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浪士組結成から京へ。

そして

文久3年2月8日

浪士組は小石川伝通院を出発した。


近藤さんだけは、皆と別れ、道中先番宿割という役職についた。千夜は、女の格好をし、一定の距離を開け、中山道を歩いた。


しかし、3日目である2月10日

本庄宿に着いた時、事件が起こったのだった。


「俺の宿が無いだと?」


「芹沢さん、申し訳ない。こちらの手違いで宿を取り損ねてしまった。本当に申し訳ない。」


近藤は、一生懸命芹沢に、謝っていた。


「ということは、今晩は野宿だな。

おい、火を焚きたいから、薪にする木を集めてこいっ!」


近藤らは、これで一晩持つだろう というぐらいの量の木を集め、芹沢さんの前に出すと、全部の木をまとめ火をつけた。


炎の威力は凄まじく、芹沢の行いに唖然とした。



火事になって街が燃えてしまうかもしれないと、芹沢に、火を燃やさないで欲しいと頼みに来た住人がいた。


「我々はここで寝るのだ。

火を燃やさないと寒くて寝れんだろうがっ! 

つべこべ言うんじゃないっ!」


と怒鳴り、鉄扇で住人を殴りつけた。


「芹沢さん。ここの住人は悪くありません。」


近藤は、芹沢の前に歩みでた。住人を庇う様にして————。


「……そうだな。宿を取り忘れた奴が悪いんだ。」


ぎゅっと唇を噛みしめる近藤。自分が悪かったのは、重々承知していた。


だから、謝るならこの方法しか無いと、地に膝を着いた。


「ほう。土下座か……」


ニタッと笑う芹沢。

沖田が止めようと近ずこうとするが、土方がそれを止めた。


「何で止めるんですか!

近藤さんは、あんな事する必要は無いはずです!」

「……俺だって、止めてぇよ。」


伸し上げたい男が頭を下げる。そんな姿を見たい訳が無い。

近藤が頭を下げ様とした時だった。


「凄い炎やねぇ。」


大焚き火に歩み寄る1人の女。その声に芹沢がそちらを向いた。

「……ちぃちゃ————ふぐっ」


土方の手で口を塞がれた沖田。


知り合いだと知られたら、千夜に危険が及ぶかもしれ無いと土方はそう、考えたのだ。


「……女?何故こんな所に……」

「此処は、宿屋やろ?女おっても不思議やない。なぁ、あんさん、近藤勇いう人、知らん?」


芹沢に問う女


「……何考えてんだ?あのバカ。」ボソ

「ふぐ……んっーんっー」


土方の手にもがく沖田


「……あ、悪い。宗次郎。」


やっと離してくれた…


「……総司です。」


改名したのに名前を間違えられたし、踏んだり蹴ったりだ。


「……近藤なら、そこに。 」

「おおきに。」


芹沢の前を通り過ぎ様としたが、ガシッと捕まれた腕に、睨みつける様な視線を向けた女。


「……あんさんに用事は無いんやけど?」

「近藤に何用だ?」


じわじわと、近づく芹沢。腰に回る腕をただ睨みつける。


「ワッチは、ただ、宿屋に、なかなか来うへんから外に出ただけや。とった、宿屋の名前、間違えてはるんや無いかってな?」


「……」


焚き火の炎に照らされ、近藤がこちらを見つめるのがハッキリと見えた。



「近藤はん。宿屋の名前間違えただけで、頭下げる必要ないんちゃう?

宿屋は、一本道入ったとこにある。嘘や、思うなら聞いてきたらよろしい。」


その声に


「平間、聞いてこい!」

「……は、はい。」

走って行った平間と呼ばれた男。


「……で、いつまで、くっついとるん?」


やっと、芹沢の手から離れた千夜


「お前、名は?」

「ワッチは、————君菊。」

「君菊?吉原の芸妓か?」

「へぇ。この度、吉原から島原に移ることになって、まさか、こんな大焚き火見るとは思わへんかったわ。」


そう言い終わったら、顎を持ち上げられた。


「……噂には聞いていたが、

なかなか、美しいな。どうだ?今宵……」


寒気がするんですが…?



