表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/231

いっしょに食べたい料理

家の前まで戻ってくると、

夕日の色が窓ガラスに柔らかく反射していた。


鍵を開け、

玄関の空気を吸い込んだ瞬間――

なぜか、ほっと胸が緩む。


(……ああ……帰ってきたんだ……

今日は……すごくいろいろあったなぁ……)


そんなことを思いながら靴を脱いだとき。


すぐ横で、

ルベルが静かに言った。


「エレノア。

夕食……俺が作る」


「えっ!? 今日も?」


ルベルは迷いなく頷いた。


「エレノア……疲れてる。

魔力も……いつもより甘く揺れてる。

だから……休んで」


(……甘く揺れてるの、分かるんだ……もう……)


恥ずかしさが胸にふっと走る。


「だ、大丈夫だよ?

私も料理するの好きだし……」


するとルベルは

ほんの少し眉を下げ、

弱い声で言った。


「……俺、作りたい。

エレノアの……好きなものを……」


その声音は

“お願い”に近かった。


(あ……こういう言い方ずるい……

断れないよ……)


胸の中が温かくなって、

エレノアは小さく笑った。


「……うん。お願いする」


途端に、

ルベルの魔力が小さくふわっ、と弾む。


嬉しいときにだけ出る揺れだ。



キッチンに向かうルベルは、

エプロンを手に取る姿すら板についてきた。


「肉と……野菜……

エレノアは……スープが好き」


いつの間にか、

好みを覚えてしまっている。


少し驚き、

でも嬉しくて胸がくすぐったくなる。


「私も手伝うよ。

切ったり、味つけしたり――」


するとルベルは

まるで子どもに注意するみたいに

そっと手を伸ばし、

エレノアの腕を触れないように制した。


「……エレノアは休んで。

今日……魔力、がんばった」


(触れてないのに制された……

優しすぎて、逆に心臓が苦しい……!)


「で、でも……」


「座ってて。

“いっしょに食べたい料理”にする」


そのひと言が、

胸の奥に甘く跳ねた。


(いっしょに……食べたい料理……)


なんて温度の高い言い方だろう。


言葉の意味を反芻していると、

鍋の音や包丁のリズムがキッチンから聞こえてくる。


規則的で安心する音。

ときどき魔力がふわっと揺れて、

“ここにいてほしい”みたいに感じる。


(あぁ……こういう時間……

すごく好きかもしれない……)


料理の香りが漂ってくる頃、

ルベルが振り向いた。


「エレノア。

できるまで……あと少し」


その顔はどこか誇らしげで、

どこか照れていて――

見ているだけでまた魔力が甘くなる。


(本当に……

共同生活って、こんなに……温かいんだ……)


今日何度も感じたあの甘い揺れが、

胸の奥にそっと広がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