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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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魔道具が示したもの

家事の基礎をいくつか終えた頃、エレノアはふと思い出した。


(そういえば……魔力がどのくらいあるのか、知らない)


喚び出した存在とはいえ、ルベルの魔力量を把握しておかないと危険だ。

魔術師としては当然の確認事項。

うん、これは大事。

家事より大事。


「ルベル、ちょっと魔道具の練習をしましょうか」


声をかけると、ルベルはすぐこちらを向く。


「エレノアが教えるなら、なんでも」


……その言い方やめてほしい。

いちいち胸が跳ねる。


エレノアは棚から“魔力測定器”を取り出した。

手のひらサイズで、真ん中に透明な魔石が埋め込まれた簡易道具だ。


「これは……魔力の強さを計る道具です。

ルベルがどれくらい魔力を持っているか、知っておきたいので」


ルベルは素直に頷き、興味深そうに魔石を見つめた。


「触ればいい?」


「はい。魔力を流す……と言っても、自然に触れれば反応します」


ルベルはゆっくり手を伸ばし――魔石へ触れた。


次の瞬間。


魔石が、ぱあっ、と強い光を放った。


「え……? ちょ、ちょっと待っ――」


エレノアが止める間もなく、魔石の内部に走る紋様がぐるぐると高速で回転しはじめる。

魔力指数を示す刻度が一気に跳ね上がり、通常値の範囲を軽々と飛び越え――


ピシッ。


魔石に小さな亀裂が入った。


「えええええええ!?!?」


エレノアは素で叫んだ。

壊れた。

魔力測定器が壊れた。


ルベルはきょとんとしたまま、自分の指先を見つめている。


「……壊れた?」


「壊れましたよ!? 壊れたよ!? 私の測定器ーっ!!」


「ごめん……?」


「ごめんじゃなくてっ……うう……どうしよう……」


本気で落ち込みながらエレノアは壊れた測定器を抱える。

しかしすぐに気付いた。


(いや違う……落ち込んでる場合じゃない。

これ、普通じゃないから……!!)


測定器が壊れるほどの魔力量。

普通の魔術師でも無理。

というか、壊す前に安全装置が働くのに、ルベルの魔力はそれを一瞬で突き抜けた。


エレノアは震える声で尋ねる。


「ルベル……あの……自分で魔力を使ってる、って感覚あります……?」


ルベルは静かに首を振った。


「何もしてない。触っただけ」


(触っただけでこれ……!?)


心臓がざわざわと騒ぎ始める。

胸の奥に得体の知れない不安がゆらめいた。


ルベルは亀裂の入った魔石を見つめ、ぽつりと言う。


「エレノア…僕…危ない?」


その問い方が、妙に寂しげで、胸に刺さった。


「い、いえ……危ないわけじゃ……ない、と思います……たぶん……!」


「たぶん……?」


「うぅ……ちょっとまだわからないだけです!

でも……教えれば、コントロールできるはずです!」


ルベルはその言葉を聞いた途端、ふっと柔らかく微笑んだ。


「じゃあ……教えて。全部」


その声音は優しいのに、どこか底が深くて――

エレノアの背筋にひやりとしたものが走った。


(私……本当にとんでもないもの、喚んじゃったんじゃ……?)


知らず知らずのうちに、エレノアの喉が鳴った。



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