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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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魔道具棚の奥で

朝食を終え、エレノアはテキパキと家事に取りかかった。


皿洗い。

床掃除。

洗濯物を外へ干して、

植物の水やりをして――


(よし、順調順調……!)


後ろを振り返ると、

ルベルが影のようについてくる。


一歩後ろ。

ぴったり後ろ。

どこに移動しても後ろ。


(どうしてそんなに追従性能が高いの……!?)


本当に不思議だ。

でも文句は言えない。

彼は“護るため”に生まれたのだから。


午前の光が差し込む中、

最後に残った家事へ向かう。


「さて……魔道具の整理をしなきゃ」


棚の奥に、

師匠が遺した魔道具がたくさん眠っている。

古いもの、新しいもの、試作品。

扱い方を間違えると危ないものも多い。


ルベルには少し離れていてほしいのだが――


「ルベル、ここは魔道具が多いから、少し離れて――」


「エレノアの近くに」


「き、聞いてください!?

危ないって言ってるんです……!」


「危ないなら……守る」


(いやもうそれは理屈として破綻してます……!)


それでもエレノアは根気よくお願いし、

なんとか魔道具棚から“半歩”だけ離れてもらうことに成功した。


(半歩って……意味あるのかな……)


棚を開けると、

乾いた木の香りに混じって、かすかな魔力の匂いがした。


エレノアはひとつひとつ確認しながら並べ直す。


● 軽量化の指輪

● 小型の魔力灯

● 師匠が作った温度調節の石

● 触ると爆発する謎の玉(※超危険)


(ふぅ……このへん、師匠の癖が出てるなぁ)


懐かしさに指が止まる。


奥へ手を伸ばすと、

ほんのわずかに、空気が揺れた。


「……?」


腕にかすかな“ぞわっ”とした感覚。


どこか冷たいような、

風が逆流したような――

魔力のさざ波。


「今の……なに……?」


棚の奥にしまい込まれた黒い箱。

蓋には触れていないはずなのに、

箱の縁がかすかに光った気がした。


(……見間違い?

いや、でも……)


師匠の魔術書を見たあとだからか、

エレノアの感覚が敏感になっている。


胸の奥がざわざわする。


(あの箱……こんな反応、今までしたことあったっけ……?)


ほんの少し近づこうとした、その瞬間――


背後で空気が変わった。


なにかが、

“ぴしっ”と張り詰める音もなく、

ただ肌に伝わる。


(……ルベル?)


エレノアはゆっくり振り返った。


その半歩後ろで、

ルベルが微動だにせず立っていた。


赤い瞳が――

棚の奥を、まるで“獣”のような鋭さで見据えていた。


ただの反応じゃない。


これは――


危険を察知した者の、本能の目。


エレノアの喉が、

音もなく鳴った。


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