驚きと不安
お久しぶりです。
更新お待たせしました!
他の作品も、お盆中に更新しようと思っていたら全然出来てませんでした!
ちょっとリアルが落ち着いて来たので、他の作品も更新したいです(願望
冬コミは『TS娘が親友♀をその気にさせて~』の漫画本を描く予定です。
がんばります(白目
あれから僕は、愛浬と一緒に武藤師匠のところに毎日通い、その度に愛浬は甲斐甲斐しく僕のお世話をしてくれた。
きっと将来は良いお嫁さんになるに違いない。
それが僕以外の主人公たちのどれかになると思うと、胸が締め付けられる。
でも、まだ先のことだからと僕は目をそらした。
初日の訓練の後、僕は早速お父さんに尋ねてみようと思ったら、残念なことに出張で数日間帰ってこれないようで直接聞くことが出来なかった。
だから代わりにお母さんに尋ねてみたが、
「ねぇお母さん。お父さんのお仕事ってなに?」
「あら。凪沙はお父さんのお仕事を知らなかったかしら」
「うん、忙しそうにしていることしか知らないよ」
「そうだったのね。だったら私からは教えないでおくわ。直接お父さんに聞いてみなさい♪」
お茶目に笑い、はぐらかされてしまった。
お父さんのお仕事、愛浬の唐突な嫁力アップの原因と、気になることがあって少しモヤモヤする。
しかし、そんな気分も今は忘れ去られていた。
場所は居間。
目の前にはカメラを片手にフラッシュを焚くお母さんの姿があり、異常なスピードでカメラでいろいろな角度で撮影をしている。
「お母さん、凪沙がスカートを履いてくれて嬉しいわ♪」
それは、薄水色ワンピースの制服。
この制服は自宅から少し離れたところにあるお嬢様学校の物で、初等科から高等科まである女子学校。初等科、中等科と高等科で制服のデザインが違う。
初等科は襟には白いラインが入り、学年ごとに決まった色を基調とした柄入りリボンが首元にあり可愛らしいデザインで、入学試験がある所だが人気が高い。
可愛らしい制服で僕も見ている分にはとても良いと思う、見ている分にはね!
「お母さん、なんでボクがコレを着ているの!?」
「だって白百合女子初等科に入学するのだから、当たり前じゃない」
「なーるほど、って納得すると思ったの! ボクは近くの小学校に通うはずじゃなかったの?」
白百合女子学園初等科。通称、白百合。
僕が着ている制服の私立学校で、僕の家からは少し離れているので歩いて通学は出来ない距離にあり、近くにある別の小学校へ行く予定だった。
「それには私がお答えいたしましょう」
「凪沙おはよう。制服姿かわいいわね!」
「佐々木さんにあいり!?」
いつの間にか居間に入ってきた佐々木さんと愛浬。
少し前に似たような展開を見た気がする。
2人は僕を迎えに来たようで、お母さんが事前に鍵を開けておいたみたい。
そして佐々木さんの話によれば、例の事件により少し男性恐怖症になってしまい、家族以外の男性に近づくのが難しくなってしまったようだ。
さらに公立だとセキュリティー面でも不安が残るということで私学である白百合女子学園初等科に、それに伴い、僕と一緒に居たいから僕も通うことになったと。
僕以外は知っていた様子。
え、驚かせようと思った? はい、とても驚いたよ!
これって裏口入学では? と思われるかもしれないが、実は数日前に急に愛浬と2人でペーパーテストらしきものを受けており、それが入学試験の代わりだったようだ。
色々とドッキリすぎるでしょ!? 転生して初めてのテストを愛浬と一緒に受けれて楽しいなって思っていただけで気が付かなかったよ!!
テストの方は、愛浬は既に家で勉強を始めていたので楽々クリア。
転生者である僕も言わずもがな。
「凪沙は、いっしょに白百合に通うの……いやだった?」
「そんなことないよ!」
と僕に問いかけてくる愛浬。
愛浬も同じ制服を着ているが僕よりもとても似合っており天使のようで、透き通る白髪に淡い水色の制服は幻想的な雰囲気を醸し出している。
こんな愛浬と毎日通えるとか、控えめに言って最高じゃない? 僕も同じ制服を着ていることなんて些事だよね!
