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肩が触れそうで触れない
エレノアがスープをかき混ぜると、
ルベルはその真横で皿を準備し始めた。
(ち、近い……!!)
肩が触れそうで触れない。
時々、呼吸が重なるほどの距離。
「ルベル、あの……もう少し離れて――」
「なぜ?」
「な……なぜって聞かれると……その……」
理由を言葉にできない。
言ったら恥ずかしすぎて死んでしまう。
ルベルは不思議そうに首を傾げた。
「エレノアのそばが、一番落ち着く」
(ひぃぃぃぃぃぃ!!!)
エレノアは限界を迎えて鍋の中を見つめる。
(平常心……平常心……!)
すると、ルベルが隣でぽつりと呟いた。
「……昨日の夜、ここに座ってた。
エレノアがいなくなったあとも」
「えっ……?」
「火の前は……エレノアの匂いがするから」
「っっっ!!!!????」
(し、匂いってなに!?
ちょっ……何その情報……!!)
ルベルは当然のように続ける。
「落ち着いた」
エレノアの心臓は軽く死んだ。




