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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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納品先の奥さんと、怪しすぎる同伴者

村の雑貨店は、森の中では珍しいほど賑やかな場所だった。

木製のドアを開けると、乾いたハーブの匂いと木の香りが混ざり合い、あたたかい空気が広がっている。


エレノアは緊張で背中を硬くしながら入店した。


(よし……納品して……帰る……!

最速で帰る……!!)


しかし。


彼女の背後には、

深くフードを被った長身の男・ルベル がぴったり張り付くように立っている。


距離ゼロ。

影のようについてくる忠犬……いや忠獣……いや忠イケメン。


「エレノアちゃん、いらっしゃ――」


カウンターの奥から顔を出したのは、店主の奥さん。

ふっくらと優しい雰囲気で、昔からエレノアを気にかけてくれている。


しかし彼女の視線はすぐに、

エレノアの背後の“巨大な影”へ吸い寄せられた。


「え……その……後ろの……背の高い……フードの……男性は……?」


声が震えている。

無理もない。


だってめっちゃ怪しい。


エレノアはできるだけ自然なフリで言った。


「あ、あの、そ、その……納品を……お持ちしました……!!」


コミュ障、全開である。


奥さんはエレノアから目を逸らし、もう一度ゆっくりとルベルを見る。

フードの影から覗く顎のラインがやたら美しい。

体格も、村ではお目にかかれないレベル。


(あらまあ……)


奥さんの心の声が聞こえた気がする。


そして、そっとカウンター越しに身を乗り出し――



「……エレノアちゃん。

困ってない?

何かに巻き込まれてない?

助けが必要なら言ってね?」


その声音には本気の心配が滲んでいた。

年若い魔術師が怪しい長身男を従えてきたら、そりゃ気にする。


エレノアの胸がじんわり温かくなる。


(この店……師匠の頃からずっと……私を気にかけてくれて……

本当にありがたいな……)


ちょっと泣きそうになりながら、

しかし現状は――


(正直、色々困ってる!!

困ってるけど……全部……自業自得なんだよぉぉ!!)


深呼吸し、意地でも冷静を装って答えた。


「だ、大丈夫です!

そ、その……諸事情で、師匠の……知り合いと……

い、一緒に住むことになっただけで……!!」


「一緒に住む」の部分で声がひっくり返る。

コミュ障の限界突破である。


奥さんは驚きすぎて、手元の帳簿を落としそうになった。


「えっ……! い、一緒に……住む……?

あっ、あの……その……」


ゴニョゴニョしながらエレノアを見て、

ちらっとルベルを見る。

そしてまたエレノア。


(あっ、誤解された……

ぜったい誤解された!!)


エレノアの心が死にそうになったとき――


店の奥でルベルが、

ゆっくりとフードの陰から奥さんを見た。


赤い瞳が、静かにすっと。


奥さんはビクリと固まった。


(え、この人……ただ者じゃないわ………)


空気が一瞬だけ凍った。


その“無言の圧”は、

獣の警戒のようでもあり、

主を護ろうとする本能のようでもあった。


エレノアはあわててフォローに走る。


「ちょ、ちょっと!!にらまないでルベル!!」


「……にらんでない」


「いやにらんでた!!」


奥さんは苦笑しながらも納品分を確認してくれる。


「とにかく……エレノアちゃんがいいなら……いいけど……

何かあったらいつでも言いに来なさいね?」


「は、はいぃ……!」


温かみと心配に包まれながら、納品はなんとか完了した。


しかし村の外へ戻る途中――


「あの人、優しかった」


とルベルがぽつり。


「そ、そうですね……!」


「でも……僕を“疑った”」


「…………」


その言葉に、エレノアの背筋がぴしりと伸びた。


(や、やばい……!!

護る本能の“獣の部分”が……ちょっと顔出してる……!)


フードの奥で赤い瞳がゆらりと揺れた気がした。



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