「そのね、……どうかしら?」
愛浬はそういうと、頬を染め、恥じらいながらスカートの端を摘みアピールしてくる。
初々しさも加わり、可愛すぎるでしょ!
「ぐふっ……」
今日も愛浬が愛おしすぎて辛い。
耐えるんだ、まだ膝を着く時じゃない。耐えるんだ!!!
「凪沙だいじょうぶ!?」
愛浬は体制が崩れかけた僕を抱きしめる。そして、僕の中で溢れ出しそうだった愛浬への愛が爆発した。
もうだめ、我慢できない!
「あいりかわいすぎるよぉおおおおお」
「ふぇぇぇ!」
感情の赴くまま愛浬を抱きしめ返す。
ギューーーーと、これでもかという程抱きしめる。
もうこのままお持ち帰りしたい! って、ここが家だった。
「な、凪沙もかわいいわ……」
「えぇ。お嬢様の次に可愛らしくございます」
「2人ともよく似合っているわよ」
「ねーね、かわいいー!」
そうそう、愛浬が一番かわいいよね。佐々木さん良く分かってる!
みんなから可愛いと言われて、ん? となる。
なんだか声が1つ多いぞ。そう思った瞬間、
トスッ
足に小さい衝撃。
もしやと思い目線を下げると、先ほどまでいなかった水色の小さいつむじが見えた。寝起きらしく、飛び跳ねた髪の毛を携えている。
「みそえも、いっしょにいひたいー」
僕のスカートに顔を押し付けているから聞こえにくいが、一緒に学校へ行きたいようだ。
まだまだ甘えん坊の霙は、今日まで幼稚園も無く、長く一緒に居られたのが無くなって寂しいみたい。
ちなみに、今日は霙も一緒に入学式へ行くのだが、良く分かってない。今年で4歳になる子に、入学式のことを説明しても分からないよね。
僕は霙に言い聞かせるために、愛浬から離れて霙の方を向きしゃがみ込んだ。
「今日はいっしょに行けるけど、おとなしくお母さんのいうことを聞くんだよ?」
頭を撫でながらそういうと、霙は嬉しそうに顔を縦に振る。
いい子いい子と更に頭を撫でてあげると、さらに破顔させた。
佐々木さんが運転する車に、僕、愛浬、霙、お母さんで後部座席に乗り込む。
お父さんは今日も仕事で入学式に出席できない。代わりにお母さんがビデオで撮影して後でジックリ見ると豪語していた。
僕を挟む形で、左に愛浬、右に霙を乗せたお母さんが座り、会話に花を咲かせていたが、学校へ近づくにつれて愛浬の様子が変化する。
ソワソワと手を彷徨わせ、スカートを握ったりしながらため息をつくようになった。
「あいり、だいじょうぶ?」
いつの間にか下を向いていた愛浬を覗き込むように尋ねた。
心なしか、白い肌が更に白くなっている気がする。
「凪沙、私ね。学校が少し怖いの」
その言葉を聞いて、僕はハッとした。
愛浬の今までの境遇を考えれば、新しい環境に飛び込むという事は恐怖が付きまとうのだろう。
うちの幼稚園に来た時でさえ髪の色で男子にからかわれたのだから、似たことが今後も起こるのではと不安になってしまう、という事かな。
「だいじょうぶだよ。ボクが一緒にいるから。」
ギュッと自分のスカートを握っている愛浬の右手を僕は両手で包み込んだ。触れた手は冷たく、愛浬が緊張しているのが分かった。
僕は少しでも彼女の緊張がほぐれて欲しくて、願うように力を込めた。
ゲームでは、最後の方でしか聞くことがない愛浬の弱音。
こうしていると彼女もゲームのキャラではなく、1人の人間なのだと実感させられる。
もし彼女が主人公を生涯のパートナーとして選んだ時、僕は素直に祝福できるのだろうか。まだ見ぬ未来のことを考えると、ぶり返すように体の奥がグッと縮こまる。
「だいじょうぶ。ボクが隣にいるから」
「凪沙……」
でも、今は僕が隣にいてあげられる。
自分自身に言い聞かせながら、愛浬はソッと僕の手の上に左手を重ね、学校に着くまでの間、無言で僕たちは寄り添った。
さらに、そんな僕にギュッと、霙は抱き着いて過ごしたのであった。
「あらあら、霙はお姉ちゃんが大好きね♪」
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