「ワッチは、肌は売らんのや。それに、火消すのが先違います?これじゃ、安心して寝れしまへんわ。」

バッと芹沢の手を振り払う。女に手を振り払われ、キッと睨み付けられる。


そこに、平間が戻ってきて、宿屋は一本先の宿屋だと報告した。


「こんなトコで、地べたと仲良くしてる場合ですか?近藤さん。」


「……千夜くん……」


パチパチと火花を散らす大焚き火

「あなたはわかってるはずです。いま、貴方が

すべき事を…。」


今にも民家に燃え広がってしまいそうな炎


「貴方は、一人じゃないでしょう?」

「……かたじけない。」


勢いよく立ち上がった近藤


「火を消したい!手を貸してくれっ!」


試衛館の仲間が、浪士組となってからの仲間が

住人達が、大焚き火を消すために動き出す。



数刻後、火は消えて芹沢らは、千夜が言った宿屋へと消えて行った。


「ちぃ!テメェは、何考えてんだよっ!」


「土方君、千夜さんが居なかったら、近藤さんは……」

山南に言われ、振り上げた拳を下ろした土方。


「千夜君、すまない。俺の不注意で、君を危険にさらして……」


「クス。危険になんてなってませんよ。お陰で、君菊の宣伝になりましたし 、宿屋、間に合って良かったです。」


そう言って笑った千夜


「……宣伝って、お前なぁ……」


「ま、まぁ、いいんじゃねぇ?2人共無事なんだからよぉ~。」


「新八の言う通りだぜ。そろそろ、俺らも宿屋にいかねぇと。」

「……あぁ。そうだな。」

「じゃあな。千夜。」

「……うん。またね。」


そう言うと千夜は、空を見上げた。宿屋に歩み出そうとする皆。だが、沖田は千夜の元に歩んだ。千夜とは、別行動だからだ。


「……総司?」

「ごめん。先に行ってて。」

「あぁ。わかった。」


藤堂は、皆と宿屋へと消えた。


「……ちぃちゃん?」

「どうしたの?総ちゃん。」


それでも、ちぃちゃんは、空を見上げたままで

「本当は、怖かったんでしょ?」


そう聞けば、彼女は驚いた様に僕を見た。


「……うん。怖かった。」


少し震えた手を見ればすぐにわかった。


そっと、手を握ぎると「……ありがとう。」

と、彼女はいつも言う。


そして、江戸を出発した時から彼女は、夜空を見上げる事が多くなった。


「……なんか、願い事?」

何気ない質問のつもりだった。


「今日も、星は流れなかった。……良かった。」

「星?」


「そう。星が流れると、誰かが亡くなる事らしくてね。」

「毎日見てるよね?江戸からたってから、ずっと…」


彼女は、キュッと唇を噛み締めた。


「……」

「……僕には、言えない事?」

「あのね。江戸にもう1人仲間が居たの。」

「……はじめ君の事?」


京に発つのが決まった日、斎藤も、姿を消した。


首を振る千夜


「はじめじゃ無くて、違う人。

その人は、いつも私を守ってくれてた。」


その守ってくれてた人の話をちぃちゃんは

僕にしてくれた。


その人から、剣術を習った事。ちぃちゃんを犯した男達を手にかけた事。お孝を殺そうとしていた事。


ちぃちゃんにとって、かけがえのない存在だと

聞いていてわかった。


そして、京に発つのが決まった翌日

彼は、姿を消した。文を残して……


「……そんなことが、あったんだ……」

「うん。」


だから、彼女は、彼の身を案じて、毎日、夜空を見上げていた。星が流れない様に祈りながら


「僕も祈るよ。その人が、無事であります様にって。」

「……え?」

「1人より、2人で願えば、叶うかもでしょ?」


そう言ったら、ちぃちゃんは笑ったんだ。君が笑ってくれるなら、僕は、何だって出来る。


例え、嫉妬した相手だとしても————。


それから僕たちは、毎夜、2人で夜空の見上げた。



2月17日、中津川にて


芹沢が小頭を罷免され取締役附になり、芹沢の後任として、小頭になったのは、近藤勇。

芹沢派の人間を分断する目的なのか、土方らが近藤の組と入れ替えられた。


そして、21日京まで後10里に迫った無佐宿に着いた時、ようやく長旅の成功を祝い皆に酒が振る舞われた。



そして、2月23日


ようやく京へ到着したのだった。


————烝、京に着いたよ。


安否の、わからない彼に、千夜は、心の中で報告した。


































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