2ー33【湯船の女神は自己中で2】
◇湯船の女神は自己中で2◇アイシア視点
アイズさんは、「それだけじゃないけどね」と続ける。
「今回は、あたしたちのような擬物が出しゃばっちゃ駄目なのよ」
「それってもしかして、帝国の問題の話ですか……?」
「――なぁんだ、やっぱりもう知っているんじゃない」
あたしの言葉に、アイズさんは悪い笑顔を見せた。
そう。今回の騒動……きっと今頃、ミーティアたちと女神様たちが話し合いをしているだろう議題を、あたしは知っている。
正確には、ここに来る前に知ったのだけど。
でも、それを口にするのは憚られた。
言ってしまえば、アイズさんがあたしをここに連れて来たのと、同じ理由だ。
「さ、さっきですよ。別に前から知っていたわけじゃ……」
「分かってるわよ。っと、お邪魔しまぁ〜す」
ザバザバ……
「え、ちょっ!!」
アイズさんはお湯を掻き分け進み、あたしの背後で胸元まで浸かる。
そのままあたしを抱き寄せると、優しくもギュッと……力を込めた。
「無理に神をやろうだなんて思わなくてもいい。あんたはあんた、そのままで充分なんだからね」
「……あたし、そんな風に見えてました?」
「見えてた見えてた。特に村が焼かれて、ミオとの関係をリセットしたあたりね!」
「うっ……そ、それは」
多分、使命に逃げようとしたのかも知れない。
アイズさんを継ぐ……EYE'Sとして力を継承し、皆を見守って行くんだって、勝手に思ってた。
「エリアやウィン、イシスの奴もだけど……神ってどうしても、自分の力を過信する生き物なのよ……あたしもね」
苦笑いするアイズさん。
自覚、あったんだ。
「そうなん、ですね」
「そ。だから、何も持たない人間に、コロッとやられたりするのよ。ミオだって、イエシアスを倒したでしょ?ミオの場合は特殊だけど、それでもイエシアスの馬鹿が、ミオを侮っていたのは間違いないわ」
湯船の中で、こんなにくっついて恥ずかしい。
そんな幼稚な感想も出ないくらい……あたしは聞き入っていた。
アイズさんの言葉を、優しさを。
「そのミオが、主神に並ぶ力を得て……その結果として、アイシアとウィズダムが、この世界で初めて、主神の手から離れて誕生した神になるの」
「はい」
「言わば、あたしたち人工の神は畑違い。アイシアとウィズダムとは、産まれた環境も理由も違って、その全うすべき役目も違うのよ」
「アイズさんたちの、役目って?」
あたしとウィズの役目が、ミオを支える事なら。
じゃあアイズさんたち、既存だった女神たちの役目って……一体何なんですか?
「そんなの……あんたたちを育てる事に決まってるわ」
その決意に溢れた言葉は、命の危うさを感じた数年前とは別物。
誰にも言わず、勝手に決めたような決意は、自己中心的な決めつけなのだろう。
それでも、頼もしかった。嬉しかった。
かつて死を間近にしていた女神様が、今こうして力を貸してくれると、宣言してくれて……自然に溢れ出していた涙は湯船に落ちて。
「きっと、あんたの同僚は増えるわよ……一人や二人で出来るような仕事じゃないんだから、女神は」
「……あはは、そうなんですね」
そうかも知れない。
遠い未来で、いつか崇められる神々……もし、その中の一人があたしだったのなら、この世界に優しさと愛を振りまく女神で……いたいな。




