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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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ルベルの新たな宣言

朝食を終えたエレノアは、

テーブルの皿を重ねながら胸を押さえていた。


(今日も……朝から心臓が慌ただしい……

距離ルールは……相変わらず機能してない……)


食器をまとめて立ち上がる。


すると、

すぐ近くから声がした。


「持つ」


振り返ると、

すでにルベルの手が皿へ伸びていた。


当然のようにそこにいる。

影のように。


(影ルール……本当に存在してた……!)


エレノアは慌てて皿を引く。


「だ、だいじょうぶです!

私がやりますから……!」


「……エレノアの負担を減らしたい」


(言い方が……反則……!!)


一瞬気を抜くと、

また魔力が揺れそうになる。


エレノアは耐えながらシンクに向かう。


カチャン、と皿を置いた瞬間――


後ろに気配。


すぐそこに、

ぴたりと寄り添う存在。


ルベルだ。


「どうしてそこにいるんですか!?」


「エレノアが立ったから」


「いや理由になってない!!」


「エレノアが移動したら……俺も移動する」


(ストーカー気質!!

いやでも従魔の本能でもあるんだよね!?

どっちなの!?)


エレノアは泡立てたスポンジを皿にあてながら、

懸命に自分の心を落ち着かせようとした。


しかし。


エレノアの手首に、

ふわりと触れる指。


「っ!」


一瞬、魔力が揺れる。


(しまった……手首……!)


ルベルはすぐに手を離し、

眉をひそめた。


「……また揺れた」


「わ、私のせいじゃなくて……ルベルが触るから……!」


「触ってない。

……触れそうになっただけ」


(それ、実質触れてるのと同じなんですけど!?)


ルベルは真剣な表情でエレノアの動きを観察する。


そしてぽつり。


「……エレノアは“やりたいこと”をしてる。

だけど、俺はまだ……何もできない」


その声はどこか不満げで、

でも寂しそうでもあった。


エレノアが顔をあげると、

ルベルはその真紅の瞳で静かに訴えた。


「俺も……エレノアに役立ちたい。

朝食だけじゃなく……掃除も、洗い物も……全部覚えたい」


(役立ちたいって……

そんな真面目な顔で言われたら断りづらい……!)


エレノアは言葉を探す。


「で、でもルベル……家事って難しいですよ?

火を使ったり、刃物もあって……危ないですし……」


その言葉が終わらないうちに、

ルベルが一歩近づく。


エレノアの肩にかすかに触れない距離。


その声は低く、熱を帯びていた。


「危なくない。

エレノアがいるなら……俺は何でもできる」


「ぜんぜん安心できないんですが!!」


(なんなの……

なんでそんなに自信あるの……!?

可愛いような、危ないような……!)


ルベルはさらに続ける。


「エレノアのために動きたい。

エレノアの隣で……生きたい」


“生きたい”という言葉の重さに、

エレノアの胸は強く震えた。


魔力が、またわずかに揺れる。


ルベルの瞳が反応する。


(やばい……揺れが伝わる……!)


ルールを思い出し、慌てて叫ぶ。


「ルベルっ……ちょっと離れて!!」


ピタッ。


ルベルは即座に三歩下がった。


(言えば離れるのに……

言わないと永遠に離れない……

このルールほんと難しい……!!)


エレノアは深呼吸しながら、

泡立つシンクを見つめた。


背後で、

ルベルが静かに、真剣な声で告げる。


「エレノア。

家事……教えて」


エレノアは、

泡まみれの手で額を押さえた。


(……この人……いや、この魔獣……

たぶん本気で全部覚える気だ……)



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