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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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気配に触れるたび、研ぎ澄まされていく

エレノアが横になって静かに呼吸を整えている。

そのわずかな魔力の揺れを、ルベルは逃さず感じ取っていた。


普通なら感じられないレベルの微細な波。

けれどルベルの感覚は、明らかに昨日までとは違っている。


……いや、違いすぎていた。


触れた魔力が“残っている”


エレノアの寝息とともに、

ほんのわずかに魔力が漏れ出す。


暖炉の熱のように柔らかく、

ハーブティーの甘い匂いのようにほぐれる魔力。


それがルベルの中で

“形を持って”しまった。


正常ではない。


魔力は本来、触れれば消え、

生み手へ還るだけ。


だが――

エレノアの魔力は違った。


封印で混ざった瞬間、

ルベルの“獣の核”がそれを覚え、

痕跡のように体へ刻んでしまった。


そのせいで――


エレノアの魔力を感じるたび、

胸の奥が熱くなる。


理由も、抑え方もわからない。


ふ、とエレノアが寝返りを打った。


その動きで魔力が揺れる。


ほんのわずか、香るように――

金糸のような細い流れが、ルベルの皮膚を撫でる。


その一瞬だけで、

体内の魔力がざわりと立ち上がる。


「……エレノア?」


声に息が混じる。


まるで、

“呼ばれた気がした”ように。


エレノアは眠っているだけだ。

呼んでなどいない。


でも、魔力の揺れに触れただけで、

ルベルは反応してしまう。


(……おかしい。

俺はこんな……)


エレノアが魔力を乱していると、

その乱れが“刺激”になって胸が疼く。


魔力が甘い。

魔力が柔らかい。

魔力が近い。


それだけで本能が動く。


獣を作るための核だったものが、

“主”に対して過敏になりすぎている。



エレノアが軽く寝息を立てる。


その息に混じった魔力の匂いに、

ルベルの指先がわずかに震える。


彼女を护る衝動。

触れたくなる衝動。

奪いたくなる衝動。


すべてが同じ方向へ流れていく。


(……俺は、魔力に反応しているのか……

それとも……)


胸を押さえる。


(……エレノア“そのもの”に反応しているのか)


区別がもうつかない。


エレノアがどこかでくしゃみをしたとしても、

距離が離れていても、

魔力の“揺れ”が生じれば――


きっと、すぐに駆けつけてしまう。


それほど、感覚が鋭くなってしまった。


もしかすると封印で、

黒い残滓がルベルの感覚に

“余計なもの”を混ぜた可能性もある。



ベッドの上でエレノアがゆっくり眉を寄せる。


夢を見ているのか、

胸の奥の魔力がふわっと揺れた。


その瞬間――


ルベルの体が勝手に動き、

椅子から少し前に身を乗り出す。


(……また、揺れた)


胸の底が熱くなる。


「……エレノア……」


呼びたくないのに呼んでしまう。


呼べば振り向いてくれると知っているから。

エレノアが反応してくれるのが、

たまらなく嬉しいと思ってしまうから。


それももう、本能のひとつ。


人としての形をしていても、

内側は――

エレノアの魔力に従って動く獣だった。


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