表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/231

優しい気遣いと、帰り道で重なる歩幅

休憩を終えて、

エレノアはようやく顔の赤みが引いてきた。


ルベルはエレノアの様子をじっと確認し、

控えめに問いかける。


「……エレノア。

無理じゃなければ、もう一度だけ……

魔力の線、合わせてみる?」


「だ、大丈夫……

さっきよりは……落ち着いてるから」


本当に落ち着いているかは自信がない。

でも、逃げてばかりでは前に進めない。


エレノアは深呼吸し、

もう一度魔力を指先へ集め――

そっと光の線をのばした。


ルベルもそれに合わせて、

一歩引いた位置から線を伸ばす。


(……さっきより……優しい揺れ……)


魔力は触れず、

寄りすぎず、

それでも確かに“交わっている”。


さっきの強烈なざわつきはなく、

ただ静かに寄り添う波。


その安定に、エレノアは少し安心した。


「……うん。

これなら……大丈夫……」


ルベルも小さく頷く。


しかし、

彼の目はどこか申し訳なさそうだった。


「エレノア……

今日は、ここまでにしよう」


「え……?

もう少しできるよ?」


「ううん。

さっき……俺……

エレノアを困らせたから……

無理させたくない」


その言葉に胸がきゅっとなる。


(困ってなんか……

いないのに……

むしろ――)


言えない。


でも、

彼の気遣いが嬉しいのは確かだった。


ルベルは続けた。


「帰ろう。

エレノアが疲れる前に。

俺……エレノアの家までの道……

好き」


「え……?」


突然の告白めいた言葉に、

胸の奥が跳ねた。


「だって……

エレノアと一緒に歩けるから」


直球。


魔力がふるん、と甘く揺れる。


顔がまた熱くなりかけたが、

今度はゆっくり息を整えて頷いた。


「……うん。帰ろう」



森の帰り道。


陽が傾き、

木々の影が長く伸びる。


二人は並んで歩き出した。


最初は少しぎこちなく、

互いに距離を計りながら。


でも、

気づけば自然と歩幅が揃っていた。


ルベルが半歩前へ出ると、

エレノアも同じタイミングで歩幅を合わせる。


エレノアが少し速度を落とすと、

ルベルも足を緩めた。


本当に合わせているわけじゃないのに――

まるで魔力が

呼吸を揃えるようにリズムを合わせていた。


森の空気が甘くやわらかく包んでくれる。


しばらく歩いたその時、

ルベルがふっと横目でエレノアを見た。


「……エレノア。

歩くの……同じだね」


「え……?」


「足……揃ってる。

気がついたら、ぴったり……」


言われて意識した瞬間、

また恥ずかしさが胸に押し寄せた。


でも同時に――

不思議と嬉しかった。


「……そ、そうだね……

なんか……自然に、そうなってた……」


ルベルは小さな声で言う。


「俺……こういうの……好き」


「っ……!」


言葉は少ない。

触れてはいない。


魔力が優しく揺れ、

夕暮れの風が二人の間を抜けていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