店主夫婦の察しと、挙動不審爆発
お会計を済ませたあとも、
奥さんは楽しそうにエレノアを見つめていた。
「ねぇエレノアちゃん。
顔、なんか赤くない?」
「えっ!? そ、そんなこと……!」
「なんだかねぇ……
二人して雰囲気が柔らかいっていうか……
優しいっていうか……
ねぇ?」
奥さんは、店の奥から出てきた店主にも話しかける。
店主はルベルを見るなり、
眉をひそめて小声でエレノアに寄る。
「……何か困ってることはないか。
巻き込まれていないか。
助けが必要なら言えよ……?」
(お店の人たち……
ほんとエレノアさんに優しい……)
エレノアは必死に首を振った。
「ち、ちがうんです!
あの、今一緒に住んでるのは、
師匠の……知り合いの……その……」
「知り合い(とても大切)が正しい?」
と横でルベルが小さく囁き、
「ちがいます!!
そんな意味じゃ!!」
エレノアがあわあわしながら跳ねた。
それを見た奥さんは、
「あらあら」と微笑む。
その目は――完全に“察した大人の目”だった。
そして奥さんは、
自分の二人の子を育てた“母の顔”になって
そっとエレノアの肩に手を置いた。
「エレノアちゃん。
もし体調に変化があったら……
いつでも言いにおいでね。
女の子はね、色々あるものよ?」
(…………)
エレノアの思考が止まった。
目が点になり、
口がぱくぱく動く。
「た、たい、ちょ、う……?
へ、変化……?
ち、違っ……違います!!
そんな予定も!気配も!兆候も!!
なにひとつ!!!」
奥さんは穏やかに微笑んだ。
「大丈夫よ~?
言わないだけで嬉しい、って子もいるからねぇ」
「い!!
い!!
い!!!
ルベルとは!!!
そういうんじゃ!!!
ないですっ!!」
後ろで商品を抱えていたルベルは、
「……そういう?」
と小声で呟き、
さらにエレノアは爆発する。
「き、聞かないでください!!!」
商店に響くエレノアの叫び。
奥さんと店主は顔を見合わせ、
“あぁ本当に初々しい……”という目で頷き合った。
(ほんとに……
なんでこうなるの……!?)
顔を真っ赤にして荷物を受け取るエレノアと、
静かに従う巨大なフードの男性。
その姿はどう見ても――
仲の良い夫婦にしか見えなかった。




