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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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離れてほしい条件

新しく作られた生活ルール。

それはエレノアにとって、

“自分の心臓を守るための防御壁”だった。


三つの条件――


魔力が揺れているとき

体調が悪いとき

集中したいとき


この三つのときは、ルベルは近づかない。


それだけでいい。

ただの生活距離の話。


……なのに。


エレノアは説明しながら、

横目でルベルの表情を見ていた。


(なんか……すごく前向きな顔してる……)


とても「距離を置いてください」と言われた人には見えない。


むしろ、

結婚前の夫に「ふたりで家のルールを作りましょう」と提案された時のような満足げな雰囲気がある。


(どうしてそうなるの!?)


エレノアは心の中で叫びつつ、説明を続けた。


「……なので、その三つのときだけは……

距離をお願いする、ということで……」


ルベルは静かに、深く頷いた。


「わかった。

エレノアを中心に、三つの状況では半径三歩の距離を守る」


「さ、三歩……?

あ、歩数の話じゃなかったんですけど……」


「三歩あれば、危険でもすぐに届く」


(あっ……護衛目線……!)


エレノアは口を閉じた。


考え方の違いが根本すぎる。


エレノア

→ 心臓を守りたい

ルベル

→ 主の安全確保のための最適距離


そもそも土俵が違う。


だがルベルはさらに言った。


「三歩以上離れたら、

エレノアの魔力の揺れ……読み取りにくくなる」


「えっ、それ困るんですか……?」


「困る」


即答。


エレノアはその答えにめまいを覚えた。


(困るのは私なんだけど!?

なんでそっちが困るの!?)


ルベルは淡々と続ける。


「だから……三歩以上は離れない。

エレノアが“離れて”と言ったときだけ、離れる」


(え、結局あんまり変わってないよね!?)


エレノアは気を取り直し、もう一度説明を試みる。


「えっと……じゃあ、こうしましょう。

“離れて”って言ったときは、必ず離れる。

これは絶対です」


ルベルの身体がピタッと止まる。


そして――

真剣そのものの表情で頷いた。


「……約束する。

エレノアが“離れて”と言ったら……絶対に離れる」


「よかった……」


(これなら大丈夫かも……

これである程度、落ち着いて生活できる……はず……!)


しかしエレノアは、

ルベルの脳内で“最も重要視された部分”に気づいていなかった。


ルベルの解釈:


“離れて”と言わない限り、ずっとそばにいていい。


エレノアの意図:


“三つの条件のときは離れてほしい”

+基本はもっと人間らしい距離がほしい。


完全にズレている。


こうして――

ささやかな溝を抱えたまま、

距離ルールの運用が始まった。


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