聞きたいのだから!
いつもなら、愛浬と過ごす時間はあっという間に感じるのに、今日はいつもよりも長く感じられた。
「もう、なぎさったら」
愛浬に呆れられてしまったけど、仕方ないよね!
お迎えの時間になり、ようやくお母さんがやって来た。
「お母さん! 今度あいりをお家に泊めてもいい?」
ダッシュアタックをかます勢いでお母さんに抱き着きついた。
ハイかイェスか、さあさあ返事を!
「愛浬ちゃんがウチにお泊りをするの? お家の人が許してくれるのなら、ウチはいつでも大丈夫よ」
「わーい! ありがとうお母さん」
許しを得た僕はすぐさま愛浬の元へ報告に行った。
それを聞いて喜んだ愛浬と2人で、手を繋いで飛び跳ねてたらお母さんに呆れられた。
あッ! 家で何して過ごせばいいんだろう!?
僕は、初めて好きな子が家にお泊りに来る緊張と嬉しさで妙なテンションになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
愛浬side
ついに明日、なぎさのお家にお泊りをする日。
その日と次の日は幼稚園はない。だからお家からなぎさのお家へいく。
緊張や不安はあるけれど、やっぱりすごい楽しみで何を持っていこうか悩んじゃう。だって初めてできた、ちゃんとしたオトモダチで、今ではお父さまとお母さまの次ぐらいに大好きな子のお家にお泊りなんだから。
このことを、じーやに伝えたら、
「そのようなお友達が出来たことが、じーやはうれしゅうございますぅ!」
と涙をながしてたの。もう、おおげさなんだから。
なぎさのお家にお泊りすることが決ってからは、落ち着きがないってお父さまたちに笑われちゃったけど、しょうがないじゃない!
まわりの子は、お泊りのときは何をしているのかな? いつも幼稚園でしていることでもいいけど、お泊りでしかできないことをやりたい。
わたしは悩みに悩んだけど、あるものを持っていくことを決めた。
「じーや、用意してほしいモノがあるの」
なぎさがいつも言っているアレをやってみましょう。
ビックリするなぎさを想像してお泊りがより楽しみになってきたわ。早く明日にならないかしら!
そして、つぎの日。
「よ、よよよっよーこそいらっしゃいました!」
「ふふっ、なぎさったら面白い♪」
玄関でガチガチな、なぎさの姿。
言葉もすこしおかしいし、わたしと同じように緊張していたんだ。そう思うと嬉しくなる。
「おじゃましまーす♪」
「どどどぉーぞ!」
なんだかおかしくて、笑っちゃった。
すると、なぎさも一緒になって笑ってくれて。それがうれしくて、2人で笑った。
少し笑いつかれたから家に入れてもらって、じーやにお泊り道具をはこんでもらう。
「あいり、荷物がおおくない?」
「フフフ、ナイショ!」
いまは不思議そうに眺めるなぎさが、このあと驚くと思うとワクワクしてくる。
さあさあ、早くいきましょう!
家に入れてもらって、なぎさとは別々のへやに入ってお着替え。
もちろん、なにに着替えるのかも、なんで着替えるのかも教えていない。
私が着替えおえて出ていくと、スーツ姿のなぎさがいた。
「うわ!? 何でこんな格好に着替えさせられたのかわからないけど、エプロン姿もさいこうに似合うよ! さすがボクの嫁!」
予想通りのはんのうをするなぎさ。
おかしくって笑っちゃうけど、なぎさが褒めてくれるのがうれしい。
「なぎさもスーツ姿にあってるわ!」
「あいりのほうが似合っていてかわいいよ! 縦セーターにエプロン、それにオタマまでもって、まるで奥さんみたいでとっても良いよ!!!」
そこまで言ってもらえて、この格好をしてよかった。
なぎさに褒めてもらえると、お父さまやお母さまと違ったうれしさがある。いまもポカポカした感じがする。
「でも、なんでこんな格好になったの?」
いまだに分かっていない様子で、なぎさは首をかしげる。
だからわたしは笑いながらいった。
「なぎさがいつも、さすがボクの嫁!っていってるでしょ。だからなってみたの!」
「なってみた?」
「もちろん、なぎさの お・よ・め・さ・ん!」
「え、えええええええええええええええ!? ボクの嫁が嫁になってお嫁さんごっこ!」
「それも新婚さんよ」
「さらに新妻ぁ!!! え、ええ。どうしよう、ボクどうしたらいいんだろう!」
まさに嬉しさの極みによる混乱。
どうしようと混乱しているけれど、顔はふにゃりとゆるんでいる。
「ほらアナタ、ごはんにする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
わたしは『嫁』というモノを知るためにインターネットや本などで調べて知った決め台詞をいってみた。
「ああああ、あいりにそんなこといわれたら、ボクどうすればばばばばば」
「なぎさ!?」
急に壊れたおもちゃのようになったなぎさ。
どうしよう。なぎさをもどさなきゃ!
でも初めてのことでどうしたらいいのか分からない。
「なぎさ、しっかり! じーや、どうしたらいいの!」
いつもわたしが困っているときには助けてくれるじーや。だから、わたしはいつものように、じーやに聞いてみた。
「お嬢様、こういう時はほっぺたにチューをすれば治るかもしれませんぞ」
「わかったわ!」
ほっぺたにチューとかお父さまにもしたことがない。恥ずかしいけど、なぎさならいいかな。それに今はわたしの旦那さまなんだし。
あばばばばしているなぎさの顔を抑えて、ほっぺたに口をくっつけた。
「ちゅっ」
柔らかくてマシュマロみたいで、もっと味わっていたいかも。
くちびるから音を立ててはなれると、顔全体を真っ赤にして目をまわしている旦那さま。
「じーや! さっきよりもひどくなってるわ、どうしよう! あっ」
「おっと、凪沙様に少々刺激が強すぎたようですな」
倒れそうになったなぎさをじーやがキャッチ。
それでも起きない。どうしたらいいのかな……。これじゃあ、せっかく用意したコレでなぎさと遊べない。
チラリとじーやを見ると、お任せあれ、とうなずく。
「ゴホン。凪沙様、目を覚まさないとお嬢様に逃げられてしまいますよ」
何を言っているの? わたしはなぎさから逃げないわよ。
じーやの言葉に首をかしげていると、なぎさが飛び起きた!
「おきますおきます! だからあいり逃げないで!!!」
ぎゅっと手を握ってきたなぎさの顔が目の前に。
さっきのこともあって、わたしはなぎさのくちびるに目をうばわれた。
くちびるにしたらどんな感じなのかしら。
結婚式では誓いのキスをするということを前に調べたときに知った。
わたしもなぎさと……。
「あいり?」
少しボーっとしていたわたしに首をかしげてる。
ふふ、そんな心配しなくてもわたしはなぎさから離れない。だってわたしの大切な、大切な、大好きなお友達だもの。
「ほらなぎさ、新婚さんごっこのつづきをしましょ」
「うん!」
さきほど考えていたことを忘れ、わたし達はその日ねるまで新婚さんごっこをつづけた。
「旦那さま、いっしょにねましょ?」
「!!!!!!!!!」
次の日、なぎさが少し眠たそうだった。なんでかしら?
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